これから漫画編集者やWEBTOON編集者を目指す人におすすめしたい本5選
はじめに
皆さんこんにちは!
ナンバーナイン・コンテンツ事業部のマネージャーとしてWEBTOON・横読み漫画の編集をしています、遠藤です。
WEBTOON制作スタジオ「Studio No.9」の初リリース作品となる『神血の救世主〜0.00000001%を引き当て最強へ〜』をLINEマンガ・ebookjapanで配信させて頂いています。
今年はWEBTOON制作スタジオが数多く立ち上がり、韓国・中国からの輸入作品がメインだった国内WEBTOON市場でも国産の作品が続々リリースされはじめました。
それに伴い未経験OKのWEBTOON編集者の求人も数多く出ており、チャレンジしてみようと考えている求職者の方・学生さんも沢山いらっしゃるかと思います。
今回は自身の経験を基に、これから漫画編集者・WEBTOON編集者を志す方の考え方や実務の指針になるような本を5冊選ばせて頂きました。
漫画編集者を志していない方でも漫画やエンタメコンテンツの見方が変わるような本ばかりかと思いますので、読書の秋ということで秋の夜長に是非読んでみてください。
①まんがでわかる縦スクロールまんがの描き方
ComicWalkerにて『faceless』を連載していた浅野龍哉さんの著書で、WEBTOONの演出の仕方についてかなり具体的に書かれた実践的な本です。浅野龍哉さんは10年以上もWEBで漫画を発表する際の演出について研究されており、中国の巨大漫画プラットフォーム・ビリビリ漫画ではWEBTOONのネームの担当もされています。ご自身でWEBTOONを描いている・描こうと思っている方にはもちろん、これからWEBTOONのネームをチェックするような編集者にとっても発見や学びがある本です。
WEBでの漫画表現が黎明期〜現在の形に辿り着くまでの歴史的な部分も学べますし、紙媒体での横読み表現との比較が度々出てくるので、横で漫画を描く際の解像度も高まると思います。個人的には「少年漫画と少女漫画の違いがどうのように決まるのか」を演出的な観点から定義しているのが新しい発見でした。
こちらの本は全編漫画形式で構成されており、読書が苦手な方でも読みやすいかなと思います!
②キネ旬総研エンタメ叢書 「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方
続いては「脚本術」の本になります。作家さんは脚本術について学ばれている方も多いと思いますが、作家さんと作品の話をする上で、編集者もインプットすべき考え方です。
かく言う僕自身も、ナンバーナインで作品制作をして下さっている『現代無双~異世界で魔法を覚えて、現代で無双する~(作画)』『鋼鉄(ハガネ)の戦士、異世界にて伝説の英雄となる(原作)』の森脇かみんさん、『異世界行ったら、すでに妹が魔王として君臨していた話。』の根田啓史さんにおすすめして頂いてこの本を読みました。作家さんのおすすめの本を読むというのは作家さんとの共通言語を作る上でも大切だと感じています。
有名な脚本術の本ですと『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』などがありますが、今回紹介した本では具体例として出てくるタイトルが『千と千尋の神隠し』『THE LAST MESSAGE 海猿』『魔法少女まどか☆マギカ』など、皆さんが既に観たことがあるような邦画も多く、入りやすいです。
物語展開の黄金則として「13フェイズ」という考え方が登場しますが、ご自身の好きな映画をこれに当てはめて観てみると、作品の解像度が上がるのではないかと思います。
この本を読んで面白かったと思った方は、第二弾として出ている『キネ旬総研エンタメ叢書 「おもしろい」アニメと「つまらない」アニメの見分け方』も併せて読むと面白いかもしれません!
③クソコンテンツを爆売れさせた ハリウッド流マーケティング術
LINEマンガの超人気作品『鬼畜島』およびそのシリーズ作品をどのように大ヒットに導いたか?を、作者の外薗昌也さんではなく、プロデューサーである息子の外園史明さんの経験を基に書いています。
作家・編集者目線でのヒットの法則が語られることは度々ありますが、プロデューサー目線での著書というのは珍しく、また、WEBマーケティングを駆使してヒット作を産み出すという視点も新鮮でした。ナンバーナインで制作している作品もLINEマンガを筆頭にWEB媒体やアプリでの配信が基本となっているため、学ぶことが多かったです。
本著では編集者に求められるスキルとして
・プロデュース能力
・マネジメント能力
・サポート能力
の3つがあり、そのどれか一つでも秀でていれば優秀な編集者と定義されていました(各能力の詳細は実際の本を参照ください)。
著者の外園史明さんはプロデュース能力に長けており、この「プロデューサー視点」はナンバーナイン社内でも度々編集者に求められるスキルとして挙がります。もしナンバーナインのWEBTOON編集者を志す方がいらっしゃったら、是非一度読んで頂きたいと思います。
④USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?
数々の本を執筆しているマーケター・森岡毅さんの一作目の著書になります。この本で森岡毅さんのことを知った方も多いのではないでしょうか。直接漫画制作について語られている本ではありませんが、幅広くエンタメ業界を志す方に向け選ばせて頂きました。
何よりもこの本で学べるのは「逆境を乗り越える考え方」だと思っています。売上が低迷していた2010年頃のUSJを改革し、ハリー・ポッターエリアの導入による大成功までの道のりが詳細に語られています。
作中では予算や人員が足りない…という場面が度々登場し、アニメ『SHIROBAKO』でいうところの「万策尽きた」状態に何度も陥ります(漫画編集者・WEBTOON編集者を志す方には『SHIROBAKO』も是非観て頂きたいです)。
その度に知恵と工夫で危機を脱し、最終的には大成功を収めるのですが、この状況は黎明期で予算や人員がまだまだ足りていないWEBTOON業界にも通じるシチュエーションだなと感じます。ないモノをねだるより、どうやったらうまくいくかを考える方が、仕事ってきっと楽しいですよね!
森岡毅さんの本は何冊か読んでいますが、他の著書ですと『苦しかったときの話をしようか』などは就職活動に悩む自身のお子さんに向けた手紙形式の本になっており、漫画編集者に関わらず、これから就職活動をする学生さんや転職活動中の求職者の方のキャリアの指針になり得る内容になっているかと思うのでおすすめです。
⑤面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録
最後に紹介するのは『ソードアート・オンライン』や『とある魔術の禁書目録』など数々の超ヒットライトノベルを担当した編集者・三木一馬さんの著書です。
この本では三木一馬さんの編集論やヒット作制作の裏側が実際の打ち合わせ風景なども引用されながら紹介されています。正直、普通に生活していたら編集者が作家さんとどんな打ち合わせしているか見る機会ってほとんどないと思いますが、実際に交わされた言葉の数々を聞いていると(読んでいると)、まるで隣で打ち合わせを見学させて頂いているような気持ちになります!
担当作がライトノベルなので厳密には漫画ではありませんが、漫画制作にも通じる考え方が沢山出てきますし、三木一馬さんが現在独立して経営されている株式会社ストレートエッジではWEBTOON作品の原作開発も手がけているので、WEBTOON編集者を志す方であれば一度読んでみて損はないでしょう。
活躍している編集者の方は皆さんそれぞれ独自の考え方やノウハウを持っており、この本で紹介されている手法も絶対の正解とは言い切れません。しかし、何をはじめるにもまずは「型」を身につけそこからオリジナリティを追求していくものだと思います。編集者のノウハウは公開されているものがそこまで多いわけではないので、一つの「型」として参考にしてみてはいかがでしょうか?
編集者を志していない方でも、三木一馬さん担当作のファンの方であれば制作裏話的にも楽しめる内容になっているかと思います。
最後に
以上、5冊紹介させて頂きましたがいかがでしたでしょうか?
ナンバーナインでも新卒・中途でWEBTOON編集者の採用を積極的に行っていますが、自身の経験を振り返っても実践以外で漫画編集の能力を鍛える方法は限られてくると思います。未経験でもこれから漫画編集者・WEBTOON編集者を志す方の情報収集の手助けになればと思い、この記事を執筆させて頂きました。
他にもインプットした方が良いことは山ほどあると思いますが、今回は内容を散らしつつ、かつ読みやすい本を厳選したつもりです。もしこの記事を読んで下さった漫画編集者さん、WEBTOON編集者さんの中で「この本もおすすめだよ!」という本があれば是非聞かせてください!
僕自身、今後も引き続き漫画・WEBTOON編集者の視点で色々な発信をしていきたいと思います。
※僕のTwitterでは担当作の紹介や業界ニュースのシェアなどしておりますので、WEBTOON業界、WEBTOON編集に興味がある方はフォローして頂けたらうれしいです!
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