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創作と夢

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思い付いたストーリーや夢の話です
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#ショートショート

短編『海』

短編『海』

「今日の最高気温は52℃。今年初の夏灼日(かっしゃび)で、とても危険な暑さです。不要不急の外出は…」

毎日のように暑いが、今日は特に暑いらしい。

「鈴木さん、まじ可愛いよな〜」
「それな〜、あの冷たい感じもいいよな〜」

教室に入り席に座ると、近くの席の奴らがまた飽きずにそう言っていた。同級生や先輩曰く、僕の幼馴染はバカが付くほど可愛いらしい。
だけど顔が良いって話、僕には分からない。

当の

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ショートショート『透明人間』

ショートショート『透明人間』

「水分補給した分だけ
 人の濃度は薄まって
 いずれは晴れて透明人間になれるんだ」

じいちゃんは夏になるとよくそんな冗談を言った。

僕はじいちゃんの思惑通り沢山水分補給をした。
水って意外とすぐに飽きるんだ。
それでその夏に、
水はたくさん飲めないものなんだと知った。

僕はじいちゃんがしてくれる話しが大好きだった。
特に透明人間の話しが好きだった。

僕はじいちゃんに
「透明ってどんな感じな

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物語『ウシガエル』

物語『ウシガエル』

もう白鳥が飛び立った後の湖で、
数羽の鴨だけがぴちゃぴちゃと足をばたつかせていた。

少しの間しんとした間があった後、
頃合いをみたかのように湖の反対側で牛蛙が鳴き始めた。

楽器のギロの様だけど、もっと低くてズシンと響く鳴き声だった。
「グオオオオオォグオオオオオォ…」

「グオオ」
どうやら近くにもウシガエルがいるらしい。
鳴くのが下手なウシガエルが2匹「グオオ」「グオオ」と鳴いている。

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短編小説『珈琲と夏』

短編小説『珈琲と夏』

高2の夏
今年もセミが鳴き始めた。

いつもなら別の高校に通う親友と待ち合わせてバスで帰宅するが、高校が違うと毎日そうは行かなかった。
そんな時、親友は私に「先に帰って」とメッセージをくれた。

ホームルームを終え、同じ高校に通う友人達に別れを告げて教室を出ると、少し広間のようになっている廊下で部活支度をする野球部の背中が見える。

上裸になった野球部は腕と身体とでしっかりとオセロになっていた。

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8月5日に君と氷菓を(short short story)

8月5日に君と氷菓を(short short story)

ガタンゴトン…
「車内では,携帯電話をマナーモードに…」

最近よく思い出す。
保育園までは君とお互いに○○ちゃんと呼びあっていた。

小学校に上がると、さん付けをするようになった。
小学校ではそれが決まりらしかったので、幼馴染の君も皆んなも互いを○○さんと呼んだ。

すでに親しい呼び方があるのに、わざと丁寧な言い方にするのは不自然に思えて恥ずかしかったけれど、そんな気持ちもぎこちなさと共に少

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