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監修・解説…網本尚子『野村萬斎 What is 狂言?』

 野村萬斎さんが狂言についての様々な質問に答えている本。

 約20年前に出版された本ですが、監修者の解説も興味深いので、楽しく読めます。


 狂言に出てくる人物はみんな、悪役に近いキャラクターもいるけれど、どこか憎めませんよね。

 おっちょこちょいで。

 ちょっぴりずる賢くて。

 仕事をさぼろうとしても、うまくさぼりきれないこともあって。

 その不器用さに、なんだか親しみを感じますね。

 「身近な人に似てるー!」と思ったり、「自分にもこういう一面があるなあ」と気づかされたりすることもあります。

 また、この本には狂言のあらすじも載っていて、それを読んでいるだけでも楽しいです。

 特に『鎌腹』のあらすじは、笑って良いのか分からないけれど、笑いました!

 仕事を怠けてばかりの旦那を妻が叱ると、旦那が「女に侮辱されるくらいなら自殺したほうがマシ」と腹を切ろうとする。

 妻は「やれるものならやってみろ」と捨てゼリフを残して立ち去ってしまう…というあらすじなのです。

 や、やれるものならやってみろ!?

 しかもこの奥さん、

幕が開いた途端、男が飛び出し、妻が鎌を振り上げながら追いかけてくる

(監修・解説…網本尚子『野村萬斎 What is 狂言?』P91の野村萬斎さんによるコメント欄から引用)


 というから驚き。

 お、奥さん…!

 バイオレンス!!

 また、この本を読んでいてわたしが特に感じたのは、狂言って、観る側の人のことは大いに笑わせてくれるけれど、演じる側は非常に神経を研ぎ澄ませているのだなということ。

 笑う。

 泣く。

 歩く。

 寝る。

 といった基本の動作だけでなく、立ち聞きする、何かを思いつく等の、ありとあらゆる動作に「型」があって、その決められた「型」を連続させることで演じている、というから驚かされます。

 親から子へ、そしていつかその子が親となって…という風に狂言の技が伝わっていく過程で、まず型通りにやれるようになるまでが大変でしょうね。

 そこからがスタート。

 その先の道を想像しようとしただけでくらくらしますが、きっとその道をいった人にしか知り得ない芸の極致があるのでしょうね…。



 〈こういう方におすすめ〉
 狂言に関心がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間半くらい。

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