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こころ磁石

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私らしく心の赴くままに綴ったnoteを集めました
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#エッセイ風

大人になってわかること

大人になってわかること

「死ね」
声変わり前のまだ幼さが残る声色でそう囁かれた時、私は何を思っていたんだっけ?

先日、koalaさんという方の『いつの私と会ってくれる?』という記事を読んで、まったく関係ないのだけれど、あることを思い出した。

小学5年生の時だった。帰りの会の最中、隣の席の男子の声が私の耳元で囁いた。
「死ね」
先生が連絡をしている声、周りが雑談をしている声。全ての音はぼんやりと聞こえ、その言葉だけがは

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ノートと私

ノートと私

私は昔からノートが好きだった。

ページをめくれば、罫線のみの真っ白なノート。
そこに文字を綴ったり、時にはイラストを交えたりする瞬間がたまらなく楽しく思えた。どんなことでもそこに書けば、一つの絵のように様になっているような気がした。

だからだろうか。
初めて物語を書いたのも、原稿用紙ではなく、ノートだった。

中身は普通のノートだったが、表紙にはリボンでくくられたギターとそこから溢れ出る音符が

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キレイになったね

キレイになったね

トイレにはそれはそれはキレイな
女神様がいるんやで
だから毎日キレイにしたら女神様みたいに
べっぴんさんになれるんやで

高校生の時、芸術鑑賞会と称されたライブで招かれた歌手がこう歌っていた。
その頃はこの歌が好きではなかったし、共感もできなかった。
だが最近、この歌詞を痛感させられる出来事があった。

私は今年4月末に採用が決まり、5月から清掃員として働き始めた。
仕事は会議室や廊下の拭き掃除、

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おめでとうが云えなくて

おめでとうが云えなくて

カレンダーを見ると、今日は仏滅。嫌な予感はしていたけど、やっぱりだった。

「誕生日おめでとう。〇〇ちゃんが楽しみつつ、充実した日々を送れるように影ながら祈ってます」
前日から用意していたメッセージを何度か読み直し、送信ボタンを押す。
その瞬間、けたたましい音と共に送信失敗を告げるメッセージが届いた。何度かやり直してみるが、結果は変わらなかった。彼女との連絡は完全に絶たれてしまった。

去年は返事

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子どもに戻りたい

子どもに戻りたい

「タイムマシンで好きな時代・場所に行けるとしたら、どこに行きますか?」

過去のエントリシートにそんな質問があった。その質問の意図はわからないが、私は今ならこう答える。

「成人式の日に戻りたい」

成人式には誰しもいい思い出が残る人の方が多いだろう。
豪華絢爛な晴れ着、幼い頃の級友との再会、思い出話に花を咲かせる。
大人への第一歩なのに、不思議と子ども時代に戻っている。
そんな周りの人たちの姿を

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雨戸を開けてくれる人

雨戸を開けてくれる人

私は将来「雨戸を開けてくれる人」と一緒になりたい。

なぜなら、私は夏の間だけ雨戸が開けられない。ある夏の日のことだった。朝、雨戸を開けようとしたら、突如ジジジジッと凄まじい鳴き声と同時にセミが飛び出してきた。網戸と雨戸の間に挟まっていたのだ。私は慌てて窓を閉め、その場を離れたが、セミはカーテンの裏に張りついてこちらに存在感を感じさせていた。実家暮らしだったため、その後、家族が追い払ってくれたが、

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