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ジョブ型人事制度のポイントと、各社の導入事例、取り組みについて(事例紹介あり)

こんにちは。HR Climbersです。

近年、日本企業の間でジョブ型人事制度の導入が急速に進んでいます。この動きは、グローバル化の加速、労働市場の変化、そして新型コロナウイルスの影響による働き方の多様化など、様々な要因が背景にあります。

しかし、ジョブ型人事制度の導入は簡単ではありません。多くの企業が、具体的にどのように進めればよいか悩んでいるのが現状です。

そこで今回は、2024年9月に政府が公表した「ジョブ型人事指針」に掲載されている20社の導入事例を詳細に分析し、人事担当者の皆さまに役立つポイントをまとめました。

本記事の目的は、以下の3点です。

  1. ジョブ型人事制度導入の主要ポイントを明確にする

  2. 各企業の具体的な取り組みや成功事例を紹介する

  3. 導入における課題とその対応策を提示する

ジョブ型人事制度の導入は、単なる人事制度の変更ではありません。それは、会社の競争力を高め、社員一人ひとりが自律的にキャリアを構築していくための重要な戦略です。

しかし、日本の雇用慣行や企業文化との調和を図りながら導入を進めていくのは、決して容易なことではありません。多くの企業が試行錯誤を重ねながら、自社に最適な形を模索しています。

本記事では、そうした企業の取り組みから得られた知見を共有し、皆さまの会社でのジョブ型人事制度導入の一助となることを目指しています。

これから紹介する事例や導入のポイントが、皆さまの会社の人事戦略を考える上でのヒントになれば幸いです。

※ ジョブ型人事制度とはなにか?について別記事をご参照ください。


ジョブ型人事制度導入を成功させるための6つのポイント

我々、HR Climbersが20社の導入事例の分析を行い導き出した、ジョブ型人事制度を成功させるための6つのポイントについて考察していきます。これらのポイントは、多くの企業に共通して見られる重要な要素です。


6つのポイントの詳細解説

先ほど紹介した6つのポイントについて、具体的な企業事例を交えながら解説していきます。これらの事例から、皆様の会社でジョブ型人事制度を導入する際のヒントを見つけていただければ幸いです。

経営戦略との連動

ジョブ型人事制度の導入を成功させるには、経営戦略との連動が不可欠です。単なる人事制度の変更ではなく、将来ビジョンの実現に向けた会社としての重要な施策として位置づけることが重要になってきます。

多くの企業が、ジョブ型人事制度を経営戦略の一環として導入しており、例えば、グローバル化の推進、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、イノベーション創出の促進など、様々な経営課題の解決手段としてジョブ型人事制度を活用しています。

具体的には、以下のような取り組みが見られます。

  1. 事業ポートフォリオの変革に合わせた人材ポートフォリオの転換

  2. グローバル共通の人材マネジメント基盤の構築

  3. 新規事業や成長分野における即戦力人材の獲得

  4. 社員の専門性向上と組織の競争力強化

  5. 多様な働き方の実現によるイノベーション促進

経営戦略との連動により、ジョブ型人事制度の導入が全社的な取り組みとして推進しやすくなりますし、経営陣のコミットメントを得やすくなることで、社内の理解も得られやすくなります。

さらに、人事戦略が経営戦略の実現を直接的に支援することで、企業の競争力向上にも大きく貢献します。社員一人ひとりの役割と責任が明確になり、個人と組織のパフォーマンス向上につながるのです。

ただし、経営戦略との連動を図る際は、現場の実態や社員の声にも十分に耳を傾ける必要があり、トップダウンの導入だけでなく、ボトムアップの意見も取り入れながら、バランスの取れた制度設計を心がけることが大切になります。

具体例(富士通、日立製作所、パナソニックコネクト)

段階的な導入アプローチ

ジョブ型人事制度の導入において、多くの企業が採用しているのが段階的な導入アプローチです。

一気に全社導入するのではなく、段階を踏んで徐々に制度を浸透させていく方法です。この手法の最大の利点は、制度の問題点を早期に発見し修正できること、そして社員の受け入れ態勢を整える時間を確保できることにあります。

一般的な導入パターンとしては、まず管理職層から始め、次にエンジニアやマネージャーなど高度専門職へ拡大し、最後に非管理職層へ展開するという流れが多く見られます。管理職層から始めるのは、組織全体への影響力が大きく、変革の推進役となることが期待できるためです。

高度専門職は市場価値が明確で、ジョブ型の考え方になじみやすい層です。非管理職層は最も人数が多く影響範囲が広いため、慎重な対応が必要となります。

この段階的アプローチには、リスクの最小化、学習と改善の機会の確保、社員の適応時間の確保、柔軟な調整が可能になるなど、多くの利点があります。

各段階での目標と評価指標を明確にし、進捗を管理することが重要です。また、社内コミュニケーションを充実させ、導入の意図や進捗状況を定期的に共有することで、社員の理解と協力を得やすくなります。

具体例(テルモ、富士通、ENEOS)

等級・報酬・評価制度の抜本的再設計

ジョブ型人事制度の導入に伴い、等級・報酬・評価制度の抜本的な再設計が必要となります。これは組織全体の価値観や働き方の転換を意味し、職務の大きさや市場価値を反映した制度設計が求められます。

等級制度では、職務の大きさに基づく等級体系の構築が中心となります。グローバル共通の枠組みを導入し、年功要素を排除することで、公平性と一貫性を確保します。

報酬制度では、市場価値を反映した報酬レンジの設定が重要です。職務給の導入により、同一職務同一賃金の原則に基づいた公平性を確保します。高度専門職には別途の報酬制度を設計することもあります。

評価制度では、成果と行動の両面を評価する仕組みを導入します。絶対評価の採用により、個人の成長と貢献を正確に評価し、グローバル共通の評価基準により公平性を確保します。

これらの再設計により、職務と報酬のリンクが明確になり、公平性と透明性が高まります。しかし、既存社員の処遇変更や職務の価値評価、等級要件の定期的な見直しなど、多くの課題も伴います。

具体例(KDDI、アフラック生命保険、資生堂)

社員のキャリア自律支援

ジョブ型人事制度の導入に伴い、社員の自律的なキャリア形成支援が重要性を増しています。従来の会社主導型から、社員自身が主体的にキャリアを考え、選択する仕組みへの転換が求められているのです。

この変化を支える主な施策として、社内公募制度の拡充が挙げられます。社員が自ら希望する職務に応募できる機会を増やし、部門を超えた異動を可能にすることで、多様なキャリアパスの形成を支援します。

また、キャリア相談窓口の設置も効果的です。専門のキャリアカウンセラーを配置し、中立的な立場からアドバイスを提供することで、社員の不安や悩みに寄り添います。

キャリア向上の為の学習プラットフォーム提供も重要な施策の一つです。特にeラーニングプラットフォームは時間や場所を問わず学習できる環境を整備し、多様な学習コンテンツを提供することで、社員のスキルアップを支援します。

さらに、キャリア開発計画書(CDP)の作成支援も行います。社員が自身のキャリアビジョンを明確化し、具体的な行動計画を立てるのを手助けします。

社内インターンシップや副業の奨励も、新たな取り組みとして注目されています。短期間、他部門で働く経験を提供したり、社外での副業を認めたりすることで、多様な経験を通じた成長を促進します。

これらの施策を通じて、社員一人ひとりが自身のキャリアに主体的に向き合い、成長していく環境を整えることができます。同時に、組織にとっても、柔軟で多様な人材を育成・確保することができ、変化の激しいビジネス環境への適応力を高めることができるのです。

具体例(資生堂、KDDI、ライオン)

人事部門の役割変革

ジョブ型人事制度の導入に伴い、人事部門の役割は大きな変革を迎えています。従来の管理業務中心の役割から、より戦略的な役割へのシフトが求められるようになりました。この変化は、企業の競争力強化と持続的成長に直結する重要な要素となっています。

主な変化の一つとして、HRBPの機能強化が挙げられます。HRBP(Human Resource Business Partner)は、人事部門と事業部門をつなぐ重要な役割を担います。ジョブ型人事制度の下では、HRBPはより深く事業戦略を理解し、それに基づいた人材戦略の立案と実行をサポートすることが求められます。

例えば、事業部門の中長期計画に基づいて必要な人材を予測し、適切な採用・育成計画を立案するなど、より戦略的な関与が期待されています。

社員のキャリアオーナーシップサポートも、新たな重要な役割です。ジョブ型人事制度では、社員自身がキャリアを主体的に選択することが前提となります。

人事部門は、キャリア相談の実施や、社内公募制度の運営、スキル開発機会の提供など、社員が自律的にキャリアを構築できる環境を整備する役割を担います。

さらに、戦略的な人材マネジメントへのシフトが求められています。これは、単なる人員配置や労務管理にとどまらず、企業の中長期的な成長戦略に基づいた人材ポートフォリオの構築や、組織文化の形成、従業員エンゲージメントの向上など、より広範かつ高度な人材マネジメントを指します。

これらの変化に対応するために、人事部門自体のスキルアップも必要となります。データ分析能力、ビジネス戦略の理解、コーチングスキルなど、従来の人事スキルに加えて、より幅広い能力が求められるようになっています。

具体例(リコー、富士通、アフラック生命保険)

丁寧な社内コミュニケーション

ジョブ型人事制度の導入成功には、社員への丁寧な説明と理解促進が不可欠です。新制度への移行は社員に不安や抵抗感を引き起こす可能性があるため、十分なコミュニケーションが重要となります。

主なアプローチとして、まず経営トップからのメッセージ発信が挙げられます。これにより、制度導入の意義や目的、会社の将来ビジョンとの関連性を明確に示すことができます。

次に、制度説明会の開催が効果的です。全社員向けの大規模な説明会から、部門別や階層別の小規模な説明会まで、様々な形式で実施することで、社員の理解度を高めることができます。

労働組合との協議も重要なステップです。労働条件の変更を伴う場合は特に、十分な対話と合意形成が必要です。

社内SNSやイントラネットを活用した情報発信も有効です。制度の詳細やFAQ、導入スケジュールなどを随時更新し、社員がいつでも必要な情報にアクセスできる環境を整えることが大切です。

最後に、管理職向けの研修実施も重要です。管理職は新制度を部下に説明し、実際の運用を担う立場にあるため、制度の理解と運用スキルの習得が不可欠です。

具体例(アフラック生命保険、ENEOS、レゾナック・ホールディングス)


以上、6つのポイントについて詳しく解説しました。これらのポイントは相互に関連しており、バランスよく取り組むことが重要です。


ジョブ型人事制度導入の課題

ジョブ型人事制度の導入は、多くの企業にとって大きな変革をもたらします。その過程では様々な課題に直面することになりますが、これらを適切に対処することが成功への鍵となります。

外部人材の報酬設定

ジョブ型人事制度では、職務の市場価値に基づいて報酬を設定することが基本となります。しかし、これは既存の社員との間に大きな報酬格差を生む可能性があります。

社員の意識改革

社員の意識改革は、ジョブ型人事制度導入における最も重要かつ困難な課題の一つです。日本の企業文化に深く根付いた年功序列や終身雇用の概念から、職務に基づく評価や自律的なキャリア形成への転換は、多くの社員にとって大きな変化となります。

キャリア自律支援の充実

ジョブ型人事制度の導入において、キャリア自律支援の充実は非常に重要なテーマです。従来の日本型雇用システムでは、会社主導でキャリアが形成されることが多かったのに対し、ジョブ型人事制度では社員自身が主体的にキャリアを選択し、構築していくことが求められます。

評価制度の運用

ジョブ型人事制度の導入において、キャリア自律支援の充実は非常に重要なテーマです。従来の日本型雇用システムでは、会社主導でキャリアが形成されることが多かったのに対し、ジョブ型人事制度では社員自身が主体的にキャリアを選択し、構築していくことが求められます。


これらの課題に対処するには、綿密な計画と段階的な導入、そして継続的な改善が必要です。


【まとめ】人事の重要性は増々高まっていく!

いかがでしたでしょうか?
少し前から人事界隈を賑わせていたジョブ型人事について今回はまとめさせて頂きました。
次回は人的資本経営やピープルアナリティクス等についてもまとめていきたいと考えています。

こういった新しい取り組みを含め、現代のビジネス環境においては競争原資の源である組織・人を取り扱う人事という仕事が今後増々重要になってくると我々は考えています。

一昔前はバックオフィスという位置づけであった人事が、今後はビジネスの根幹を担っていく事になります。
人事として組織・採用等を通じて事業を成長させたい。そんなマインドをお持ちの方々のキャリアのご支援をHR Climbersではさせて頂きたいと思っています。

是非キャリアの方向性に悩まれてる方は是非ご相談頂けますと幸いです。


※ 本気記事は以下記事を情報元に記載させて頂きました。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/jobgatajinji.pdf


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