在野研究一歩前(43)「読書論の系譜(第二十五回):内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』(山縣圖書舘、1900)⑥」
今回も前回に引き続き、内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』内で紹介されている、「偉人」の「読書」論を見ていきたいと思う。
●ジヨン・ミルトン(ジョン・ミルトン)
「書籍は精藥を容るヽ壜の如し、其中に之を生みし者の活ける智能の精と粹とを保存す、善き書は大家の貴き生血にして、永劫未來の爲めに、こヽに香料を以て其こヽに貯藏されしものなり
絶えず書を讀みながら之と同等若くは之に優るの精神と判断とも以て讀まざる者は、未だ尚ほ不定不確の中にある者なり;彼等は書籍の上に於ては該博なるべけれども、自身に於ては淺薄なり」(P27~29)
⇒ジョン・ミルトンは、イングランドの詩人。ピューリタン革命に参加し、議会派の論客として活躍した一方、政治から距離を置いて以後は、 代表作『失楽園』の執筆に取り掛かった。『失楽園』は、ダンテ・アリギエーリ『神曲』やアリオスト『狂えるオルランド』と並ぶルネサンス期の長編叙事詩の名著である。
ミルトンは語る。
書籍というのは精薬を容れる壜のようなものである。その中には、書籍を執筆した人物の智能や思考が保存される。優れた書物というのは「大家の生血」であり、未来のあらゆる人間のために、貯蔵されていくものである。
書籍というのは、その中身と同じような熱量をもって読み続けることが求められ、それを怠ると「自分自身」が浅薄な存在になってしまう。
●ベンジヤミン・ウィチコート(ベンジャミン・ウィチカット)
「少しの時間を善く利用する爲に未來永劫にまで利益を得る事あり
善き書は神自身を代表する恩人たることあり」(P29)
⇒ベンジャミン・ウィチカットは、イギリスの神学者、説教師。「ピューリタンの神学校」として知られる、ケンブリッジ大学の「エマヌエル学寮」で学び、卒業後も本学寮にフェローとして所属し、ケンブリッジ・プラトン学派の精神を継ぐ後進の育成に力を注いだ。
ウィチカットは語る。
少しの時間をうまく活用することで、未来永劫にまでよい効果をもたらし続けることができる行動がある。その行動の一つが「読書」であり、素晴らしい書籍に出会うと、「神自身を代表する恩人」と感じずにはいられない。
●ベッドフォード公
「かの黄金の朝の時間を借りて之を汝の書籍の上に消費せよ」(P31)
⇒ベッドフォード公とは、イングランド貴族の公爵位である「ベッドフォード公爵」を受けた人物のことを指す。そのため該当する人物は複数人おり、内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』内の情報だけでは特定することができない。ただ、 前人物の「ベンジャミン・ウィチカット」の生没年が1609年~1683年、前々人物の「ジョン・ミルトン」が1608年~1674年と、列記の順番が「古⇒新」という形をとっているため、おそらく、ここでいう「ベッドフォード公」とは、1694年から始まる所謂「第5期 ベッドフォード公」の誰かを指していると思われる。
ベッドフォード公は短く語る。
あなたは輝かしき朝の時間を、読書することに使うべきである。
―「朝の読書と、夜の読書、どちらがいいのだろう?」という疑問は、読書好きなら一度は抱いたことがあるだろう。ベッドフォード公においては、「朝の読書」を勧めているようである。
以上で「在野研究一歩前(43)「読書論の系譜(第二十五回):内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』(山縣圖書舘、1900)⑥」」を終ります。お読み頂きありがとうございました。