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ドラマのようにならなくても
ずば抜けて得意なことがあるわけでもない。
気の利いた一言だって言えない。
人の役に立つことなんてわからない。
上を向けば、朝の山手線ぐらい人がいた。
唯一の武器は劣等感。
誰かに与えてもらってばかりの人生。誰にも何も返すことができない。
自分のおかげだと思えることが少ない。
いつだってまわりの人に支えられている。
こうやって文章が書けるのも読んでくれる人がいて、あなたがいて。
歌がうまいわけでも、作詞作曲のセンスがあるわけでもないから、
テレビで映る誰かみたいに歌を歌って誰かに感動を届けることなんてできない。
陸上が好きでも、得意なわけでもないから、
テレビで映る誰かみたいに走って誰かに勇気を届けることなんてできない。
自分はどうしたって感動も勇気も届けられない。
どれだけ足掻いても少しの感動も勇気も届けられやしない。
だからせめてもの人に貢献できる仕事に就きたいと思った。
自分にはそれぐらいしかできないから。
だから“医師”を志した。
きっと人に貢献できる仕事はそれだけじゃない。たくさんある。
でも自分のちっぽけな役立たない頭じゃこれしか思い浮かばなかった。
だけど叶えるには壁が高すぎた。
自分の中身すっからかんの空っぽな頭じゃ届きそうにもなかった。
勉強なんて得意じゃなかったし、自分より賢い人なんて山ほどいる。
自分より向いてる人なんて山ほどいる。
「いやいや、自分なんかがなれるわけがない。」
そうだよな。自分なんかがなれるわけがない。
そんな考えが頭をよぎる。
そんな考えが夢を見ることを諦めさせる。
正直自分には無理なんだろうなんて思う。
だけど「なりたい」と思ってしまった以上、それは意地でも叶えにいくべきなんだろうなとも思う。
たぶん人生は短い。
だけど自分の夢を見て見ぬふりして生きていくには長すぎる。
未来で自分はどんなに大人になっているだろうか。
未来で自分はどんなことをしているだろうか。
理想とは違っても自分の人生を愛せますように。
素直でいられますように。優しくいられますように。