著…大空幸星『「死んでもいいけど、死んじゃだめ」と僕が言い続ける理由 あなたのいばしょは、必ずあるから』
顔も名前も声も出すことなく、24時間365日いつでもチャットで悩みを相談できる無料窓口を運営している著者の本。
人は時折「ひとりになりたい」と願うものですが、それと「ひとりになってしまう」のは全く違うものです。
この本では、後者について言及されているため、読んでいて胸が締め付けられます。
個別の事例紹介はありませんが、相談窓口に寄せられる悩みの内容から、いかに孤独を抱えた方が多いかが伝わってきます。
人は他者と関わり合いながら生きていくものなのに…。
なお、タイトルの言葉は、著者が昔の自分自身に伝えたい言葉なのだそう。
著者は小学生時代、両親の怒鳴り合う声と物が壊れる音が聴こえてくると、枕で耳を塞いだり、小声で歌ったりして、どうにかやり過ごしていました。
やがて母親が出て行った家の中で、父の暴言や暴力の矛先を向けられ、これまで曲がりなりにも自分の居場所だった家庭が壊れていく感覚を味わったそうです。
安心出来る場所でなくなった家では、なかなか眠れませんよね。
だから著者は朝起きられなくなり、唯一の安全な居場所だった学校へ行けなくなりました。
そんな著者のことを父が厳しく叱責するので、父となるべく顔を合わせなくて済むよう、昼夜逆転の生活を送るようになった。
心はすり減っていくばかり。
ぼんやりする中で、生まれてきた理由や、生きる意味について考えたけれど、答えは出ませんでした。
死ぬ苦しみよりも生きる苦しみの方が上回ったので、死のうと思ったけれど、結局死ぬ気力さえ出ず、そんな自分を更に嫌いになってしまう日々…。
…著者がその後どうやって生き、相談窓口の立ち上げに至ったか気になる方は、是非この本を読んで確かめてください。
著者に限らず、今まさに生と死の間で揺らいでいる方は、老若男女問わず沢山いることでしょうね…。
その境界は、残念ながらとても曖昧。
ふとしたきっかけで簡単に死へと傾いてしまいます…。
そんな中で、誰か一人でも信頼出来る人と出会ったり、安心して弱音を吐いたり、ほんのささやかであってもホッと出来る瞬間があれば…。
きっとそれが居場所になるのだと思います。
この本はそのことに気づかせてくれます。
たった一言でもいいから、お互い声をかけ合える相手がいるということが、どんなに心のよりどころになるのかということを。
〈こういう方におすすめ〉
「自分には居場所がない」「頼れる人がいない」「死にたい」と苦しんでいる方。
〈読書所要時間の目安〉
3時間くらい。