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彦十蒔絵 20周年記念図録
ついに漆芸職人集団「彦十蒔絵(ひこじゅうまきえ)」さんの図録が完成しました。
石川県輪島市で若宮隆志が主宰する漆芸職人集団「彦十蒔絵」。
日本人の生活と結びつき、実用や民族的な道具として使用され生き続けてきた漆器。
現代の感覚やユーモアを取り入れ、手に取ると自然と笑顔になる唯一無二の作品群。
2023年に20周年を迎え、先人が残した大切な想いや、あそび心に溢れたものづくりをこれからも未来へ繋いでゆく。
〈蛇腹折仕様/限定200部〉
ー帯よりー
はじめに「彦十蒔絵」さんのご紹介を少し。
活動拠点は石川県能登半島の輪島市。伝統的でありながら超絶技巧を駆使して、誰も見たことのない世界でただ1つの漆芸作品を世界に発信し続けている漆の職人集団が「彦十蒔絵」さん。集合体の名前が彦十蒔絵。そして、生み出された作品のブランド名でもあります。
実際、漆の作品制作には100以上の工程があり、彦十蒔絵ではそれぞれの工程を、木地師(きじし)、塗師(ぬし)、蒔絵師などの専門の職人たちが分業で全ての作品をゼロから手がけています。そんな類を見ない型破りな挑戦を続けている集団を生み出されたのが棟梁、代表である若宮隆志さんです。
若宮さん自身も漆職人さんですが、彦十内では若宮さんが作りたいものをイメージされ、それを職人さんたちに様々な方法で伝え共有し、作品に仕上げていく、言わば映画監督兼プロデューサーのような役割になります。
彦十蒔絵作品との出会いは、泉鏡花記念館で見た鏡花本『絵本 化鳥』の中川学さんのイラストを器へ蒔絵により完璧なまでに再現された作品。それを見た時も驚いたのですが、その後、大阪・高島屋の展覧会でお会いでき、様々な作品を拝見した時の衝撃たるや、ホンマ凄かった…。
というのも、まず一般的なお椀や器などの漆器は持っていたりもして漆器自体は身近な存在ですが、「超絶技巧×遊び心」の漆芸作品というものを見たこともなく存在も知らなかった。若宮さん曰く「見立て漆器は遊び心、洒落です。」と。見立てる=本物のように似せる、という意味合いが近いかなあ。鉄や青銅、陶器作品だと一度思った脳が、勧められて手に持った時の軽さや違いのギャップに一瞬えっ!?とバグる。例えばカブトムシやクワガタの作品などは背中がパカッと開き、その中に蒔絵の世界が拡がっていた。まず開くと思わへんしなあ。本体も木彫で凄く軽い。
そしてシンプルに楽しい!子どものように触りたくなる衝動!ほしいっ!!僕持ってるねんって自慢したい!!日本だけにとどまらず世界中に彦十蒔絵さんのファンがいるのも凄く納得です。
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蓋物(写真 彦十蒔絵サイトから)
僕自身、元々エッシャーや福田繁雄さんが大好きなので、騙し絵、ユーモアという世界観+変態さ加減がドンピシャにハマり、共感できることばかりで改めてファン、虜になる訳で。(ちなみにクワガタは個人的な好みで図録内に挿絵風に入れました(^_^))
とにかく、百聞は一見に如かず、なんで、ここからは図録の事を。
タイトルは、
「彦十蒔絵 20周年記念図録」
厳選された20作品+説明文(日・中・英表記)を掲載。サイズは天地290×左右128mm(本文)。手にとって読みやすいサイズ感です。
また、先にお伝えする事がありまして。
この図録は、来月2月9日(木)~19日(日)に東京・銀座セイコーハウス銀座ホール(旧和光ホール)で開催される『彦十蒔絵 若宮隆志展―変態する漆器―』にて初お披露目&販売されます。そのために今回の図録を制作させていただきました。
《展覧会主旨》蝶々は完全変態することで進化と共に繁殖してきた。漆も時代のニーズに合わせて精神性、実用性に於いて対応してきた。これからの漆器を考えた時に漆はどう『変態』しなければいけないのか(若宮隆志)
”変態する漆器”。製本仕様はここからイメージし、様々な形に変態できる蛇腹折を選びました。(変態する写真は下部に掲載)
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外側にはトレーシング紙の帯を付け、熨斗のように裏側でシール留めにし、上品で美しい佇まいにしています。
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(撮影:七浦謙斗/2022年9月)
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龍の手には彦十蒔絵の「彦」の漢字が見える
表紙の龍の手には漢字の「彦」。これは若宮さんが辰年生まれであり、「彦」は若宮さんのご実家の号でもあります。手に持たせる事で彦十蒔絵のシンボルロゴにもなっています。またこの龍の元絵は葛飾北斎。愛嬌のある表情がいいですね。ロゴ誕生秘話についてはこちらの彦十蒔絵公式BLOG内をご覧ください。
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紙は落ち着いた白色で階調表現に富み写真映えするMTA+を使用
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全長は真っ直ぐにすると3.8m。ここまで長い蛇腹本を作ったのは初めて。紙のとりや印刷、加工上の都合もあり、6折ずつの紙を5面繋いでいます。
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泉鏡花の戯曲「夜叉ヶ池」をテーマに制作 龍(白雪姫)の木地は桐材、梵鐘は山桜
キャラクターイラストは中川学さん
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木彫に変塗技法(青銅塗)
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若宮さんをはじめ23人の職人を紹介
彦十蒔絵さんの輪島の工房へ訪れた際改めて感じたのは、漆を育てるのと同じく、共同制作する上でも人を育てる事の大切さとその難しさ。掲載されている職人さんたちはじめ、関係者の方々など、ものづくりの上でできる限りこの方たちをご紹介しないと、と。
また今回マネージャーの高(WAWA)さんには制作上の上でも、輪島に訪れた際にも大変お世話になりました。いつも明るく真っ直ぐな姿勢で、時に若宮さんの意見を聞き、素直な意見を伝えながら職人さんを取りまとめたり、日本だけでなく海外との取材や連携を進めたりと。
完成した良い作品を丁寧に伝える、というのはとても難しく誰でもできることではないです。仕事だから、ではなく熱い想いを持ち続け、パワーバランスを保つ事。彦十さんの中でも高さんの立ち位置、存在意義は大変大きいものだと実感しました。ホントありがとうございました(^_^)
高さんの想いも「職人精神」として記載されています。
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左:いちご 乾漆 右:リラックスシャー・ペイ
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綺麗なお姉さんが扇子を持っているかのように配置
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僕がデザインした泉鏡花生誕150年記念ロゴマークも記載。
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2023年の今年から来年3月まで、様々な形で鏡花のイベントがありますので乞うご期待。(こちらはまた別でご紹介します。)
印刷は大阪のアサヒ精版印刷さん。絵草子「龍潭譚」や「東京銭湯」など、いつもお世話になっております。今回も丁寧で素晴らしい制作をしていただき感謝しています(^^)
またこの図録の遊びのひとつ、奥付に記載しているQRコードと右側にある曼荼羅コードを読み取ると特別な映像が見れる特典があります。これはご購入いただいた方のみが楽しめる特典&遊びなので、ここまでっ。見たい方はぜひご購入ください(^_^)
ここからは蛇腹本としての佇まいや本の見立て、面白さを。
要するに普通の本じゃないんです。本を読む、見る、飾る、立てる、置く、しまう(仕舞う)、閉じる(綴る)、伸ばす、曲げる、吊る、重ねる…
彦十さん作品同様、変態し、展覧会でもいろんな形で飾れ楽しんでいただけるものを、と。
こんなんどうでしょうか?
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いかがだったでしょうか?
カタチにとらわれずそれぞれの楽しみ方でどうぞ(^_^)
また今回、本の制作以外にもイラストレーター中川学さん率いる映像クリエイター集団で泉鏡花「夜叉ヶ池」を題材とした映像作品を制作しています。僕は題字とエンドロールのデザインを担当。監督は「絵本化鳥」「朱日記」「榲桲(まるめろ)に目鼻のつく話」のアニメーションを制作した青木香さん。
こちらも本邦初公開になりますので、乞うご期待!!
まずは2月9日からの展覧会にぜひお越しいただき、彦十蒔絵の世界をゆっくりご堪能ください。
11日(土)14時から若宮さんとイラストレーター中川学さんと僕、泉屋でのギャラリートークがあります。こちらもぜひお越しください。
《18(土)もAR映像と漆芸のコラボについてのトークがありますので、こちらもぜひどうぞ》
●2023年2月11日(土) 14:00~
テーマ:泉鏡花の本歌取り
中川 学(イラストレーター/僧侶)
泉屋宏樹(iD./図録装幀・デザイン)
若宮隆志(彦十蒔絵)
●2023年2月18日(土)14:00~
テーマ:AR映像と漆芸のコラボ
安藤英由樹(大阪芸術大学アートサイエンス学科 教授)
早石直広(株式会社計数技研 代表取締役)
若宮隆志(彦十蒔絵)
■会場:同ギャラリー内
■事前予約制:1月26日(木)10:30〜 銀座 和光までお問合せください。
代表番号:03-3562-2111
彦十蒔絵 若宮隆志展 ―変態する漆器―
2月9日(木)〜 19日(日)10:30~19:00(最終日は17:00 まで)
会場:セイコーハウス銀座ホール
東京都中央区銀座4丁目5-11 セイコーハウス銀座 6階
入場料: 無料 休業日: 無休
お問い合わせ先:(03)3562-2111(代表)