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僕らが旅に出る理由 〜 「ハイウェイ」 くるり
Because, It’s there.
1999年。
エベレスト山頂付近にて、一つの遺体が発見された。
それはジョージ・マロリーという伝説的な登山家の遺体だった。彼は1924年、イギリス本国の国威発揚をかけた人類史上初のエベレスト登頂に望んだ。しかし、頂上付近で音信が途絶えたままになっていた。
発見された場所、周辺状況から可能な限りの調査が行われたが、今もって彼が世界初のエベレスト登頂を果たしたのかどうかは明らかになっていない。
彼は生前、とあるインタビューを受け、このように答えている。
「あなたはなぜエベレストに登ろうと思うのですか?」
「Because it’s there.(そこにエベレストがあるからだ)」
理由など大したものではない。そこにエベレストがあったから登るのだと。
Reason why we will go on a trip.
学生時代のモラトリアムな時期以降、つまり大人の階段を登り始めてから大人になるまでの時期、、なんとなくぼんやりとした感覚から、人は旅に出たくなるのかもしれない。
その理由はなんでも良いのだろう。
僕が旅に出る理由は百個くらいあって(歌詞引用)
旅に出たいから旅にでるのだ。
Stepping into my feelings.
でも。
いざ旅に出てみると気分は高揚し、野望が心から浮かんでくる。感情は自分の中へと入りこんでいく。
「俺に不可能は無い」なんていう気分になってくる。ドーパミン、アドレナリンが全開になってくる。おそらくジョージ・マロリーが、あらゆる登山家が、目指す山を目の前にしたときに沸き起こる感情と同じ種類のもの。
Just a trip , nothing more.
旅とはTripという英単語。
気持ちが全開でよく分からなってしまう状態もトリップという。
もう旅に意味なんていらない、理由なんていらない。思いのままに突き進むのみ。エベレストを前にしたジョージ•マロリーも同じように感じていたのだろう。
僕らが旅に出る理由
この曲は、こんな風に、モラトリアムの時期に誰にでも訪れる瞬間、大人の階段を登り切る時に現れる場面を、とてもうまく描いている。
こういう詩作を得意としていた「くるり」というグループの特徴がよく出ているように感じる。
旅に出たいから旅に出るのだ。
ハイウェイは旅への入り口。いろいろ理由をつけて自分を焚きつける。
ハイウェイは希望への接続詞。軌道に乗ったら、スピードにのったら理屈はいらない。
自分の目の前には希望しか見えないのだから。
それが
僕らが旅に出る理由。
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