仕事に育児に…疲れきった私を変えた「偶然の早起き」と「やりたいことをやる習慣」
「ママ、おしっこ。」
娘の声に起こされて、半分眠ったままの頭でトイレに連れていく。
用を足してすっきりしたのか、娘は布団に戻ると間もなく、満足そうにスースーと寝息をたてはじめた。
…かわいい。
時計を見ると、まだ5時半。
せっかくの休みだし、もう少し寝ていたいと布団に潜り込んでみたけれど、中途半端に目が覚めてしまって眠れそうにない。
二度寝することを断念して、冷えきったリビングに向かうと吐く息が白かった。かじかんだ手で石油ストーブのスイッチを押す。
ピッ
外はまだ暗かった。
ふと、本棚に積んであった本が目に入る。
これ、いつ買ったんだっけ?
もはや思い出せない。
あんなに本を読むことが大好きだったのに、ここしばらくは、ゆったりと読書をする時間的な余裕も、気力もまったくなかった。
家族が起きてくる気配はない。
気づくと私は、存在すら忘れかけていた本に手を伸ばし、ページをめくり始めていた。
この偶然の早起きが少しずつ、でも確実に私を変えていくことなど、この時はまだ、想像もしていなかった。
幸せなはずなのに…
なぜこんなにも「しんどい」のかな?
ワーキングマザーとして奮闘する私は、かなり頻繁にこう思っていた。
子どもを授かった時には、涙が出るほど嬉しかったし、子育てしながら仕事をすることも自分の意志で決めたことだった。
それなのに…
寝起きの悪い子ども達を起こして、時間と戦いながら朝の支度をする。
本当はもっと穏やかに過ごしたいのに、時計の針が気になって、どうにもイライラしてしまう。
支度を急かされて機嫌が悪くなった子ども達を、なかば押し付けるように保育園に預け、職場へと急ぐ。
残業ができない分、昼休みを削って集中的に仕事をこなそうとするものの、急に明日までに提出しなければならない書類が発生して、パニックになることもしばしば。
どうにか形をつけ、保育園にお迎えにいって家に帰れば、子ども達のお世話に、家事が待っている…。
こんな毎日が繰り返されていくうちに、「自分の人生を生きている」という実感が段々と薄れていくような、そんな嫌な感覚に襲われることが増えていった。
これは、ちょっとまずいかもしれない…。
人知れず焦って、家事を効率化する方法をあれこれ試してみたり、職場の先輩に業務の進め方を相談したり、やれることは全てやってみた。けれど、なかなかうまくいかない。
「理解のある職場で、かわいい子ども達に囲まれて、私は充分に幸せだ」
と言い聞かせてみても、心は晴れなかった。
きっと、もっと根本的な「何か」を変えなければいけないのだろう。
でも、その「何か」が分からない。
当時の私はまるで、明けない夜を過ごしているような状態だったのだ。
「おはよー。」
え?
子ども達の声で、本から顔をあげると一時間半もの時間が経っていた。
周りも知らないうちに明るくなっている。
何かに没頭して、周りが明るくなったことにも気づかないなんて、初めての経験だった。
そして不思議なことに、この日はとても満たされた気持ちで過ごすことができた。
偶然の早起き以外は、特に変わったことはなかったというのに。
もしかしたら、私に必要なのは、
「自分が心から『やりたい』と思っていることを、やること」
ではないか?
私はこの日を境に、毎日早起きすることを決めた。
もともと、朝早く起きるのは得意じゃない、むしろギリギリまで寝ていたいタイプだ。
でも、あの日の充実感を毎日少しずつでも味わえたら、私の人生は好転する気がする。
そんな予感に心が躍った。
生活パターンを大きく変えて睡眠不足になっては本末転倒なので、まずは30分、いつもより早く起きて、大好きな読書をする時間を確保することにした。
それからというもの、忙しい毎日が大きく変わったわけでもないのに、一日の充実感がまるで違う。
イライラして子ども達に当たってしまうことも激減した。
早起きして読書をすることが習慣になってくると、どんどんと「やりたいこと」が浮かんでくるようにもなった。
日記を書くことをはじめ、読んだ本の感想を書くこと、朝の散歩、山登り、ヨガ、ジャズダンス…
今まで忙しい生活の中に埋もれ、抑え込んでいた、たくさんの「やりたいこと」が堰を切ったように溢れてきた。
そうだ。もともと私はやりたいことが多い人間だった。
けっしてアクティブに動き回るわけではないけれど、読みたい本、見てみたい映画、行ってみたいお店は、常にたくさんあった。
子育てしながら働く身だと、やりたいことが全てできるわけではない。
それでも、日常の中に、自分が心から「やりたいこと」をほんの少しでも取り入れてみると、生活の満足度は確実に上がった。
半日だけ両親に子どもを預ければ、できることの幅もうんと広がることにも気付いた。
そして、「やりたいこと」を素直に実践していくと、今まで思いつかなかった新たな「やりたいこと」も出てくる。
私の場合、それは note だった。
以前は、自分の考えを言葉にして発信することに漠然とした恐怖心があり、通販サイトのレビューを書くことすらためらっていた。
そんな情けない私が、まさかこうしてnoteを書いているなんて。
早起きして作りだした時間で「やりたいことをやる習慣」は、私の考え方や行動を大きく変えていった。
今までだったら「時間がない」「 自分なんかには無理」と言って チャレンジする前からあきらめてしまっていたことでも、一歩踏み出せば 全く違う世界が見えてくる。
暗くて寒いリビングで一人、本を読んでいたあの日。
日の出とともに周囲が明るくなっていったように、「明けない夜」から抜けだせたきっかけは、まさにあの朝だった。