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2020年7月の記事一覧
好きな歌に好きを言いたい 2020/07/23
「傍観者」と指をささるることもなく生きてオリオンビールを選ぶ
大口玲子『ザベリオ』
この歌が一首目に置かれた章のタイトルが「辺野古崎」で、同じ歌集のもう少し後にも「基地」「座り込み」という単語が出てくることから、この歌が辺野古への基地移設のことを思って詠まれたことは確かだろう。
けれど、もしそういった周辺情報がなくても「傍観者」「オリオンビール」という言葉の情報量から、沖縄に存在する複数
好きな歌に好きを言いたい 2020/07/13
遠雷よ あなたが人を赦すときよく使う文体を覚える
服部真里子『行け広野へと』
ひとを赦すのは難しい。けれど赦したほうが怒りを、そして執着を手放せる分、ずっと楽になれるように思う。そして手放せば楽になれることに気づくと、「赦すこと」と「諦めること」が突然近い意味を持つようになる。
「あなたが人を赦すときよく使う文体」、「よく使う」というところから、赦すことが日常になってしまった「あなた」の
好きな歌に好きを言いたい 2020/07/10
冬に始まったから秋までを観たけどもういちど夏だけを観て、外へ
千種創一『千夜曳獏』
四季にまつわる何かを「観た」こと、「夏」を観たあとに外へ出たこと、情報としてはそれだけの、読み解く手がかりの少ない歌だ。この歌一首をぽん、と出されたら、うっかり「具体的なことばが欲しい」と言ってしまいそうだ。けれどおそらく、この歌からはその「具体的なことば」が意図的に排除されているような気がする。
この歌
好きな歌に好きを言いたい 始めに
一読しただけでは意味を掴みきれない、掴むことができたか自信が持てない、それで何度も読み直すうちに、知らぬ間に心のうちに深く沈んで留まってしまった、そういう歌を記録しておきたい。そんな思いで一首鑑賞を始めます。
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「一読では意味が掴めない」タイプの短歌は、Twitterのタイムラインに流すには向いていないのかもしれない。パッとみて「わからない」と思われたら二度と読ん