好きな歌に好きを言いたい 2020/07/23
「傍観者」と指をささるることもなく生きてオリオンビールを選ぶ
大口玲子『ザベリオ』
この歌が一首目に置かれた章のタイトルが「辺野古崎」で、同じ歌集のもう少し後にも「基地」「座り込み」という単語が出てくることから、この歌が辺野古への基地移設のことを思って詠まれたことは確かだろう。
けれど、もしそういった周辺情報がなくても「傍観者」「オリオンビール」という言葉の情報量から、沖縄に存在する複数の問題を想像することは難しくない。むしろ、この歌は辺野古問題に焦点を絞らず、もう少し広い画角で読みたいなとも思う。
とある問題に関心を持って、現地へ行き活動に参加するほどなのに、より当事者性の強い人から「あなたはしょせん傍観者だから」と名指しされたら傷つくだろうなと思う。いや、どちらかというと虚しい気持ちになるかもしれない。当事者と傍観者のさかい目に客観性のある区切りがあるわけでなく、そこは多分グラデーションだから、誰もが当事者とも、傍観者とも呼ばれる可能性がある。
ここに住む人たちからすれば私は結局のところ傍観者かもしれない、当事者にはなりきれないかもしれない、という気持ちがどこかにあるゆえに
「傍観者」と指をささるることもなく生きて
というフレーズが出てきたのだろうか、と思った。
オリオンビールは爽やかで飲みやすい。すこしもやもやした気分のときもすっと喉に入ってくれるだろう。けれどやはりビールだから苦みもしっかりと残る。
大口玲子『ザベリオ』
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