【読書】 狂った世界を生きる知恵 『よみぐすり』
とにかく元気のでる本だ。
『よみぐすり』のタイトルの通り、読むことが「くすり」となり、こころと体が健康になる。
ツイートでの発言をまとめた書籍は、哲学者である千葉雅也氏の『ツイッター哲学』や、筋トレの有用性を解いた『筋トレが最強のソリューションである』などの先行作があるが、本書も間違いなくツイッター本の傑作に入る。
「無料」で読めるツイッターの記事をまとめた本を、わざわざお金を出して買う必要があるのか疑問に思われるかもしれない。
しかし本になったことで、それぞれバラバラだったツイートが、意味のまとまりとして再構成されている。
これにより、1つのツイートでは伝えきれていないニュアンスや意味を補完してくれ、読者の理解に役立つ。
それが880円(Kindle版)で読め、昼ごはん代と変わらない金額なので決して高くはない。
鬱や周りの環境に挫けそうな人はすぐに本書を手に取り、考え方を身につけて、自分を守るために行動を起こしてほしい。
また、本書は楽しく生きていくための知恵が盛りだくさんなので、「くすり」を必要としていない人にも、予防医学として本書をおすすめする。
本書をおすすめする理由が、著者の実体験から生まれた生の言葉でできているからだ。
著者自身が躁鬱病に苦しみ、格闘し、日常の一部として鬱と付き合っている。
そんな病気持ちにもかかわらず、人生に行き詰まった人たちを思いとどまらせるために電話番号を公開し、1日30件ほどの電話を受けている。
これらの体験から実際に紡ぎ出された知恵が、本書には満載だ。
1日30件の電話なので、年間にすると1万件となり、それほど多くの人が助けを求めているのも驚きだが、その電話を実際にとっている坂口氏にはさらに驚かされ、尊い。
その莫大な数の相談から導き出された結論は、説得力がある。
また、具体的に参考な生き方を示唆するアドバイスも多い。
本書では励ますだけではなく、ダメ出しも行っている。
このようにアメとムチを使いこなし、読者が健康になれるように導いてくれる。
著者の坂口恭平氏は1978年、熊本県に生まれた。
2001年に早稲田大学理工学部建築学科卒業し、作家・画家・音楽家・建築家など、多彩な活動を行っている。
最も衝撃を受けたのが、2011年の東日本大震災をきっかけに「新政府内閣総理大臣」に就任し、その経緯と思想を綴った『独立国家のつくりかた』だ。
パステル画集に『Pastel』、『Water』があり、絵を見ると、心が洗われるような清々しい気持ちになるので、こちらも是非手にとってもらいたい。
画集には著者のあとがきもあり、『Pastel』のあとがきには著者の生きていく姿勢がつまっており、魂が震えた。
厚生労働省の資料によると、2021年の死亡者数が144万人。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf
警察庁の資料によると、2021年の自殺者数は21万人。
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R04/R3jisatsunojoukyou.pdf
つまり死亡者の15%が自殺者で、死亡者100人のうち15人が自殺ということになる。
狂ったこの世界で生き延びるためにも、『よみぐすり』でサバイバル思考を学ぶ必要がある。