【詩作品】「手」〜第50回埼玉文学賞詩部門準賞受賞作品〜
成田空港到着ロビー
あなたは驚いたかもしれない
こんなに多くの出迎えがあるとは
遠くは金沢からも駆けつけた人がいる
ずっと待っていたんだよ
異国の地で留め置かれたあなたを
たくさんの想いが
今、ゲートに現われたあなたを包む
なだらかな輪になって
幾つもの手があなたに触れる
やさしく撫でる手
おおきな掌を置く手
それぞれが
懐かしい思い出を手繰る
あなたと結ばれた
見えないリボンが揺蕩う
お帰りなさい
こんなに慕われていたんだね
やっと会えたと
皆、温かい手を差しのべてくれる
「叔父さん、辞書みたいに小さくなっちゃって…。」
白い布に覆われ四角になったあなたを
ぽんぽんと軽くたたいた甥っ子は
片手でぎゅっとあなたを抱きしめ
顔をそむけて目頭を押さえた
※米国で荼毘に付された義弟に捧ぐ
*3年前に勤務先の米国で急死した義弟への追悼詩です。先日ふと、秋の空を見上げた時に、天国にいる一才違いの義弟を思い出しました。
彼を偲んで書いたこの詩が、偶々2年前の第50回埼玉文学賞準賞(正賞は該当者無し)となりましたが、供養となったのなら幸いです。
これからは少しずつ、義弟の追悼詩をUPしていきたいと思います。
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