筋トレでメンタルを強化しようとしている人たちへ。
「筋肉をつけても、筋肉のあるメンヘラになるだけで精神疾患は治らない。」
「筋肉は裏切らないかもしれないけど自律神経は裏切る。」
最近、こんな話をTwitterで目にした。
トレーニーからするとこれは眉唾ものの話かもしれない。
筋トレ好きであれば、ほとんどの人が筋トレによってメンタルが強くなった経験があるだろう。
では、「筋トレでメンタルが強くなる」「筋トレではメンタルまでは鍛えられない」どちらが正解なのだろうか?
何を隠そう、僕自身も5年ほど前にメンタルを崩して会社を休職した経験がある(このnoteは当時暇だったから書き始めたのだ)。
今回はそんな僕が、筋トレとメンタルの関係性についてお話していこうと思う。
■筋トレは万能薬ではない
まず最初に言っておきたいのは、筋トレに過度な期待をするなということ。
筋トレは薬ではないし、治療法でもない。
「筋トレで人生の悩みの9割は解決する!」は正解でもあり、嘘でもあるのだ。
そもそも世の中には「●●をやれば全てが解決する」みたいな魔法や銀の弾丸もない。
だってそんなものがあれば全人類それやってるはずじゃないだろうか?
筋トレ(に限らず全ての物事)は「良いこと/悪いこと」の二元論で語れるものではない。
例えば栄養バランスの取れた食事を摂ることで病気が治るだろうか?
栄養バランスの取れた食事は確かに大事だが、残念ながら病気を治す直接的な効果はない。
したがって、「筋トレはうつ病も適応障害も自律神経失調症もパニック障害も睡眠障害も治してくれない!」と言われましても、「当たり前じゃん」としか答えられない。
うつ病や適応障害や自律神経失調症やパニック障害や睡眠障害に対して全ての医者が筋トレを勧めるだろうか?
そしてその通り筋トレをした人が全員治るだろうか?
そんなことはない。
もしそれを信じているならそれは信仰であり呪術であり宗教だ。
(長くなるので割愛するが、僕は宗教を悪いものだとは思っていない。むしろ科学も一種の宗教だと思っている。)
しかしだからといって筋トレや栄養バランスの取れた食事に意味がないかというと、そうではない。
こちらは本筋とはずれるので、詳しくは「予防医療」とGoogleやchatGPTで調べてみてほしい、
どちらにせよ、もうちょっと自分の頭を使ってよく考えたほうがいい。
■筋トレでメンタルは鍛えられるのか?
では世の中の人が言う「僕は筋トレでメンタルが強くなった!」は嘘なのだろうか?
身も蓋もない言い方をすると、それはその人次第なのである。
さらに言えば、その人が何を目的にしているかに依る。
筋トレは魔法ではないので、筋トレをしていても勝手にメンタルが鍛えられる訳ではない。
筋トレには「特異性の原理」というものがある。
これは何か特定の効果が必要なら、それに応じたトレーニングを行わなければならないということ。
例えば年収1000万を稼ぎたいのに筋トレをしても無駄なことは誰でもわかるだろう。
同様に、サッカーが上手くなりたいのにスクワットをしてもサッカーは上手くなりそうにない。
さらに言えば、スクワットが強くなりたいのにレッグプレスをやっていてもスクワットは決して強くならない。
スクワットを強くするならスクワットをやらなければいけない。
したがって、ただ単に筋トレをしていてもメンタルを鍛えることはできない。
■大事なのは「経験の抽象化」ができるか
ではメンタルを強くするためにはどうすればいいのだろうか?
ヒントは「抽象化」。
1つの学びがあったときに1つのことにしか使えない人は、当然ながら一度に1つのことしかできるようにならない。
一方で、1つの学びがあったときにそれを抽象化することで10の学びにし、それを他の事象で100の実践ができるようになると、効果が文字通り倍増する。
例えば、プログラミングスクールで「コードを打つ速度を一生懸命がんばっても意味がないですよ。」と習ったとしよう。
普通の人だと「なるほど、じゃあコードを打つ速度を早くするのはやめよう!」と思うだろう。
しかし優秀な人だと、「なるほど、たしかにコードを打つ時間はプログラミング全体から考えると3分くらいしかないな。それをどんなに熟練して1分にしたとしてもたった2分しか短縮できない。
しかし、プログラムの構造をシンプルにすることができれば、デバッグにかかる時間を大幅に減らせるな。ということは、時間短縮の観点で影響度の高い箇所を見つけて、そこを効率化できるか考えよう」
と考える。
コードを打つスピードをあげるかどうか、という具体的な話ではなくて、全体の中で、何を効率化をしたほうがいいのか?を考えたほうがいいな、という抽象的なところまで思考が進むので、学びの数がこの時点で多いのだ。
さらにこの考え方を料理やプラモデルなど他の趣味にまで転用すると、このスキルはいろいろなところで使えるようになる。
つまり、「プログラミング教室で一言言われただけで、日常から仕事のあらゆる場面で使える学びを得ている」みたいなことが起こる。
成長速度が早い人は、このように抽象的なエッセンスを抽出するのが上手いので、仕事もできるし多趣味なのだ。
■筋トレのエッセンス
では筋トレのエッセンスとは何なのだろうか?
個人的に感じていることをいくつか挙げてみると、
・根性…自分の限界に挑戦すること
・計画力…目標を立てて実行すること
・GRIT…自分で決めた計画をやり切ること
・メタ認知…自分の現在地を客観視すること
・レジリエンス…遊びやジャンクフードの誘惑に負けないこと
などこれ以外にもいろいろなことが挙げられる。
これらはあくまで僕の意見であり、鵜呑みにしても全く意味がない。
あなた自身が経験から学ぶことでその効果は何倍にも膨れ上がり、人生のレベルがアップする。
体育会系が就活で重宝されるのもこれだ。
彼らは「チームで」「目標達成に向けて」「忍耐強く」動くことに長けている。
これらはスポーツによって培われたもので、スポーツの経験を抽象化することによって彼らはこれを学び、スポーツでの結果はこの能力を裏付けする強力なエビデンスになる。
もちろん全ての体育会系がビジネスマンとして優秀とは限らないが、少なくとも新卒を大量に採用する上では上手くいく確率が高いためここまで使われてきた戦略なのだろう。
最近流行りの「男磨き」やテストステロンを高める「ステ活」なども、これらの効果を期待してのことかもしれない。
筋トレはそんなに盲信するほど万能のものではないが、確かに頷ける部分も多い。
特に、スポーツ経験がなくとも一人で気軽に始められるという点も大きい。
■治療にはならないけど…
そう考えると、筋トレと精神疾患、病気との関連性が少しずつわかってくる。
ストレスの本質は「不確実性への対処」なので、
・不確実性を減らす
・恐怖を飼い慣らす
のいずれかで対応でき、どちらも鍛錬で獲得できる。
現状の実力の把握、目標を達成するために必要な行動の計画、失敗したときの立ち直り方、難しい課題に直面したときに乗り越える方法…
筋トレを通じてこのような成功体験と失敗経験を数多く体験することによって、少しずつメンタルが強くなってくるのだ。
もちろん、身体が精神に先立つという話もある。
ノルアドレナリンやセロトニンといったホルモンは人間の活動を司っているが、ホルモンが出たから行動するのではなく、行動するからホルモンが出ることが研究によってわかっている。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」とは良く言ったものである。
結論としては、筋トレをすることで物事を頑張る能力がつき、メンタルの弱さが原因となる問題に対処しやすくなる可能性がある、ということがいえる。
■体力を鍛えるための体力がない人へ
「そもそも体力を鍛えるための体力がないんだ!
ご飯が食べられないから体力がつかず、体力がないからご飯も食べられない!」
「週2ー3回筋トレすると健康になるのではない!
週2ー3回筋トレできる時間及び経済的、体力的余裕があるから健康でいられるんだ!」
という声が聞こえてきた。
「服を買いに外に出るための服がない」みたいな話だ。
そう思うなら別にそれで構わないと思う。
うだうだ言ってる人は一生そのまま貧乏かつ不健康でいればいい。
一度きりの人生、やるかやらないかだ。
やらなかったら一生そのまま何も変わらない。
やりたくないなら無理にやらなくていい。
根性論に聞こえるかもしれないが、僕は本気でこう思っている。
僕はできるだけ長い間健康でいたいし、できるだけ自分を高めたいし、自分の限界を知りたいし、それが楽しいから筋トレをする。
何も最初から「お米1kg食え」とか「スクワット300kg挙げろ」とか、そんなことは誰も言っていない。
英単語を10個しか知らない状態で海外に放り出されたり、バタ足しかできない状態でプールに突き落とされたりしたらそれは無理な話だろう。
スタート地点は誰しも同じではない。
しかし自分自身にストレッチをかけることで人は誰でも成長できる。
100できる人は101、10000できる人は10001、1しかできない人は2だっていい。それぞれがそれぞれの限界に挑戦すればいい。
別に対象は筋トレじゃなくたっていい。
囲碁でもいいし、テレビゲームでもいい。
好きなお酒を飲むことだっていい。
大事なのは何かに夢中になること、そこから何を学ぶかだと思う。
「たかが趣味でそんな根詰めて考えたくねえよ!」
別にそれでもいい。
でも少なくとも、僕にとって筋トレとはそういうものなのだ。
■おわりに
このnoteは、筋トレを始めたばかりで、しっかり身体のことについて勉強したい人をターゲットに、健康的な生き方に関する情報を論理的に発信しています。
過去にもいろいろな記事を投稿しているので、もし気になったら読んでみてください。
また、記事にしてほしいトピックのリクエストもコメント欄から募集中です。
筋トレについてそこそこ詳しい方や、実際にトレーナーとして活動されている方にとっても、「こんな考え方、こんな表現があったんだ!」という発見になってくれれば幸いです。
また、当noteはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトプログラム等に参加しています。