寒がり猫舌60℃
ほおづえついた夜が冷ました
ひとりぼっちの マグにはコーヒー
べつに苦くはなかったけれど
砂糖は底に沈んでいった
ミルクをこぼして入れるのやめた
いつもよりも熱いコーヒー
まだるっこしい猫舌と
うらはらにまわる60分は
考えごとも半分残した
寒がり猫のしっぽがゆらす
カーテンと窓のすきま時間
夜のまぶしさごまかすために
起きてなくたっていいんだよ
静かに眠ろう 静かな夜だ
難しいことは あした起きてから考えよう
こぼしたミルクは戻らないけど
冷蔵庫のなか 本当はまだちょっとある
眠れないなら はちみつひとさじ
ゆっくりまわる マグにはミルク
溶け残った底のほう
ひときわ甘くてほっとした
とろとろ毛布はカフェオレの色
いつもみたいにくるまって
まどろむ猫舌60℃
難しいことと やさしいことは
半分くらいがちょうどいい
暗がりのなか 本当はまだちょっとだけ
全部ごちゃごちゃまぶしいけれど
おやすみって言えたから
そっとこの目をつむれるよ
静かに眠ろう にぎやかな朝がやってくる
難しいことは あした起きてから考えよう
新しいミルクを買いにいこう
──「寒がり猫舌60℃」 終
▼ 同じ詩集に収録している作品です(※続きものではありません)
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