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監修…小口孝志『図解 史上最強 よくわかる社会心理学』

 人間の心って、矛盾だらけで不器用で、そこが愛おしいですよね。

 たとえば、何かに成功すると「自分の実力のおかげだ」と思うのに、失敗すると「条件のせいだ」と思ったり。

 どう見ても青色のものを周りの人たちが「緑色だ」と言ったことで、自分では青色だと思っていても周りの意見に合わせて「緑色だ」と言ってしまうことだってあります。

 これは、そんな人間心理の面白さを気づかせてくれる本。

 わたしは特に、P114〜P115掲載の『えらい人の意見には、やっぱり逆らえない』というページにゾッとしました。

 ここで紹介されるのは、アメリカの心理学者ミルグラムが行った有名な実験。

 監督役(実験者)が教師役(実験参加者)に対して、生徒役が問題の答えを間違える度に電気ショックを与えるよう指示するのです。

 この実験の結果、なんと6割以上の人が、致死量となる電気ショックを与えていたそうです。

 …問題の答えを間違えただけで殺害…!?

 そんな馬鹿な話があるの!?

 …と第三者からすれば驚きますよね?

 しかし、教師役をした人はもし誰かに責められたら「だって、そうするように言われたから」と言い訳するのかもしれませんね。

 恐ろしい…。

 もちろん、この実験において、実は生徒役には電気ショックは与えられず、生徒役は苦しむ演技をするだけなのだけれど(教師役にはそれのことは秘密にされていた)。

 自分のせいで誰かが苦しむことに気づいた時点で良心が咎めて実験の中止を願い出てもおかしくないところ。

 なのに、致死量の電気ショックを与えた人が…多すぎる…。

 これがせめて、実験を拒否した人が6割いて、致死量の電気ショックを与えた人が4割なら(4割でも多いけれど)、まだ良いのですが…。

 …これって、自分の頭で思考するよりも誰かの命令に従った方が簡単だ、自分のせいじゃないもん! という理屈なのでしょうか?

 なんだか、こういうところに、人間社会がいつまで経っても平和にならない理由が隠れているような気がします。

 自分の頭で考えたり、心で感じることを放棄し、良心が痛まないようでは…。

 出来るなら、わたしはこういうシチュエーションで「人に電流なんて流せません」と断れる人になりたいです。

 人間は弱いものだから、土壇場になるとどうなるか分かりませんが。

 願わくば、人としての良心がいつまでも在り続けてくれますように…。



 〈こういう方におすすめ〉
 人間心理の奥深さや闇に興味がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間半〜2時間くらい。

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