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著…中村うさぎ『さびしいまる、くるしいまる。』

 著者がホストに貢いで貢いで貢ぎまくっていた頃の心情を書き綴った本。


 著者は「オヤジな遊びをしてみたい」と思ってホスト遊び始めたそうです。

 それにどっぷり浸かり、気づけば高級シャンパン抜き放題。

 序盤から120万円以上が泡と消えたそう。

 著者は昔からありのままの自分を愛そうとしても愛せずにいました。

 だから、美しい顔の男に「ありがとう」と感謝される自分を愛そうとした…。

 …そう振り返っておられます。

 著者のコンプレックス。

 それは、凡庸な容姿に生まれついたこと。

 読者であるわたしから見れば、著者は整形する以前から綺麗な顔をなさっていると思うのですが…。

 自分は美しくない。

 こんな自分は愛せない。

 けれど自分を愛したい。

 そうした想いがせめぎ合って、たとえようのない欠落感を埋めるために、著者はお金を遣って遣って遣いまくったそうです。

 自分の武器は美貌ではなくお金。

 お金を遣って何が悪いの?

 …と。

 お気にいりのホストをお店の上位にするためにドンペリを抜きまくり、お酒に酔うというよりも、ホストとの一体感に酔ったそう。

 ホストに見惚れ、「自分もこんなに美しかったなら自分の人生はもっと素晴らしかったのだろうか」と考えました。

 ホストを、自分が得られなかった自分として見つめました。

 理想の自分に「あなたが必要だ」と言われ、「ありがとう」と言われたかったから。

 そう言われる自分なら愛せる、そんな気がした…。

 そのために月200万円以上ものお金を遣い、夫の父が危篤だというのに駆けつけることなくホストクラブへ向かい、預金口座にはもはや数万円のお金も残っていないのに1本100万円のブランデーを入れ、…ついに区役所に預金口座を差し押さえられ預金残高0となったそうです。

 1円すら残らぬ、0。




 わたしはこの本を泣きながら読みました。

 どんなに手を伸ばそうとも欲しいものに手が届かない、どんなに心の穴を埋めようとしても埋まらない、その寂しさや苦しさが伝わってきたから。




 〈こういう方におすすめ〉
 埋めようとしても埋められない心の穴がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間くらい。

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