「美しき愚かものたちのタブロー」に突き動かされて、初一人旅の行き先が決まった。
ああ、今すぐにでもパリに飛んでいきたい、、、!
本を閉じた後に、天を仰いだ。
明日は月曜、朝から会議だ。早く寝ないといけないのに、本に登場した4人の男たちのドラマが頭の中をぐるぐると駆け巡り、しばらく眠れそうにない。
とりあえずカレンダーを見て、適当な休暇候補日でパリへの航空券を検索する。うーん、やっぱ日程が近いと高いな。そもそも貴重な有休を海外一人旅に使うとすれば、、夫の渋い顔が浮かぶ。
よし、頭を冷やそう。
『美しき愚かものたちのタブロー』に取り憑かれた私
約3年ほど前だろうか。
本屋さんで平積みになっている、原田マハさんの『美しき愚かものたちのタブロー』を発見。
画家の中でも大好きなモネとルノワール、そして原田マハさんとくれば買うしかない。青空にキャンバスという表紙にも惹かれ、迷わず購入。
これまでも原田マハさんの作品は何冊も読んできた。
文字だけの表現なのにはっきりと情景が浮かび上がる。まるで登場人物たちの日常を覗き見しているかのような錯覚を覚えるから不思議だ。
本作も同様に素晴らしかったのだが、なぜこんなにも心動かされたのか。
おそらく、松方幸次郎のビジョンそのものに惹かれたことと、大好きなパリを思う存分味わえたからだろう。
松方は実業家でありながら、西洋に負けない美術館を日本に作りたいと強く願っていた。
日本の青少年たちは、傑作の絵画たちを白黒の雑誌でしか見られない。もちろん戦前、パリで実物を拝む金銭的な余裕はない。一流の美術品を持ち帰り、彼らの目を鍛え、教育に役立てたい。
そんな松方の志に胸打たれ、多くの男たちが動き出す。彼の生前、その野望が叶うことはなかったが、戦後、国立西洋美術館の開館という形で、夢が実現する。
1年の時を経て旅立った
彼ら登場人物のドラマにも心打たれるのだが、ドラマに大輪の花を添えているのが、きらびやかな華のパリの情景である。
シャンゼリゼ大通りを凱旋門方面へ向かう、きらきらした車のライトたち。木漏れ日が優しく降り注ぐテラス席にて、談笑する人たち。太陽の光をいっぱい浴びてきらめくセーヌ川の水面。
まるで当時のパリにタイムスリップしたかのような、リアルな情景が浮かんでくる。
感情移入のあまり、本を読んでる間中、私の心はパリを旅していた。
そして読み終わった瞬間、思った。
「私もパリに行かないと。
心がうずうずしておさまらない、こんなこと滅多にない。
この強い衝動のままに、このきらきらとしたパリに行かないと。」
2020年2月、約1年の時を経て、私は一人、パリに飛び立った。本をカバンに忍ばせて。
不定期になりますが、「美しき愚かものたちのタブロー」に心動かされてパリに飛び出した、一人旅日記についても書いていきたいと思います。
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