著…池坊由紀『花の季(とき) 池坊由紀の世界』
少し傷んでいたり、虫喰いのある葉。
そういうものって、普通は何も悩まずに鋏でパチンと切ってしまいますよね?
しかし、この本の場合は違います。
命のうつろいを活かした生け花の作品があり、わたしは感銘を受けました。
満開に咲き誇る花や、青々と茂る葉や枝だけが美しいのではない。
死の気配を纏うようになった花や葉や枝もまた美しいのだ…と気づかされました。
と著者は述べています。
きっと、草花への尊敬の念があるからこそ、たとえ枯れゆく間際であっても凛とした風情で生けられるのでしょうね。
枯れるまで生き続ける…。
当たり前のことのようでいて、実は普段意識しないことなので、ハッとさせられました。
もしかしたらそれは人間にも言えることかもしれませんね。
「死ぬまで生きる」…。
そう言うと、「なんだ、そんなの当たり前じゃないか」と思う方もいるかもしれません。
しかし、わたしは常々、「生きている」という言葉と「死んでいない」という言葉の解釈の難しさについて考えています。
人生という限られた時間の中で、己の志を精一杯追求し、命を燃やし尽くせるのか。
それとも、生きているという手ごたえが無いまま、ただいたずらに時を経過させ、死の目前になって「こんなはずではなかった。でも、自分が何をしたかったのかも分からない…」とぼんやりと思うだけなのか…。
この本に登場する草花たちからは、死が訪れるその瞬間まで懸命に生き続ける姿が感じ取れて、わたしは大変心打たれました。
また、この本の中で特に、晒ビロウヤシを使ったP121掲載の作品に見惚れました。
まるで迦陵頻伽が天へと向かって翼を拡げているかのよう。
〈こういう方におすすめ〉
草花の姿を通して風情を味わいたい方。
〈読書所要時間の目安〉
30分くらい。
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