留学生
京都で学生生活をスタートさせてから、これまでに多くの留学生と交流する機会があった。研究室で一、二度顔を合わせただけ、というものから、ちょくちょく連絡をもらって食事をしに行く間柄まで、様々である。
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留学生の友人たちが、異口同音に口にする言葉があった。それは「日本人は、思ったよりも日本の漫画やアニメを見てないね」である。
その言葉には、いつも落胆が滲んでいた。日本にくれば思う存分、漫画やアニメの話ができると思っていたのだが……という期待からの失望である。
私も能動的に漫画やアニメを追っかけている人間ではなかったから、この言葉を耳にするたびに、申し訳ない気持ちになった。「どうして見ないのかな?」と問われたこともあったが、「当たり前なものになり過ぎて、ありがたさがないのかもしれない」と答えるしかなかった。見ようと思えばいつでも見れる、が災いして、結局いつまでたっても見ない、が続いてしまっている。
あるドイツ人留学生の友人は、同じような嘆きを口にしたあと、十代の頃に読んだというある作家の日記の一部を紹介してくれた。その作家とは、夏目漱石である。
漱石先生はロンドン留学中にこんな愚痴をこぼしているけれど、まさか私も日本留学中に同じことを感じるとは思わなかったよ……友人は苦笑気味に嘆く。
そうなのか、漱石も……と頷いて聞いていたのだが、時間差で、衝撃が襲う。ドイツ人の彼は、日本に留学する前に、すでに『漱石日記』を読んでいたのか……自分もまだ読めてないのに。嘆きの内容そのものだけでなく、そのポテンシャルの高さに立ちくらみがした。
こういう出会いは、私の場合、彼は彼、私は私、という棲み分けに進むのではなく、ほどよい焦りとなって、一層の学習・探究の方に向かった。ドイツ人の友人に限らず、これまで出会ってきた留学生には感謝しかない。
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