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雑記「歌い出しが凄い曲 10選」


歌詞優先で音楽を聴くタイプなので、「凄い…」と思わず唸ってしまった歌い出しについて、簡単な感想と一緒に、自己満足でまとめました。
個人的な意見なので、解釈や制作背景が違っていたらすみません…。
表現の自由・多様性の時代を、言い訳にしています。


①ところで君の音楽の趣味の少し偏屈なところが好きだった(andymori「誰にも見つけられない星になれたら」)

いや偏屈なのお前だろ!という意見はさておき、「ところで」から始まる歌、他にありますか?ところで、って…ねえ…。あの、誰に向けて語りかけてるんですか?過去に浸るのキツくないですか?夕方に下高井戸の線路沿い歩いて、踏切が開くの待ってる間に思い返してますか?

取り乱したので戻りますが、「君の音楽の趣味が好き」と言えば簡潔なのに、装飾語が多かったり語順変更があってかなり歯切れが悪い、のがめちゃくちゃ良い(リズム的に"の"を頭に固めたんだろうなとは思いますが)。

遠回しに「俺は普通の人と違う観点で好きになりましたよ、理解できてますよ」みたいな含みを持って喋ってそう。そういう人愛しい。

歌詞全体は喪失の色味があって、曲名も「"誰にも見つけられない"星になれたら」なの、青いけれどその瞬間にしか持てない決意みたいなものを感じて、素敵です。

アメリカのオルタナバンドSWMRSの曲「Lose it」で近いことを言っていて、どちらも良さがある。andymoriの方が切なさ強めかも。

And tell me why’d you have to have such a damn good taste in music?
そして、なんで君は音楽の趣味がありえないぐらいいいのか教えてくれよ

《https://songs-wayaku.com/loseitswmrs/》


②金が全然ないからグリーンラベルで乾杯して 後は、全裸になる(忘れらんねえよ「北極星」)

「後は、全裸になる」の納得感。

金無い→酒飲む→全裸、まあ、そうだよね!4.5人でカクヤスでロング缶買って6畳1間にいそう。

この歌詞のせいで、金欠の時は絶対にグリーンラベルを飲むようになってしました。お酒コーナーの前に立つと、「金が全然ないから〜」って頭の中で流れて、「あ〜あ…」と思いながら手に取ります。今のところ、全裸にはなっていませんが。

北極星は歌詞が全体的に情けないのに綺麗です。
それが、忘れらんねえよだ。


③バスの揺れ方で人生の意味が解かった日曜日(スピッツ「運命の人」)

!!?!?バスの揺れ方で!?!?!なんで!?すご!どういうこと!?
となったので、調べてみたら知恵袋にそれっぽい情報が書いてありました。

草野さんはよく休みの日に散歩に出かけるそうで、その時にはよくバスを利用してたそうです。そのバスには、子供からお年寄りまで色んな年代の乗客が乗っているので、バスに揺られながら色んな人生が見えた気がしたっていう経験が、この歌詞に反映されているそうです

《Yahoo知恵袋:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1033686785》

なるほど。

確かにバスは他の交通機関と比較して、
・利用者の年齢層が幅広い
・車体が狭く、一人一人の存在感が強い
・視界が開けていて乗客の観察がしやすい
ので、「人生の意味」のヒントを見つけやすそう。

「人生の意味」について悶々と考えたのですが、
車体がガクンッと揺れ、思ったより体勢を崩してしまい、体幹の衰えを感じたんじゃないかなと。
つまり「人生の意味」=体幹。

この後に続く「でもさ君は運命の人だから強く手を握るよ」も、「君」は自分より体幹が強くないから支えるよという意味なのではないか、という仮説を立てることが出来ます。

この雑魚考察はすぐに忘れてください。
整体にハマっているからです。すみませんでした。
雑魚考察が出来るくらい余白があって、詩的なところが大好き。あと具体の使い分けがめっちゃ上手い。

スピッツは「さらさら」「タイム・トラベル」が好きです。


④日暮の空に筆を投げて画家が行方をくらます夜 運動場に忍び込んで小石灰で君を書いた(折坂悠太「悪魔」)

これ、もう映画です。
音楽ではなく映画です。

真夜中、深閑とした校舎。
校門前のカットで、ライン引きがキィと軋む音のみか細く響いてくる。上空から、俯きながら線を引く画家のカット。ライン引きから石灰がこぼれ落ち、徐々に画家の履き潰した革靴が画面に現れて過ぎるパンショット。画家の目線から描かれた「君」の全景が映るティルトアップ。

が、見えませんか?
私は見えたので、一文で情景浮かばせてくれてありがとう…となりました。

リズムが独特で、聴いてて形容し難い不安に襲われますし、タイトルが「悪魔」なので「小石灰で君を書いて、何をするつもりなんだ…?」と想像が膨らみます。なんか途中で呪文みたいなの挟まるし。ホラー映画観てるみたいな気持ち。

昨年、この曲が収録されている折坂悠太のアルバム「心理」のライブに行きましたが、最後の曲が終わった後に暗転し、明かりがついたら舞台セットと演者が一瞬にして消えていました。「今まで見ていたのは幻だったのか…?」と混乱しましたね。かなり演出がジャパニーズホラーだったので、あながちこの解釈は間違いでないと思います。


⑤君がママに言わないで街で落ち合おうとしてくれたことを覚えてる(laura day romance「夜のジェットコースター」)

大名曲。

「ママに言わない」ことが何よりも凄かった時の話なんですよ、これは。なんでもかんでもママに言わなきゃいけなかったんですよ、きっと。誰と遊ぶのか、何時に帰るのか、何を目的に行くのか。laura day romanceは歌詞が精査されて、世界観が凝られているので、短編小説を読んだ後の満足感に近いものがある。

「街で落ち合おうとしてくれたこと」が特別なことだったんだろうな…。言葉は大事だけど、自分のためにしてくれた「行為」に意味があるんだよな、と思います。

これ①のandymoriと同じで、過去を振り返る形ですが、過去形の歌詞から始まる曲、辛がち。ただ曲調が爽やかなポップミュージックなので、切なさが凝縮されていて、とてもバランスが良いです。


⑥二人は崖から落ちるその時まで名を呼び合って 僕の目に君が君の目には僕がいたのです(フー・ドゥー・ユー・ラブ「呼び合った!」

瞬間の切り取り方、常人の発想じゃない。

ここまで「死」を予感させながら、「お互いの目に姿が映っていたこと」が何よりも愛を証明していると信じてやまないの怖すぎ。
曲調がポップなので、純愛ソングの皮を被っているのですが、ギリギリグロテスクさが中和できていないです。なんか、片山慎三にMV撮ってほしい。

空耳で、落下していく二人が笑顔で地面に叩きつけられた音が聞こえてきそうで、正直毎回ビビっているのですが中毒性が高くて聴いてしまう。
あと、歌詞の8割5分が「愛しているよ」なので、完全に心中の歌と認識しています。

「呼び合った!」って曲名、何?エクスクラメーションマークで誤魔化そうとしないで😭
ボーカルのキイチ君が過去にやっていたバンド、キイチビール&ザ・ホーリーティッツも大好きです。


⑥公園で初めてのキスにいたらず 私たちもういい大人なのに(吉澤嘉代子「綺麗」)

言い回しがお洒落、余白の与え方が絶妙すぎる。
吉澤嘉代子の恋に恋する女の子っぽい部分と、年齢を重ねた女性の厚みの塩梅が、一番表出されている曲なのではないかと。

ドリーミーで絵本のような雰囲気なのに、歌われていることは至極ありふれた現実の出会い。ただ、この誰もが持っているであろう特別感やときめきを、増幅させて歌い上げているところ、好きです!

吉澤嘉代子の雰囲気、かなりfemme fatale。
見つめられたら自我と理性が消え失せると思います。(大変に気持ち悪い評をしてしまいました)


⑦友達だなんて一度も思ったことはなかった あなたに出逢ったその日から(aiko「KissHug」)

正直、KissHugってここで終わりで良いです。
You Love You Loveのとこまで聴かなくても大丈夫です。

他アーティストと比べて異様に歌詞の密度が高い。キャッチーさ、反復、曲の短さが求められている2023年において、一番聴くべきはKissHug。上記の歌詞まで聞けば十分に満足できるので、46秒で済みます。

この間友達と、「男は全員aikoのことを元カノだと思っている」という話をしていたら、一緒に飲んでいた友達の彼女に二人まとめて怒られました。記憶が捏造されているんだからしょうがないんだよ。助けてくれ。


⑧いい子でいようと大人しく周りと同じようにしていたら 笑うことが下手になって息ができなくなった(地球から2ミリ浮いてる人たち「ハッカドロップ」)

この感情を持った人、日本にどれだけいるんだ。

ボーカルが淡々と「もう既に起こった事実ですから」みたいに歌うので、とても聴いていて気持ちいいし元気を貰える。
飴の中でも人気の無いハッカ味を、好きだと言える勇気。自分らしく生きるって、全部そういうことなんじゃないんですか!?よろしくお願いします!

あと早くこのバンドは売れて欲しい。
インディーズで収まっていい才能じゃない。


⑨歳をとった 夢はいつか叶うときが来ると思っていた(The songbards「窓に射す光のように」)

前奏無しでこの歌詞が始まるの辛かった。そんなはっきり言わないで欲しかった。

詞だけだと諦念が強く受け取れるけれど、「大人になること」は失うことだけではないですよ、と包みこんでくれる曲だから安心する。歳を重ねることはとても怖いし、優しさを誰かに分け与えられる人になれるのか、ずっと不安ですが、この曲を聴くと強張った気持ちが綻びます。

あと、多かれ少なかれ、叶ってる人もいます!きっと大丈夫!


⑩息をして触れてきた優しさが いつの日か蓄えた優しさになる(崎山蒼志「嘘じゃない」)

作った時崎山くんは19歳…?どういうことなんだ。
「優しさ」について考えられる程大人じゃなかったぞ私は。

誰かがくれた優しさが自分の優しさになることを、こんな綺麗に表現できると教えてくれてありがとう。歌い出し「触れてきた優しさが」でも成立するのに、「息をして」が入ることで時間、温度、空気、匂いなどの奥行きが広がっている。

また「蓄えた」の三文字だけで、いつか優しさを返せること、違う誰かに渡せること、を示唆していて、お洒落過ぎるよ…感性が豊か過ぎるよ崎山君…。文句なしの歌い出しで、心を掴まれました。

君が産まれてきてくれて、本当に私の心は助かっています。「I don't wanna Dance in This Squall」「覚えていたのに」など、新曲でどんどん自分の可能性に挑戦していて、勇気を貰えます。ありがとう…😭



最後、崎山君への感謝で終わってしまいましたが、どの曲・アーティストも大好きです。
ビビッと来るものがあれば、聴いてみて欲しい。
好きな・好きだった歌があれば、良いタイミングで聴き直してくれたら、アーティストにお金が入るので嬉しいです。

惜しくも今回10選から漏れてしまった歌い出しについて、3つだけ紹介します。


僕らの日々へ僕らが誠実であれよ(カネコアヤノ「閃きは彼方」)

頑張ってる左手 余裕のファックアンドピース強い右手(大森靖子「イミテーションガール」)

パーマ当ててる僕に悩む価値はない(ハシリコミーズ「たまには下と比べましょう」)


全部パワーワードだ。さようなら。

写真:代々木八幡 青年座前
ウルフルズ「それが答えだ!」が聴こえる場所。

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