感情リクルーティングの面談②クロージング面談
こんにちは、採用支援サービス「Saimane」を提供している、アローリンクの蘓(いける)です。
ここまで「ジャッジ面談」や「動機形成面談」を通じ、学生の価値観を理解し、企業と求職者双方が納得感をもって前へ進むための手法をお伝えしてきました。今回のテーマは、その最終局面ともいえる「クロージング面談」です。
「内定を出したのに、なかなか意思決定まで至らず悩まれる…」
「最後の一押しが難しく、気づけば辞退に至ってしまう…」
こうした悩みは採用担当者みなさんが抱えているのではないでしょうか。
私も過去に同じような悩みを抱えていました。
クロージング面談は、まさにこの「最後の決断」を学生が下せるようサポートする場となります。
単なる「押し売り」や「強引な勧誘」にならないよう、感情リクルーティングや採用マーケティングの観点を取り入れることで、学生は心を開き、前向きな決断につながります。
今回は、感情リクルーティングや採用マーケティングの視点を取り入れた「クロージング面談」のポイントをお伝えします。
なぜ学生は「決断」できないのか?
まず大前提で理解しておきたい前提は、学生は「決断」することに慣れていないという点です。
これまでの人生で、周囲の大人や環境に敷かれたレールの上を歩んできた彼らにとって、小さな意思決定はあったとしても、「大きな決断」を何度も経験している人は少ないのです。
“人生を左右する就職先を決める”という行為は未知の体験。
そのため、どれだけ情報を与えても「100%納得」しなければ前に進めない…という錯覚に陥りがちです。
ここで採用担当者が意識すべきなのは、「決断自体がゴールではなく、決断後にその選択を正解へと導いていく」という考えを教えてあげることです。
この言葉は、学生の緊張や不安を和らげ、「この企業なら失敗しても応援してくれるかも」と感じさせます。結果、押しつけではない、共感ベースのクロージングが可能になります。
決断をサポートしよう
採用担当者の皆さんが果たすべき役割は、「決断を促すサポーター」として学生の背中をそっと押してあげることです。
採用マーケティングの考え方では、最後のクロージングは顧客(求職者)の意思決定を支援する重要なステップとなります。
ここで気をつけたいのが押し付けるような「早く決めて!」「うちに来なよ!」は絶対にNGです。
強引な引き留めや根拠のない「ウチに来なきゃ損」メッセージは逆効果です。求職者の頭の中が整理できていない状態で無理に迫ると、「逃げたい」という感情を生みかねません。
いわるゆ「オワハラ」ってやつですね。
大切なのは、学生が迷っているポイントを一緒に“紐解く”こと。
「他社と何が違うのか?」「なぜ決めきれないのか?」を丁寧に整理してあげることで、学生は頭の中が整理され、自分の気持ちや優先順位を明確化できます。
紐解いた上で、「目指す未来は、うちの環境で叶えられそう?」と価値観の確認と示唆質問をすれば、学生は「ここでなら理想に近づけるかも」と納得しやすくなります。
丁寧にヒアリングし、混乱した状況を一緒にクリアにしてから「当社を選ぶ」選択肢を提示すると、「無理強い」ではなく「理解とサポート」による後押しが可能になります。
「100%理解してから決める」は不可能であると伝える
また多くの学生は、「全てを理解してから決断したい」と考えがち。しかし、世の中には何万という企業があり、その全てを完璧に比較検討することは不可能です。
社会人経験を交えて、「実際、社会人になっても常に不確実な中で決断している」ことを伝えましょう。
「完璧に理解するなんてできない。でも、決断した後、その選択を正しくする努力を続けることが大事なんだ」と教えてあげてください。
この視点は、学生に「完璧な情報を揃えるまで待たなくていいんだ」という安心感を与え、「今の材料でベストを尽くせばいい」と思えるようになります。
恋愛と就職は似ている?
「たくさんの会社を比較し、100%理解してから決めたい」という学生の気持ちは、理想論に近いもの。
人生で重要なパートナーを選ぶ「結婚」をイメージしてみてください。
複数の相手を同時並行で100%理解して決断するなんて不可能ですよね?
就職活動も同じです。
さきほども伝えた通りですが「全社を完璧に理解してから決める」のではなく、ある程度の納得感を得た段階で選択し、後から「その決断を正しくしていく努力を重ねることが社会人としての大切なスキルだ」と伝えてあげましょう。
恋愛と結婚に例えてあげると同じ内容でも伝わりやすかったりもします。
こうした対話により、「決めること」への抵抗感を和らげ、「自分の決断を信じることが重要なんだ」と理解してもらいます。
親御さんへの配慮も忘れずに
近年、「親カク(親が内定承諾を確認する現象)」という言葉が生まれるほど、親御さんの存在感が増しています。
学生は、親の意見を無視できないものです。
(本当は自分の意思で決めれるような学生を採用したいものですが、、)
そこで、親御さんの目線でもポジティブな印象を持ってもらえるような配慮が効果的。
たとえば、内定後に「ご両親に“ここまで成長させてくれてありがとう”と感謝を伝えてみては?」と勧めると、「あ、この会社は心の通ったアドバイスをしてくれる」と親子で感じてもらえます。
このちょっとした気遣いが、最終的な内定承諾につながる大きなきっかけになることもあるのです。
ジャッジ・動機形成・クロージングの3フェーズ
これまでのプロセスを整理すると、
この流れをきちんと踏めば、学生の頭と心は整理され、安心して意思決定できるはずです。強引ではなく、あくまで相手の悩みを紐解き、一緒に未来を描くパートナーとして関わり続けることがポイントです。
まとめ
クロージング面談は、単に「内定承諾」を引き出すための場ではありません。むしろ、感情リクルーティングと採用マーケティングを活用して、学生が自分の未来に一歩踏み出すための背中をそっと押す「サポートの場」と捉えましょう。
感情リクルーティングの視点で、
こうしたアプローチを実践すれば、単なる「条件説得」ではなく、「共感」と「納得」を伴うクロージングが可能になります。
そして「この企業となら、自分の決断を正解にしていける」と納得感を持って「決断」してくれるはずです。
決断のための背中押しができれば、学生は安心して「よし、ここで頑張ろう」と入社を決めてくれるはずです。ぜひ今回のポイントを参考に、自社の採用活動に活かしてみてください。
次回は、最終面談について深堀りしていく予定です。どうぞお楽しみに!
株式会社アローリンク 蘓伸太郎