退職代行について思うこと
2日前、前の会社でお世話になった先輩、Tさん(仮名)からLINEが入った。
聞きたいことがあるから時間できたら連絡くれ。と。
退勤し、家に着いてからすぐに電話をかけた。
聞きたかったことは、前の職場での仕事の引継ぎ事項の不明点のことだった。そんな話はすぐに終わり、1時間ほどあれこれしゃべった。
俺が辞めてからの職場の現状、今いる会社のこと、業界の動向、Tさんが進もうとしてる道。
Tさんは口が悪く、関西支店の問題児らしいが、仕事はかなりデキる人だった。関わりはじめた時は嫌だったのが正直なところだが、仕事ぶりはマジですごくて尊敬している。
「お互い頑張りましょう。関西行きますので飲みましょう」
そう言って電話を切った。急なタイミングだったこともあり妙な嬉しさがあった。
2日後、会社を辞めた俺に対し、Tさんが仕事の質問で電話してきたことを詫びに、お世話になった別の上司のS課長が電話をかけてきた。
Tさんの電話のことなど別に何とも思ってない。TさんともS課長とも電話で話せたことがとにかく嬉しかった。
お世話になったからこそ、関係は続けようと思いつつ、辞めた後ろめたさから連絡できなかった自分がいたから。
あぁ、しっかり面と向かって退職を踏み出せてよかったなと思った。
ゴールデンウイークが明け、5月病というやつなのか退職代行が大繁盛しているニュースをよく見かける。
最近、前の職場の方々と話したからこそ、この退職代行のニュースは情けない話だと思った。
前の会社を辞めようと何度も思った。そこで退職代行を使って飛んでやろうと思うこともあった。
なぜ、お金を払ってまでそんなことをしようと思ったのか?
「クソ上司に泡を吹かせてやるため」
「クソな会社だしロクな引継ぎもなかったからやり返そうと思ったから」
まぁ、そんなガキみたいな理由だった。
しかし、その対象は「嫌いな会社内の奴ら」だけであって、お客さんとか、尊敬する上司のことなんか視野にない愚かな考えだった。
自分のことしか考えられない甘ったれた動機でしかなかった。
想ってくれる社内の人、お客さんが俺にもいたからこそ円満に辞めて良かったと今では心から思う。
人生、不思議なものでそういう関係は後々どこかで絡む可能性は少なくないと感じているから。
あくまで個人的な考えだが、退職代行はたとえどんなブラック会社でも使わないほうがいい。
上司が辞めさせてくれないのであれば、拳を使ってでも自分の意志を相手にぶつけて辞めたほうがいい。逃げる時こそ堂々と男らしく退くべきだ。
理由は、先述した後の人間関係もあるが、自分の生き様に関わってくるから。
一度でも「ラク」して逃げた癖は中毒になる。
一度きりでやめられるのならいいが、それが積み重なると「逃げ癖」になり、自分の人生を切り開くことがどんどん難しくなる。
これは円満退社したとはいえ、社会人8年で5社も渡り歩いた自分だからこそ感じる。
人材不足とはいえ、まだまだ社会は逃げ癖、職歴を刻んだ曰く付きには厳しいし、辻褄合わせと理由をまともに聞こえるようにするのはめちゃくちゃ難しい。
そして、20代も終盤に差し掛かると自分の生き方の癖が滲み出てしまう。
現在31歳の俺も、自分の顔つきが20代とよくも悪くも変わってきたことを痛感するし、周りの人たち、会社の年上の人を見てて嫌でもわかるようになる。
あるインフルエンサーさんが俺の匿名での質問にこう答えてくれた。
「逃げられるうちは逃げてもいい。けれどもいずれ、おまえが戦うときは必ずくる」
これは仕事においては真理だと思う。
まだまだクソでブラックな企業、上司がはびこる社会ではあるけれど、
どんな仕事でもどこかの誰かの役には立っているから、自分のことばかり目を向けず、誰かを幸せにするように生きてみてほしい。
退職代行なんかにお金を払うなら上司や会社と徹底的に喧嘩して自分を表現したほうがいい。
後ろめたいことを外注してはいけない。
会社を辞めることくらいはどうってことない。
でも、自分のためだけを考えた逃げは必ず自分を苦しめる。
そういう意味で、今の若手社会人は粘り強く頑張ってほしいと思う。