【炎上ネタ】経血の色と体調についての解説と参考文献について

今年の2月にある薬剤師さんのXでのポストが炎上しました。
その内容は経血の色と体調の診断についてです。これに対してある医師を名乗るアカウントが猛烈攻撃。薬剤師さんのアカウントは耐えきれずに削除されてしまいました。私もある漢方薬剤師の先生に中医学を習いました。その際に経血の色と体調について中医学的には関係あると説明を受けました。今回は炎上ネタになりますが、経血の色と体調について関係があるのかということと、エビデンスと参考文献について解説していきます。

論文にはないけれど文献にはあるものについては科学的には立証されないのでしょうか?

猛烈攻撃していた医師曰く、論文を探したけれど一件もなかった。との発言をされていました。まずはこちらについて考えます。論文に記載されていないけれど文献に存在する情報については、科学的な立証の基準には達していない場合があります。科学的立証とは、通常、厳密な研究や実験の結果が、査読付きの科学論文として公表され、再現性が確認されることを指します。文献に記載されている情報が科学的に正しいかどうかを判断するには、信頼できるデータやエビデンスが必要です。

一方で、文献に記載されているからといって必ずしも科学的根拠がないわけではありません。その情報が仮説として有用だったり、研究が進むきっかけになることもあります。しかし、科学的な立証を求めるには、厳密な実験とデータの検証が不可欠です。文献にある情報は、さらなる研究や科学的検証が行われるまで、補足的な知識として扱われるのが一般的です。中医学というのは科学的立証に時間がかかる学問です。そのため、科学の方が中医学に追いついていないというのが私の考えです。体調が良くなればそれでいいじゃないですか。体調が良くなる=患者さんにとってのエビデンスです。

というのを踏まえた上で、経血の色と中医学的判断についてまとめていきます。

経血の色と中医学的判断

経血の色は、女性の体質や健康状態を知るための重要な指標の一つです。中医学では、経血の色や性質を観察することで、体内の「気(エネルギー)」や「血(栄養・循環)」、「陰陽バランス」などの状態を診断します。ここでは、経血の色と体質の関係について詳しく説明します。

1. 鮮やかな赤色

  • 特徴: 経血が鮮やかで明るい赤色をしている。

  • 体質: 血熱(けつねつ)

    • 血が熱を持ち、体内にこもっている状態です。これは「血熱」によって引き起こされるもので、通常は熱のエネルギーが多すぎることを示します。この状態は、過度のストレス、辛い食べ物の摂取、ホルモンの乱れなどが原因になることがあります。

  • 関連症状:

    • 顔が赤くほてる

    • イライラしやすい

    • のぼせやすい

    • 皮膚の乾燥やかゆみ、発疹が出ることもある

  • 参考文献: 『中医婦科学』、『本草綱目』

2. 暗赤色(濃い赤色 どす黒い色)

  • 特徴: 経血が暗い赤色で、粘り気があることが多い。

  • 体質: 瘀血(おけつ)血寒(けっかん)

    • 血寒: 体内に冷えが存在し、血液の循環が悪くなっている状態。冷えが血液の流れを妨げ、経血がどす黒くなる原因となります。

    • 瘀血: 血液が滞り、スムーズに循環しない状態。血の滞りが起きると、経血が暗くなり、どす黒い色を呈することがあります。これは血行不良のため、酸素が十分に供給されず、血液が暗く変色するためです。

  • 関連症状:

    • 月経痛が強い

    • 経血に血の塊が混じる

    • 肩こりや腰痛がひどい

    • 肌がくすんで見える

  • 参考文献: 『中医学弁証論治学』、『黄帝内経』

3. 淡いピンク色または薄い赤色

  • 特徴: 経血が薄くてピンクがかった色をしている。

  • 体質: 血虚(けっきょ)脾虚(ひきょ)

    • 血虚:血が不足している状態で、体全体に十分な栄養が行き渡らないことを示します。栄養が不足しがちで、体が冷えやすくなることが多いです。

    • 脾虚: 脾(消化器系)が弱く、体内の気や血を十分に作れない状態。脾の機能が低下すると、気が不足し、出血が長引いたり経血が薄くなることがあります。

  • 関連症状:

    • 疲れやすい 倦怠感

    • 顔色が悪い

    • 生理が終わっても出血がだらだらと続く(固摂作⽤の低下)

    • 髪が乾燥し、パサつく

    • 爪がもろくなりやすい

    • 立ちくらみやめまいが起こる

  • 参考文献: 『婦人科病中医診治学』、『傷寒雑病論』

4. 赤紫色

  • 特徴: 経血が黒っぽかったり、茶色の色味を帯びていることがある。

  • 体質: 気滞血瘀(きたいけつお)

    • 気滞: 気の流れがスムーズでない状態。ストレスや精神的な緊張によって気が滞り、血液循環が悪化します。

    • 血瘀: 気の流れの停滞が血液にも影響を与え、血液が凝り固まった状態。これにより、経血が赤紫色になることがあります。

  • 関連症状:

    • イライラや不安感

    • 胸やお腹の張り

    • 生理前に気分が不安定

    • 月経中に塊が出る

  • 参考文献: 『イスクラ薬局 月経から判断できる体質チェック』
    ※イスクラ薬局からも出ています。日本で一番有名な中医学の会社です。

参考文献

  1. 『黄帝内経』: 中医学の基本となる古典書で、人体の気血の循環と陰陽の理論が詳述されています。

  2. 『本草綱目』: 李時珍によって書かれた薬学書で、さまざまな生薬の効能や人体への影響が記載されています。

  3. 『傷寒雑病論』: 張仲景による古典で、病気の診断と治療に関する情報がまとめられています。

  4. 『中医婦科学』: 中医学における婦人科の理論を網羅したテキストで、月経に関連する診断方

各種参考文献について

1. 『黄帝内経(こうていだいけい)』

  • 著者: 黄帝とされる伝説的な医師との対話形式で書かれた、古代中国の医学の古典。

  • 概要: 中医学の基本理論をまとめた書で、人体の気・血・陰陽バランス、経絡、五行などについて解説しています。

2. 『本草綱目(ほんぞうこうもく)』

  • 著者: 李時珍(り じちん)

  • 概要: 明代の医師李時珍が著した薬物学の古典。多種多様な生薬とその効能、人体への影響について詳細に述べています。

3. 『傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)』

  • 著者: 張仲景(ちょう ちゅうけい)

  • 概要: 東漢時代の名医張仲景によって執筆された医学書。病気の診断、弁証、治療について詳しく記載されており、特に婦人科疾患の治療も含まれます。

4. 『中医婦科学(ちゅういふじんかがく)』

  • 著者: 中国中医科学院や各種専門家が編纂

  • 概要: 中医学における女性特有の疾患に関する理論と治療法を詳述。月経、妊娠、出産、更年期など婦人科の領域を網羅しています。

5. 『東洋医学臨床論集(とうよういがくりんしょうろんしゅう)』

  • 著者: 複数の中医学専門家による共著

  • 概要: 臨床での中医学の応用を解説し、実際の治療においてどのように診断し、治療するかについてケーススタディを含めて説明しています。

これらの文献は、中医学の診断や治療に関する理論を学ぶ際に非常に重要です。特に経血の色や体質の判断は、これらの古典を基に体系化されています。

まとめ

経血の色は、中医学では重要な診断要素の一つであり、全身の健康状態を反映しています。色が異常な場合は、ほかの症状と併せて総合的に体質を見極めることが重要です。
※世間でいうと炎上しますが、中医学を学ぶ上では重要です。


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