廣瀬とら

作家(になりたい獣)です。 こちらでは日々書き溜めた散文を流します。映画、創作について、など。

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最近の記事

『Oppenheimer』が公開できない国

 クリストファー・ノーラン監督による『Oppenheimer』*1 が米国で公開されたのは2023年7月21日。2カ月以上経った現在でも日本公開の目途は立っていない。少なくとも年内の公開は絶望的である。  いち映画ファンとして本作品を観たいと思うのは自然なことだろう。だから、これを書く私のモチベーションは怒りと嘆きによるものであるが、それらの感情を一旦排して、『Oppenheimer』が日本で公開されないことの意味について考えてみたい。 今なお難しいテーマ  『Oppen

    • 『ジョン・ウィック:コンセクエンス』ひとつのフィクションに押し上げられたリアリティ

       卓越したアクションシーンが魅力の『ジョン・ウィック』シリーズであるが、最新作の『コンセクエンス(Chapter 4)』では防弾仕様のスーツを主人公ジョン・ウィック以外のその他大勢にも装備させる大胆な采配によって、アクションのリアリティをこれまで以上に押し上げることに成功した。ここでは、備忘録としてスーツの果たした役割について書き留めていく。  (なお、スーツの機能以外の内容には踏み込まない) 道具以上の存在となったスーツ  現実にも特殊な裏地を仕込んだ防弾仕様のスーツ(

      • 「第2回創作ブートキャンプ」に参加してみて

         登壇された先生方の飾り気ない、直截的な意見交換を間近で拝聴することができ、とても勉強になるイベントだった。創作の指南書にあたれば、本日の講演に似た内容の教示や助言を見つけることは容易いかもしれないが、クリエイターの生の声を、会話の前後のコンテクストを含めて聴けることは、まるで異なった重みを持ってくる。指南書はそれ自体が創作物出版物であり、売り物としての指向性を持つ。しかし会話は(もちろん各先生方の思惑や腹の内があるとはいえ)、その場にいることで自ら発言者の意図を判断すること

        • 映画『バービー』を観て

           正直に言えば、ライアン・ゴズリングを目当てで観に行った。  ブレードランナーのKがバービーのケン(Ken)というだけで、もう面白い。ずるいではないか。  ライアン・ゴズリングはよく名前が間違われる、ライアン・レイノルズが頻繁に演じる軽薄でひょうきんで間の抜けた役から、Kのような役まで、実に幅のある演技をみせる。私が特に好きなのは『ナイスガイズ!』で、ラッセル・クロウにボコボコにされながら振り回される様子は実に痛快で、見応えがある。  ライアン・ゴズリングに惹かれてトレーラー

          映画『君たちはどう生きるか』

           事前情報が一枚絵以外に提供されなかったので身構えていたが、予想に反して、とても良い映画だった。私にとってジブリ映画とは『千と千尋の神隠し』であり、幼少期にカオナシがトラウマになって以降、顔を背けることができない映画館で観ることは意図的に避けてきた。今回敢えて観に行ったのは、公開から一週間経って話題になっていたからというだけではなく、後に触れるように、挑発的な広報スタンスが気になったからであった。  いったいどんな教訓を、天下の大御所が訳知り顔で突き付けてくるのかと思ってい

          映画『君たちはどう生きるか』

          嵐の中

           心に病を抱えたことがなく、周囲に心を病んだ人間がいない人は幸運である。(こういった表現は適切ではない)  心に病を抱えており、あるいは抱えたことがあり、また周囲に心を病んだ人間がいる人は不幸である。(こういった表現も適切ではない)  幸か不幸かは別として、心の病が発露している状況を見たことがない人は少ないと思われる。見たことがないと言う人は、自身について心配した方が良さそうだ。それはともかくとして、心の病が発露している時に見られる現象にはどのようなものがあるだろうか。  

          頭の中のがらくた

          書けるようになりたければ、とにかく書け。 描けるようになりたければ、とにかく描け。 古今東西老若男女プロアマ問わず、クリエイターになりたければ、とにかく手を動かせ!  何を読んでも誰に聞いてもこうである。そして、これは玉石混淆数多ある創作ノウハウの中で唯一にして頂点の真実だと言っても過言ではない。  私も頭では理解しているし、最近お絵描きを始めて、改めて意味を理解したところでもある。  そして書ける描ける人たちが口を揃えて言うのは「書けば描けばいいじゃん」、これである。い

          頭の中のがらくた