死の淵で、死を想う作家の言葉
映画メディア「osanai」に、小波季世さん執筆による「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」のテキストを掲載した。
Amazon Prime Videoにて、2023年3月17日に配信開始された本作。原作はノンフィクション作家の佐々涼子さんで、ドラマは「ノンフィクション→フィクション」と換骨奪胎した形で仕上げられている。
映画監督を務めた堀切園健太郎さんを始め、スタッフとキャストの尽力によって素晴らしい作品になっているので、未鑑賞の方はぜひ観てほしい。どのエピソードも「死」を取り扱っているので、“痛み”を伴う体験になるが、間違いなく観る価値がある。
作品についての感想は、小波さんのテキストに譲る。
実は1年半前に配信されたドラマをosanaiで取り上げたのは、原作者の佐々さんが2024年9月に亡くなったからだ。
記事によると、2022年に悪性脳腫瘍と診断され、闘病生活を送りながら執筆活動を行っていたそう。『エンジェルフライト』だけでなく、終末期の患者の在宅医療を取材した『エンド・オブ・ライフ』など、佐々さんは厭わずに死と向き合ってきた作家だ。
そんな佐々さんが病魔に倒れることを、ご本人はどれくらい意識していたのだろうか。私は、かなり意識的だったのだと思う。2023年に刊行されたエッセイ集『夜明けを待つ』には、2010年代に佐々さんが自他ともに絶えず病気と隣り合わせだったことが描かれている。
そういった状況において、「死」と向き合うことは、どんな心持ちになるのだろうか。私にはなかなか想像つかないが、『夜明けを待つ』のあとがきを読むと、その一端を垣間見ることができる。
佐々さんにとっての「不退転の決意」と形容するのは不適切にも想うが、書くことを決断した作家だからこそ綴れた文章だと私は感じた。
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死を目前にした職業人が綴る本というのは、枚挙に遑がない。
2019年に刊行された、哲学者と人類学者による往復書簡『急に具合が悪くなる』でも、がん転移の真っ最中だった宮野真生子さんの言葉が強く、そして重く響く。
人間の命や身体、尊厳を、いとも簡単に奪うような事象が頻発している。そのたびに、数値で換算しようとする人々がいて、「本当にそれでいいのか?」と疑問を呈する声が止まない。止まなくて当然だろう。
私ができるのは、死を目前に控えた作家の声に耳を澄ませることだ。いつか佐々さんのような文章を、私も書く日がくるのだろうか。想像はできない。けれど、粛々と準備はしなければなるまい。
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