夢がない?それでも輝けるキャリアの築き方〜やりたいことなんて、分からなくていい〜
自分自身を見失う不安
特に採用の仕事をしていると、近年では「志望動機を問わない」というものも増えてきました。実際にとある若手層が主軸のダイレクトリクルーティングのサービスでは「志望動機不問」という検索フラグがわざわざ設置してあるくらいです。
これまで新卒の学生さんや第二新卒などの若手層の採用面談などに参加すると、これまで何度も「やりたいことがわからない・・・」という話を聞いてきました。また、やりたいことがわからない自分はダメな奴なんだ、落ちこぼれなんだ、とさえ思っている人も。
そりゃ、やりたいことが明確でその目標に向かって爆走している人を見ると、キラキラして見えます。その対比として、自分が何をしたいのかもわからず、何者なのか自分で自分のこともわからない。特に横一線でスタートラインを必然的に切られる新卒一括の日本の就活では、そんな焦りを感じる学生さんも少なくなかった実感があります。(過去には、面接中に泣き出した学生さんもいたくらい)
企業の採用面接でも、当たり前のように志望動機を聞いたりしますが、本当に面接官も学生・若手の時代にやりたいことあったの?って思います。しかも、それを聞いたところで建前で対策された回答を準備されるだけで、面接のミスマッチが大きくなっているだけです。
やりたいことがわからない=ダメ人間?
私自身の学生時代を思い返してみても、やりたいことなんて全く分かりませんでした。しかも、当時は就職氷河期。落とされる企業の方が圧倒的に多く、何度も自己否定をして、それこそ「俺って、世の中に必要ないのかな?ダメ人間?」とか思って、落ち込んだことも。
いまこうやって、私はHRの仕事をしていますが、これも最初から狙ってたどり着いたわけでもなく、積み上げの結果でしかないと思っています。
いまになって思うのは、「本当にやりたいことって、そこまで必要なのか?」「大人が求めすぎているんじゃないか?」ということ。何だか、「やりたいことがない=ダメ」という空気感が、若手を追い込んでしまっていないのか?と思います。
実体験がない・少ないんだから、やりたいことがわからないのは、むしろ当たり前ではないかと思います。
Must→Can→Will
キャリアを語る上で、よく「Will-Can-Must」の話があります。この概念を生み出したリクルートさんの本来の解釈とは異なるかもしれませんが、個人的には、この「Will-Can-Must」を考える時、3つの円の重なりではなく、「Must→Can→Will」の延長線の積み上げ3段階層のイメージでいいんじゃないかと思っています。
MustなくしてCanはないし、CanなくしてWillはない。Mustにちゃんと向き合っていく中でCanが増えるし、その先にWillの解像度も上がって、道が拓けてくるという積み上げのイメージです。
3つの円が重なる場所を探そうとすると、最初からWillやCanがないといけないし、キャリアのない学生や若手はきっと行き詰まってしまいます。
Mustは必ずしも、自分の関心のあること、自分のベクトルと合うものではないかもしれません。だけど、特に若いうちは自分の可能性なんて、そんなにわからないし、余計なこだわりを持ちすぎると、逆に成長の機会を失うことにもなる気がします。
まだ自分がわからないなら、とにかく選り好みせずに、打席に立つこと。その機会を増やすことが大切だと思っています。
不確実性の高い時代のキャリアの分散投資
若手の最初の仕事のほとんどはMustばかりです。嫌なものもあるでしょう。ただ、MustはWillに変えることはできます。それは、仕事の捉え方、意味づけ次第です。与えられた仕事が雑用だと感じたとしても、世の中に雑用という仕事はありませんし、それは、誰かがやる仕事です。
選り好みしすぎずに、目の前のことを一所懸命にやれること全部やるくらいの気持ちのほうが良くて。
最初から1本に絞って深くやるよりも、マルチで並走させていきながら、良いものを残していくという動き方のほうが、最終的には損失が少ないことも多いし、このような不確実性の高い時代では、実体験のない思い込みでキャリアの方向性を絞り込む方が逆にリスクが高いようにも感じます。
若いうちは、キャリアの分散投資。
まず拡げてから、絞る。
そうすることで、こだわりの1本だけではなく、2本、3本と強みが増えていき、T型・H型と言われるような強みの掛け合わせができることで、結果的に世の中に求められるキャリアが築けるのかな、と思います。
本当にやりたいことは、自分でできる領域が増えてからじゃないと実現できないことが多い。目の前の仕事をバカにせずに、与えられた仕事の意味づけをしっかりできる「意味づけ力」のある人が、謙虚に物事を吸収して成長していける人だと思います。
逆に周りに責を求めて、自分に矢印を向けずに不満だけを垂らす人は、一生やりたいことなんて実現できなかったりします。
また、Willがあったとしても、誰も喜ばないこだわりなら、ただの趣味です。だけど、誰かが喜び、お金を払ってでもほしいものになるなら、それは立派な仕事になります。
自分のやりたいことだけで成功できるのは、ほんの一握りの天性の持ち主だけ。人を喜ばせ、役に立ち、ありがとうという言葉をもらうことが幸福度を高めるんじゃないかな、と思います。
まずはスライム、次にドラキーでいい
組織の中でも、明確な目標を立てることが絶対的な正義というイメージがありますが、どちらかと言うと、自己効力感や自信がない人にとっては、「自分にもできるかも」と思わせることの方が大切だったりもします。
大きな山を見せればやる気になるというのは幻想。それよりも、目の前の小さな山の方がよっぽど重要で、それをバカにせずに、積み重ねていくこと。
経験が積み上がるのは、経験に応じて適切な難易度のものに向き合うからレベルが上がるのであって、難易度が上がらない経験だけをただこなしてもレベルは上がりません。
経験値がたまってきたのに、スライムばかりと戦っていてはレベルアップしないのと同じように。成長するなら、適切な難易度設定は大切です。
ゾーマを倒すぞ!と壮大な目標だけを高々に掲げても、そこに至るプロセスが見えなければ「そんなの無理だよ…」ってなるだけです。
スライムを簡単に倒せるようになったら、次はドラキーとか、そういう小さな勝利(ベイビーステップ)を積み上げてプロセスを示し、実現への階段・道筋をつけることが昨今のキャリア形成を担う組織のリーダーの役割にもなっているんでしょうね。
(↓役に立った!いいね!と思われたら、ポチッといいね!をお願いします!更新継続の励みになります!↓)