妄想人間シアター最終話 「妄想人間シアター 戸川スミレ」
「この物語は、主人公の演劇青年Mが、ある歴史の古い精神病院の閉鎖病棟を訪れることから始まるの。彼は、患者たちに演劇の指導をするつもりでこの場所にやってくるわ」
戸川スミレは、瞬きひとつせず、じっと私の目を見据えながら、話を始めた。
「だけど、患者たちは演劇の基本のあれこれは無視して、それぞれが脚本を書いてきたから、演劇の経験者であるMに目を通してくれって言って聞かないの」
私は思わず眉をひそめた。
「Mは、しぶしぶながらもその提案を受け入れる。彼らの書いた脚本をひとつひと