物語『ウシガエル』
もう白鳥が飛び立った後の湖で、
数羽の鴨だけがぴちゃぴちゃと足をばたつかせていた。
少しの間しんとした間があった後、
頃合いをみたかのように湖の反対側で牛蛙が鳴き始めた。
楽器のギロの様だけど、もっと低くてズシンと響く鳴き声だった。
「グオオオオオォグオオオオオォ…」
「グオオ」
どうやら近くにもウシガエルがいるらしい。
鳴くのが下手なウシガエルが2匹「グオオ」「グオオ」と鳴いている。
耳を澄まし、少し不自然な音の方へ近づいて
バラの垣根のあちら側をのぞいた。
垣根の影にいた車椅子の少女達と目が合った。
彼女たちは今まで外に出た事がないかのような肌の白さで、僕は少し恐ろしくなったが、そのまま目を逸らせなかった。
少女たちはこちらを向いて一瞬驚いたような顔を見せたが、すぐに僕などはじめからいなかったかのように、また少し下手な鳴き声を湖の方へ響かせて互いに笑い合った。
「...」
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