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Photo by
pasteltime
著…藤宮若菜『まばたきで消えていく』
わたしは図書館でふとこの本を手に取り、パラッとページを開いた時、
寝ころんであなたと話す夢をみた 夏で畳で夕暮れだった
という短歌に一目惚れしました。
情景がありありと浮かびますよね。
「わたしにもいつか誰かとそんな夏を過ごせたらいいな」と、素直に羨ましくなりました。
⭐️Kindle版
⭐️単行本版
この本にはこうした、一読しただけでその光景や心情が浮かぶ作品たちが収録されています。
生きていくということのもどかしさ、やるせなさ、歯がゆさを感じさせる作品も多く、「ああ、そうだよな…」と共感します。
冒頭でご紹介したような、「この作品みたいな体験をしてみたい」と思わせる甘酸っぱさのある作品もちらほら。
ただ、
はじけるように飛行機に手をふる子どもまぶしくいつか戦前になる
という作品は現実化して欲しくないです。
これは絶対にだめ。
子どもたちに「戦前」を体験させないことが大人の責務であると改めて気づかされます。
また、
もうすぐでしあわせになれるひとたちが白線の内で不幸をえらぶ
という作品を読んだ時、わたしの心臓は大きく跳ねたような感じになりました。
「もうすぐでしあわせになれる」…。
今この瞬間に生きづらさを抱えている人たちにとって、その「もうすぐ」が永遠のように長いですよね…。
もしも、
みんなひざをすりむいてきたんだし夕焼けをみていたって良いんだよ
という優しさをみんなが持っていられたなら、身近にいる人とほんの少しでも良いからあたたかい言葉をかけ合えたなら、誰も白線の内側にいかずに済むかもしれないのに…。
〈こういう方におすすめ〉
瑞々しい感性でうたわれた短歌集をお探しの方。
〈読書所要時間の目安〉
1時間くらい。
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