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小津安二郎生誕120年〜娘をもつ父は確実に感動する「晩春」
週末のNHK朝のニュースに、映画監督のヴィム・ベンダースが登場した。彼が監督した「PERFECT DAYS」で、役所広司が今年のカンヌ映画祭で男優賞を受賞した。ベンダースは、東京国際映画祭コンペティション部門の審査委員長として来日していた。放送の中で、ベンダースは本役割を引き受けた理由として、今年が小津安二郎の生誕120周年、没後60年にあたることを挙げた。小津安二郎を敬愛する外国の映画関係者は多いが、ベンダースはその筆頭とも言える。
そうか今年は小津の年かと思い、録画リストを見ると、WOWOWで4Kデジタル修復版が放送された「晩春」(1949年松竹)があった。(U-NEXT等、配信もあり)
大学教授の曽宮周吉(笠智衆)は妻を亡くしており、娘の紀子(原節子)と二人暮らしである。周吉の家にしばしば顔を出す妹の田口まさ(杉村春子)含め、適齢期の紀子を早く縁付けたいと考えている。
私は二人の娘を持つ父親だが、彼女らが大学を卒業し独立して生活できるようになった時、親としての一定の責任を果たしたと思った。長女は既に結婚して子供もいるが、来年春に次女が結婚することでさらに肩の荷がおりる。順序でいくと、親が先にいなくなる。娘を一人きりにさせないためにも、パートナーがいた方が安心である。「晩春」の時代からは社会が変化しているが、親の気持ちは大きく変わっていないのではないだろうか。
一方で、親を心配する子供の心情、これも同様である。自分が嫁に行くと、一人きりになってしまう父・周吉を紀子は気遣う。時代は変わっても、「晩春」という映画の地位はゆらがない、海外でも高い評価を維持している。その理由は、時や空間が変わっても、人の心の中にある普遍的なものを描いているからだと思う。
映画的には、前半は二人が住む鎌倉と、時折出かける東京とりわけ銀座が、日常と非日常を描写する。さらに、後半における京都は家族の歴史が変化する象徴的な場所として登場する。
杉村春子は、どの作品を観ても素晴らしいのだが、紀子の友人アヤを演じる月丘夢路も印象的。アヤは結婚を一度経験、その“現代的“な態度が、紀子とのコントラストを生み出す。また、周吉の友人小野寺(三島雅夫)は後妻をもらっており、こちらは周吉と対照的に描かれる。
小料理屋での場面、能を鑑賞する父娘、印象に残るシーンが数多く登場する。そうして、それらは娘を持つすべての父親が感動するクライマックスへとつながっていく。
こんな素晴らしい映画を観ると、ベストXXなどというものは関係ないのだが、参考までに記しておこう。1949年どのキネマ旬報ベストワン、イギリスのBFIが2022年に実施した「The Greatest Films of All Time」では21位となっている。ちなみに、20位に黒澤明監督「七人の侍」が入っている。
関係ないが、先日紹介した「狩人の夜」が25位にいた
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