kimura ryota

備忘録 短歌•散文など

kimura ryota

備忘録 短歌•散文など

マガジン

最近の記事

短歌連作「Blue」

耳鳴りよ 工事現場の輝きがあけすけに拳をひらかせて Life is Party 安っぽい祈りであなたが阿弥陀籤はじめれば 純白の日々だと告げた 情けなく焦げた魚を眺めてる間に *** *** 火を握る 君が吸いこむ鉄粉はどうすればいい Blue Matches 雪は寂しさの号外として鳴いて 素足で駆けていいのだろうか 映画館であなたは小さく頷いてそれから合図となった 全ての *** *** 穏やかな唇の動きはあまりに Blue Perfume 立ちすくんでる

    • 一連

      取り留めも無く希望を探す心持ちで、トングをかちかちと鳴らす。ブルーベリーの青を溶け込ませたベーグルが、昔飼っていた犬に似ていた。名前はミゲルだった。外国の犬種だと聞いて、当時の知識を総動員して、おしゃれな響きの名前をつけたような覚えがある。進めば、床のタイルが禿げてざらざらになったところが、クロックスのかかとに引っかかる。ベーグルが揺れて、咄嗟に庇う。ミゲルはフリスビーが苦手だったから、結局俺が近づいて取ってやっていた。進む。次の棚のクロワッサンの三日月形は、中高を捧げた弓道

      • 短歌連作「鯨」

        Shine on you 鯨は解体を終えてどろりと眼を日に頬張らす スーベニアショップにあくびが満ちるたび白鯨のふりする夜行バス 銀河には優れて豊かな遺伝子が舞い降りたのち ミラ瞬いて *** 哀れみを 役の終わりの食べかけのレモン・ケーキの酸っぱい日差し strict 異国の街を過ぎるなら phantom 水を君に買うまで 石を投げましょうよ いずれ消え去った詩が役に立たないならば

        • 雑記「朗らかでない自分とどう付き合うか」

          うぐぅと身体をねじり起こしてiPhoneで聴いていないPodcastを流すと、そのまま続く微睡に聴き慣れたパーソナリティの声がぬるっと混ざり込む。これまで見ていた夢の続きに写されて、旧友や輪郭だけの登場人物に代わる代わるそれは化けていく。夢で俺はなんと答えていたんだろう。返答を待たずに会話は進んでいく、自分自身の意識のはずなのに。主体が不在でも夢は続き、断片的な記憶は残る。 推敲していると基本的に文章を書く時、暗い、かなり。もしくは逆説的に暗い気分の時に文章を書いている、そ

        短歌連作「Blue」

        マガジン

        • 短歌
          10本
        • 散文
          6本
        • 雑記
          5本

        記事

          短歌連作「生誕」

          生活ってさ薔薇なのか命とかのことテレビで喋っているし はぐれないスピードを続けてんのはさチルいじゃんって衛星になる 折り紙の銀色じみてその後も雑なロマンスだった感じで 明滅を(暫く会ってなかったしせっかくだから)見といてやった 象の夢こわくて起きてスプーンで蜂蜜ねぶる夢のみじかさ 生誕はこれからも来る換金所のお姉さんが欠伸をしている間 ストップって言ってください次の日に来なかった人がやってた手品

          短歌連作「生誕」

          短歌連作「指先」

          たそがれを白鷺がゆく相槌のかわりにあなたの手を握ってる 祝祭を恐れ草葉の陰で吐く あなたが入れるまぼろしの手指 고인물은 썩는다(コインムルンソンネンダ)まだ友達が階段をのぼるのを待ちながら 社会から流氷をなぞりゆくここち 狂おしいほどピースの写真 心当たりがある人は手を挙げて逃げない鳩がいるバスプール またはまばたきとなりたい脳内のwisdomは蝶のページ破れて 返されなかったピンバッジの穴に雪が降らない街のかがやき こわれそうな夜だとしても指先のふくらみが

          短歌連作「指先」

          反芻

          名久井が指差したのは、積もった埃が形を成したような雑居ビルで、思わず怯んだ。階段の一段ずつに足跡が、それは新しく、残っていた。鉄の凹凸を見る。何度も、何度も通り過ぎた人がいるという形跡が、登った先に店があるという確信へ姿を変えたとき、異様に怖かった。場所も、勝手に他人に暴かれる自分自身のことも。別に気づいて欲しい訳ではなかった。誰かに伝えておきたいなら、もうとっくに心の内から溢していたはずだった。 名久井と駅のコメダで話していたのが1時間前。二人でシロノワールを崩して、絶対

          短歌連作「slight sleep」

          通過する音に紛れて(可笑しくない?)アリスは薬を飲まされている 頬の体温で割れてしまう茉莉花の匂い あなたの手記として燃えたなら 愚かさから逃げようよ ゲームセンターでゾンビを殺す車に乗ろう 梟の振りをしていて 微睡はイーハトーヴォへの道のりだから 眼を剥いて初冬の高架を闊歩する ここに台湾映画の画角 油塗れの手で星空を謳った inondation 一瞬そうだった ハイネケン踏み抜いて船に乗るんだろう 君が幽霊でいてくれるまで ときめきは花のように a litt

          短歌連作「slight sleep」

          短歌連作「rob/sub」

          片翅をもがれて振れる鬼蜻蜓 実存は怪しくてこんなにも 高校の時知り合ってたらきっとマーブル模様だっただろうね うるさい9月 笑わなくなった従姉妹の右手には月の剥げた絵札 鯉が浮く 秋の停車場で萎びた朝顔を千切る 集団下校の匂い Wedding cakeに満ちる水面の重み した/してくれた事柄 持ち去った季節を覚える義務があり 夜間急行は嘶き声で それからの fuel 生活の記録と fossil わたしが雪原になる ハイウェイを過ぎるあなたの寝癖には Dm7 火の

          短歌連作「rob/sub」

          短歌連作「lucid/confused」

          これは天使の方法ですからねと密やかに刺青を見せては 焼肉屋で同じ匂いになる ふたり 駅前のショーウィンドーに映る 腰掛ける 決まってそれは薄紅のハンカチ 初雪葛の蕾 困惑を押し付けられて 枕には柔らかい羽はひとつもなかった たましいのかたち知らないけれど吸殻みたいなんだろう 記憶の 大幅な遅延が見られます 祖母は花の茎を切り揃えていたと 明確に味方だと口にしなくても 歩調 静かに降る若葉雨

          短歌連作「lucid/confused」

          短歌連作「wake」

          生傷のごとく短い八月のビデオテープに再生機能 未完とはゆれる海面 お茶の味変わっちゃったしもう帰ろうか 「猫いたよ」とかの連絡されて ああ 守ろうとしてくれたんだよね 夕暮れの眩しさ握りしめる 俺ジーンズ似合うねって言われたい 知っている街のバス 知らない街で頼むのは辛い麺類ばかり 満席の居酒屋チェーン 歌っても踊っても火薬みたいな匂い 願っても砂屑まみれの髪だから きぼうの子供達にされた日

          短歌連作「wake」

          雑記「歌い出しが凄い曲 10選」

          歌詞優先で音楽を聴くタイプなので、「凄い…」と思わず唸ってしまった歌い出しについて、簡単な感想と一緒に、自己満足でまとめました。 個人的な意見なので、解釈や制作背景が違っていたらすみません…。 表現の自由・多様性の時代を、言い訳にしています。 ①ところで君の音楽の趣味の少し偏屈なところが好きだった(andymori「誰にも見つけられない星になれたら」) いや偏屈なのお前だろ!という意見はさておき、「ところで」から始まる歌、他にありますか?ところで、って…ねえ…。あの、誰に

          雑記「歌い出しが凄い曲 10選」

          短歌「Lucky Boy」

          もう胸に電光掲示をつけてやりうっすらスマイルマークを流す この鍵は実家のだったと呟いて ごめんねって右耳下げていた 生活はこんなに美しかったっけ歯を磨くたび歯は永らえて 運命があればいいのに辛いなら車海老だって剥いてあげるよ 月は武器 声は振動に過ぎなくて無理に話さなくてもいいから 歯並びが綺麗じゃないしクリスマスソング歌えるから恥ずかしい おれは詞にあのこは北に行きついておなじ運河をみていたつもり 結局は羽織らなかったカーディガンみたく扱われたこともある 晴

          短歌「Lucky Boy」

          雑記「ハンバーグセットのライスってカピカピになったことしかないですね」

          もうすぐで23歳になるのに、特技が「感傷に浸る」なのまずい気がしてきた。ずっと謝りたい人たちのことを思い出しているのも、良くない気がしてきた。気がしてきた、じゃないね。良くない、むしろ悪い。 社会人になってから変わったこと。ティッシュを高くてデカいコンビニに売ってるやつに変えたこと。ヨガ・サウナ・瞑想とかしないと体がもたないこと。一万しないご飯のお会計にビビらなくなったこと。煙草の本数が増えたこと。ギャツビーのワックスじゃなくて、休みの日もグリースを使うこと。服への興味が薄

          雑記「ハンバーグセットのライスってカピカピになったことしかないですね」

          雑記「帰省」

          兄弟がいないから早く結婚して欲しいと父親に言われて、無理をしないで良い人を探しなさいと母親に言われた。二人とも俺のことしか考えていなかった。愛に産まれていた。 親友と海に入った。海の中で全裸になった。有名な漁港で食べた海鮮丼が微妙だった。車に戻って「不味かったな」と言って悪い顔をして笑った。そいつは帰りにコンビニのサーモン丼を食べていた。車で有吉のサンドリを聴いて死ぬほど笑った。 地元の友達と電話をした。少し面倒くさそうにされて逆に嬉しかった。会いたいことを伝えられて良か

          雑記「帰省」

          あぶら

           振り返ってみれば、小原はいつもぎこちなかった。ぎこちないというのは、主に立ち振る舞いについてだが、広義なら小原の生活そのものを指していた。大きく出っぱった額には、常に汗をじったりと滲ませて、それを隠すように長い髪を伸ばしていた。  電車を間違えた、と連絡が来る。僕は改札の前で待つのをやめて、駅に併設する小さな本屋に入った。新刊のコーナー、文芸書、建築雑誌を眺める。本屋への興味が尽きかける瞬間に、小原はのそのそとやってきた。小原は歩くのが遅いから、僕の方から彼に近づく。  財