文…夢枕獏 絵…松本大洋『こんとん』
※注意
以下の文には、結末までは明かしませんが、ネタバレがあります。
他人の考える「幸せ」と本人にとっての「幸せ」は違うんだなあ、と気づかせてくれる絵本。
本当の「思いやり」って何だろう? と考えさせられます。
この絵本に登場する「こんとん」は、耳はあるけれども聴こえず、目はあるけれども見えず、鼻も口も無くて、でもいつも空を見てわらっていたのだそう。
ある日、「おれたちがおまえに目と耳と鼻と口をつくってやろう」と言う人たちが現れて、「こんとん」に目と耳と鼻と口を作りました。
すると、「こんとん」は倒れてしまいました!
他人にとっては「目と耳と鼻と口がないこと」は不幸せなこと。
しかし、「こんとん」にとってはそうではなかったのです。
むしろ、それらがあることが、耐えられませんでした。
目と耳と鼻と口が無いことで「こんとん」自身が悲しがったり困っている様子があったのならともかく、「こんとん」はその状態でもいつもわらっていたのに、他人の「目と耳と鼻と口がなくてかわいそうだからつくってあげよう」という勝手な価値観から、本人が頼んでもいないお節介を焼いたために、「こんとん」はもう笑うことが出来なくなりました。
誰かに親切なことをするのはとても良いこと。
しかし、相手がそうやって手を差し伸べられることを望んでいない場合もあるんですよね。
相手が「助けて欲しい」と思っているのか?
それとも「ありのままがいい。そっとしておいて」と思っているのか?
そういう相手の気持ちを想像せず、「自分だったら〜して欲しいから、あなたに〜してあげる」と自分目線から親切のつもりで行ったことが、かえって相手を苦しめる。
そうなると、お互い不幸です…。
まさに、小さな親切大きなお世話。
「こんとん」が最終的にどうなったか、興味を持った方は是非この絵本を読んで確かめてみてください。
とても教訓に満ちている絵本だと思います。