子どもに戻りたい
「タイムマシンで好きな時代・場所に行けるとしたら、どこに行きますか?」
過去のエントリシートにそんな質問があった。その質問の意図はわからないが、私は今ならこう答える。
「成人式の日に戻りたい」
成人式には誰しもいい思い出が残る人の方が多いだろう。
豪華絢爛な晴れ着、幼い頃の級友との再会、思い出話に花を咲かせる。
大人への第一歩なのに、不思議と子ども時代に戻っている。
そんな周りの人たちの姿を3年前のその日、私は一人で見ていた。
小学校時代、私は大体は一人だった。友達と呼べる人は、指で数えられるくらい。交換日記をしてくれた相手だった。だけど、その子たちにも他にもっと仲のいい友達がいて、普段一緒に行動したりすることはほとんどなかった。
3年前のあの日、案の定、その子たちは他の友達との話を楽しんでいて、私のことなど見向きもしなかった。やっぱり私は二桁台の友達なんだと思った。一番や二番、すぐ会いたい友達ではない。着物の着心地の悪さが余計嫌に感じられた。
一人式場の隅で、親に迎えに来てもらうよう電話をかけた。すると、人が近寄ってくるのがわかった。だが、電話の途中だったので、慌ててその場を離れてしまった。その後、戻ってきても誰も私に話しかけるのはおろか、近づいてくれる人もいなかった。今にして思う。あの日なんであの場を離れてしまったのだろう。もしその場にいたら、あの子たちが話しかけてくれたかもしれないのに。後ろを向いていたので、誰だったのかもわからない。今となっては確認しようもないが。
成人の日を迎えると毎年、その後悔が脳裏によぎる。
もし戻れるなら、あの日私も級友たちと子ども時代に戻って思い出話に花を咲かせたかった。そしたら、振袖も綺麗なままで自分の記憶に残っていたかもしれないのに。