雨戸を開けてくれる人
私は将来「雨戸を開けてくれる人」と一緒になりたい。
なぜなら、私は夏の間だけ雨戸が開けられない。ある夏の日のことだった。朝、雨戸を開けようとしたら、突如ジジジジッと凄まじい鳴き声と同時にセミが飛び出してきた。網戸と雨戸の間に挟まっていたのだ。私は慌てて窓を閉め、その場を離れたが、セミはカーテンの裏に張りついてこちらに存在感を感じさせていた。実家暮らしだったため、その後、家族が追い払ってくれたが、家族が起きるまでセミと二人きりという地獄の時間を過ごした。
それ以来、朝になる度、あの光景が蘇ってきて雨戸を開けられなくなった。そんな気も知らず、親は雨戸を開けないことで私を叱る。そして、一生開けないつもり?と訊かれた。黙っていると、親はこう言った。
「じゃあ、一生暗いままで生きていくんだ」
そう言われて思ったことは、私ってずっと暗い。
下を向いていることが多いし、いつも一人でじっと黙っている。ネガティブな思考をすることはしょっちゅうある。何よりも自己開示することが苦手だ。求められると、いっそう固く閉ざしてしまう。自分の心の雨戸さえ開けられない。だから、雨戸が開けられないのだ。
私の雨戸を開けてくれる人がいてほしい。
そして、明るい光を差しのべてくれないだろうか。