市瀬 博基|ビジネス x リベラルアーツの可能性を拓く!

グロービス経営大学院 教授・東京外国語大学 非常勤講師|リベラルアーツの視点でビジネスやマネジメントをとらえ、さまざまな知識・実践・メンバーを「つなぐ力」について考えています|著書:「組織変革の航海術」「はじめてのコーチング」|グロービス「学び放題」でコンテンツ配信中!

市瀬 博基|ビジネス x リベラルアーツの可能性を拓く!

グロービス経営大学院 教授・東京外国語大学 非常勤講師|リベラルアーツの視点でビジネスやマネジメントをとらえ、さまざまな知識・実践・メンバーを「つなぐ力」について考えています|著書:「組織変革の航海術」「はじめてのコーチング」|グロービス「学び放題」でコンテンツ配信中!

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「何であるか」を知ることと「どのように知るか」を知ること 〜 組織マネジメントと2つの暗黙知

グロービスで今年から「マネジメントに役立てるリベラルアーツ」というクラスを開講しました。哲学や歴史、文学に音楽、認知心理学に文化人類学に社会学といった、いわゆる大学の「教養科目」をマネジメントにどう活かしていくのかを考える全4回構成のクラスです。 1月はじまり、7月はじまりの2期がすでに終了、現在は10月期のクラスが進行している状況ですが、このタイミングでこれまでに印象に残ったことばや出来事を振りかえっておこうと思います。 1月期のクラスの受講者にはガチリベ(私の勝手な造

    • 「それ聞くか?」な驚きと「尋ねてもらってよかった」な安心感、そして「どこまで突っ走るのか?」への好奇心

      東京外大「Management and Culture in Japan」クラスの第7週となる今日は、第102回目となる外語祭の2日前にあたる。と同時に、このクラスの中間レポート(というよりエッセイ)の提出締切日でもある。 というわけで、クラス終了後に外国人留学生からレポートに関する質問があった。が、それはこちらの想定とは大きくかけ離れた内容だった。 規定のワード数はあくまで目安であって、ちょっと少ないとか、ちょっと多いとかは気にする必要はない。大事なのは議論の流れがしっ

      • 「『最後の1マイル』としてのコーチング」@医学書院「病院」11月号特集

        医学書院「病院」に寄稿した記事、「『最後の1マイル』としてのコーチング」が掲載された。 11月号の特集「病院の価値を創る組織マネジメント」では、「フロントラインに立つ職員一人一人が生き生きと働き、熱意を持って日々仕事に従事し、病院の価値を創る」ことだとの認識のもと、戦略を生かすために職員満足を高め、人を動かし育てるための組織マネジメントのさまざまな側面に光を当てている。 ワーク・エンゲージメントやコミュニタリアニズムといったコンセプトや、組織開発(その手法の1つのAI)の

        • コーチング・1on1での共感のキモは、「共感なんて簡単にできるわけがないのだ」という心がまえである!?

          コーチング研修などの場で、「共感なんてそう簡単にできるわけないんですよね」と言うと、「え、お前の立場でそんなこと言っていいの?」的な重苦しい空気が流れることがあります。 相手に共感することはぜったいにムリ、といってるわけではないし、「そうそう」「分かる、分かる」「だよね」とか言いながら話を聞けば共感できるわけじゃないことは明らかだから、何にビックリされるのかがよく分かりません。 そういうときに、「こういうわけだから」とうまく説明してくれる記事を見つけました。 さらに、そ

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          「つながる/つながらない権利」と公平性・納得性のジレンマ

          業務時間外に仕事の連絡を受けない「つながらない権利」への関心が高まる一方で、「つながりたい権利」も必要だとの議論もある、という日経記事が面白かった。 連合の調査によれば、雇用者の72.4%が時間外に業務上の「連絡がくることがある」と答えているものの、これを「ストレスに感じる」人が62.2%いる一方で、37.8%の人は「感じない」と回答。 また、業務時間外の連絡を拒否できたとしても、27.4%の人は「(拒否したいと)思わない」と。 オランダの研究者によれば、こうした違いは

          「つながる/つながらない権利」と公平性・納得性のジレンマ

          「虎に翼」を見て、法律や理論の言葉と時代の感情の関係について考えた

          「虎に翼」第10週「女の知恵は鼻の先?」で印象に残ったのは、怒り心頭の寅子が深呼吸で落ち着きを取り戻し、憲法第11条から第14条を口にするところ。 じっくりと自分に言い聞かせるように第11条を口にする寅子。でも、だんだんと感情が高ぶってくる。 第14条の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」にさしかかるころには、その口調やうるんだ目に新たな決意が感じられるようになるところが感動

          「虎に翼」を見て、法律や理論の言葉と時代の感情の関係について考えた

          グロービス経営大学院の学位授与式で感じた「心地よさ」の正体

          今日はグロービス経営大学院のMBA学位授与式だった。 出席するのは今回が2回目。去年は初めてだったから、いろんなところにめまぐるしく目を向けていたけど、今年は何がどうなるかが分かっている。 ので、何となく前回感じた「心地よさ」みたいな感覚がどこから生まれてくるのかに注意を向ける。すると、そこには微妙に「懐かしさ」のような気分も含まれているように思えてきた。 なるほど。大学院の修士のころを思い出していたのか。 9年間の会社勤めの後に通った大学は、国籍も年齢も仕事のバック

          グロービス経営大学院の学位授与式で感じた「心地よさ」の正体

          「虎に翼」の大演説を聞いて、「反逆の儀礼」を思い出した

          NHKの朝ドラ「虎に翼」の第6週「女の一念、岩をも通す?」は、寅子の感動的な演説で幕を閉じた。それを受けた「あさイチ」で、博多華丸が「あの歌でパパはどこまで虐げられるんですか?」とコメントするのを聞いて、「反逆の儀礼」のことを思い出した。 「反逆の儀礼」は、アフリカの社会を研究した社会人類学者、マックス・グラックマンが提唱した考え方。国や社会というシステムに緊張が生まれると、ふだんは支配し、虐げる側にいる人間の立場を逆転させ、支配され、虐げられる側の立場に置く「儀式」を行う

          「虎に翼」の大演説を聞いて、「反逆の儀礼」を思い出した

          「スター・ウォーズ 新たなる希望」を観て、あのころの未来のテクノロジーとフォースについて考えた

          ローソンユナイテッドシネマのGW特別上映で観ることができなかった(チケットが早々と完売になっていた)ので、スターウォーズの第1作(エピソード4)「新たなる希望」をアマゾンプライムのレンタルで観た。 大昔と同じように、冒頭のテーマが響きはじめた途端に胸が高鳴るし、ライトセイバーがブォンと光れば「お〜っ!」という気になる。が、思わせぶりな台詞の背景にあるものがぜんぶ分かっているので、その昔に観たときよりも味わいが深い。 ダースベイダーといえば、つねにあのテーマで登場するような

          「スター・ウォーズ 新たなる希望」を観て、あのころの未来のテクノロジーとフォースについて考えた

          NHK「100カメ」のポケモン世界大会を見ていたら、グラットン「ワーク・シフト」を思い出した

          2023年にはじめて日本で開催された「ポケモン世界大会」に集まるいろんな人を描いたNHKの「100カメ」を観た。 ポケモンのことは何も知らないから、カードゲームのこともビデオゲームのことも知るわけがない。でも、これがなかなか面白い番組だった。 「おーっ!」と思ったのは、世界大会に集まる参加者がオンライン上のプレーヤーとしては相手のことを知っているけど、リアルに会うのがはじめてなので、「あなたでしたか!」的な挨拶を交わしている場面。 リンダ・グラットン「ワーク・シフト」で

          NHK「100カメ」のポケモン世界大会を見ていたら、グラットン「ワーク・シフト」を思い出した

          ジョブズのプレゼンは真似できる。でも、真似しないほうがいい(けっして真似してはいけない)こともある

          スティーブ・ジョブズのプレゼンは誰にでも真似できる、という記事を読んだ。 プレゼンテーションに関してジョブズには「生まれながらの能力」が備わっていたとビル・ゲイツは語っているが、ジョブズのスピーチの上手さは生まれつきのものではなく、「何度も繰り返し練習し、時間をかけてうまくなっていった」結果である。 ゲイツによれば、ジョブズのプレゼンのすばらしさは「本番で、まるで今その場で思いついたことを話すように見えるところ」にある。しかし、この記事を書いた(「スティーブ・ジョブズ 驚

          ジョブズのプレゼンは真似できる。でも、真似しないほうがいい(けっして真似してはいけない)こともある

          ホモ・サピエンス・ジャパニカス 〜 ロボットが担う日本のジェンダー・家族・国家の未来

          ドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welle)というドイツの放送局のニュース番組を見ていたら、ジェニファー・ロバートソンの「ホモ・サピエンス・ジャパニカス」という本が紹介されていた。 少子高齢化が進む日本。医療や介護、それにサービス産業といったさまざまな現場で顕在化している労働力不足に対して、外国人労働者の受け入れを増やすのではなく、日本の社会はロボット化により解決をはかろうとしている、という話。 もちろん、ここで語られるロボットは、鉄腕アトム(古い!)的なヒト型ロボッ

          ホモ・サピエンス・ジャパニカス 〜 ロボットが担う日本のジェンダー・家族・国家の未来

          グロービス「マネジメントに役立てるリベラルアーツ」クラスが終了した

          今日はグロービスMBA卒業生向けの「マネジメントに役立てるリベラルアーツ」の最終回(通常は全6回のセッションだが、このクラスは全4回の構成なので、アッという間に最終回を迎えた気がする)。 今日のクラスのテーマは、(これまでの3回と趣きを変えて)テクノロジー。そして、最終回となる今回も、例によって悩めるマネジャーのみなさんの日々のモヤモヤを解消することなく(というかむしろ増やす方向で)終了。 クラス後の懇親会では、「MBA取得後に抱えていたモヤモヤを、「こういうモヤモヤがあ

          グロービス「マネジメントに役立てるリベラルアーツ」クラスが終了した

          春めく陽射しの中、精神的バンジージャンプの一歩を踏み出した ~ 音声コンテンツ収録@日比谷公園

          2024年3月14日は、「こんな日に散歩しないのはどうかしてる」と思うくらいに春の訪れを感じさせる、うららかに晴れた1日だった。 そしてこの日は、ナカミチさんのムチャ振りでアッという間に音声コンテンツをつくることが決まり、ほどなく収録日が決まり、収録にあたっては「日比谷公園あたりを歩きながら、好き勝手なことを言い散らかす感じでいこう!」と決まった日でもある。 まさに狙い通りの晴れ間。 「ほーらね、私は晴れ男ですから」といったら、ココロさんから「私も晴れ女です」との言葉(

          春めく陽射しの中、精神的バンジージャンプの一歩を踏み出した ~ 音声コンテンツ収録@日比谷公園

          テクノロジーのこれからを考えるカギは、過去に目を向けること!?

          (この記事は、問いを投げかけたまま答えを示さずに終わる、たいそう無責任な内容です) テクノロジーのこれからがどんな方向に向かうのか? 今後どのようなテクノロジーが登場し、私たちの生活をどう変えるのか? その過程で産業の構造が、そして私たちの仕事がどのように変化するのか? テクノロジーのこれからについては、日々、新たな議論が巻き起こっています。しかしその議論は、なかなか一つの方向に収斂することがありません。 「これから」という未来を想像しようとしても、なかなか方向性をしぼ

          テクノロジーのこれからを考えるカギは、過去に目を向けること!?

          「感情の生き物」としての人の生態が、組織マネジメントにどのような「客観的」影響を与えるのか?

          人は感情の生き物だ。 そういう話をよく聞きます。しかし、人は感情の生き物だから、どのようなメカニズム・プロセスで何をどう感じ、どのような行動をするのか、とつづくことはほとんどありません。だから、そうした考え方や行動が他の人間にどのような影響を与え、集団の「現実」がどう変わるのか、という話になることもありません。 「まあ、いろいろとむずかしいよね」で話が済む分には問題ありませんが、これがマネジメントとなれば、そんな風にフワッとしたままでいるわけにもいかない。 人は感情の生

          「感情の生き物」としての人の生態が、組織マネジメントにどのような「客観的」影響を与えるのか?