閉ざされた空間の静かな、儚い音色が、共鳴しあい宇宙を創り出す 〜 「水琴窟」 東京スカパラダイスオーケストラ & 上原ひろみ
日本庭園の装飾の一つ「水琴窟」
水琴窟というものをご存じでしょうか。
水琴窟(すいきんくつ)は、日本庭園の装飾の一つで、手水鉢の近くの地中に作りだした空洞の中に水滴を落下させ、その際に発せられる音を反響させる仕掛けで、手水鉢の排水を処理する機能をもつ。水琴窟という名称の由来は不明である。(wikipedia)
ししおどしの水受けから、こぼれおちた水滴をうけるために、地中に甕(かめ)を埋めておく。その中には、すこし水をはっておく。そうすると水滴がこの水面に落ちた音が、地中の甕の中で響きあって、さながら琴のような(鈴のような)、はかなげな音を奏でるというもの。儚い響きは世の無常を表しているかのようです。
一度、川越の古民家に実際存在していた水琴窟の音を聞いたことがありますが、「琴」というよりは、小さな「鈴」のような音がかすかに聞こえてきて、その空間が厳かなものになったように感じました。真夏の盛りだったんですが、ちょっとだけ温度が下がったような。。そんな感覚でした。
上原ひろみ×東京スカパラダイスオーケストラ「水琴窟」
そんな水琴窟をタイトルに、奏でられたのが上原ひろみ×東京スカパラダイスオーケストラのその名も「水琴窟-SUIKINKUTSU-」。
これが、また、エキゾチックであり、ダイナミックであり、アバンギャルドであり、かつ、時折、水琴窟の音のように繊細な響きもあり、ググっと心に迫ってくる一曲なのです。
出だしは、静かに厳かに。水琴窟の奏でる悠久の音に似たピアノから。と、それは急に一転。金管楽器が入ってきてガラリと雰囲気が変わります。
そのあとは、何かに解き放たれたかのように、自由奔放に音が乱れぶつかり合う。ピアノの連弾、速弾きもリズミカルで心地よく流れていく。
おそらく、日本庭園の持つ枯れた味わい、わびさびのようなものの中に、水琴窟があるとするなら、その甕の中に閉じ込められた音が共鳴しあう空間は、宇宙のようなものではないか。
閉ざされた空間の静かな、儚い音色が、共鳴しあい宇宙を創り出す。
このコラボの楽曲の音は、その宇宙の音、宇宙の表現なのかもしれません。