そして、スモークサーモンは心のなかを遡上する
──すこーし、チクッとしますよぉ
神経に近い麻酔針の痛みに、私はビクン、と身体を浮かせ、喉から「ほへ」と珍妙な音が漏れた。
この痛みが「チクッと」なら、銃声はプニンだぞオイ、などと内心毒づく。
やがて麻酔の領域がぼわーん、と朧げになって、とうとう自分のモノではなくなった。
──唾でバイキンが入らないように固定しますねぇ
「バイキン」などと子供に言い含めるような口調はおろか、口が閉じぬように開口器──いわば一種の拘束具を装着された。恥辱である。屈辱である。私の生殺与奪権は