世界を孤独が埋めていくような夜 ひとりは怖くはなかった、そう思ってた 空っぽな言葉は無意味に漂いながら 木々を抜ける風のように ささやく 闇の中 わずかに金木犀の香りをまとう 無くしてしまったひかりは夢の中 温かい優しさに包まれたい夜 行き着くとこない 螺旋な階段を上がる 靴音だけが虚しく響き重なりあう 忘れてしまう事が怖くて信じ続けた うたかたの中 たしかに聞こえた 願えば願うほど 遠くはかないひかり
雨音 ガラス窓に打ち付ける 雨音で目が覚める 全ての音を消し去っていく 灰色の空 わずかな光を映しだす くもりガラスに映る君の横顔 雨粒が涙の後を たどっていく そっと肩へと伸ばした手 忘れそうな 悲しみにふれる 遠い約束は色褪せないまま 無くした時間の中にある 水面を渡る風 波紋がそれと教えてれる 幾重にも幾重にも 生まれて消える 水を渡り 君の髪を撫でる 青い静寂は 悲しく消える いつかの想い出に耳をすます 君の言葉を捕まえようと 空にむかって伸ばした手 ただ冷た
でも聞けば聞くほど、彼女の話に疑問がわいてくる。 (どうして?今日が命日ってわかったんだろう?) (5年もの間、なぜ彼の死を知らなかったのか?) (どうやって彼の死を今になって知ったのか?) この質問をする勇気が僕にはなかった。 それにそろそろ始発電車の時間だ。 「でも、待つのは今夜で最後、今から私の止まっていた時計の針を動かすことにしたの」 彼女になんて言葉をかけたら良いか、見当もつかないまま、時間が過ぎていった。僕は彼女の潤んだ横顔を見つめている事しかできずにいた。 彼女
ここって?あの河原」 河原の風景などこにでもあるようなものだけど、あそこにはひとつ印象的なものがあった。それが描かれている。川を横断するような堰がありそれが小さな滝のような水の流れを作っている。それと川の中央付近にはどこから流れてきたのかかなりおおきな岩が居座っている。夏には子供たちの格好の遊び場になっている。 そんな風景がその切れ端には描かれていた。 でもサッカーグランドやベンチなどは描かれてなかった。これはいつ頃のここの風景なのか?僕はその切れ端を見ながらなんだか懐かしい
時間は17時を少し回った頃、2人を乗せたタクシーは夕暮れの街に飲み込まれていく。 東京タワーを横目に千鳥ヶ淵から水道橋、東京ドームが明るく浮かんでいた。多分池袋までは少し渋滞もしているからまだ20分はかかりそうな感じかな?とぼんやりと流れて行く街を見ていると。それまで無言だった彼女が突然は話はじめた。 「ねぇ 君の名前は?」 そうなんだよねぇ さっきまで恋人みたい腕を組んで歩いていた2人は名前も何も知らない同士であることに今更気づいた。 「じゃ自己紹介しますね」というと 「名
「ホントはね、ここ毎晩来ていたのよ」 「毎晩ですか?」 「そう、飽きもしないで毎晩このお店に、5年間、、、でもそれも今夜で最後にしたの」 彼女が全て過去形ではなすことに少し違和感を感じたが、それはもう変えるつもりのない彼女の意思を示してるようにも感じた。 「そうなんでか?残念です、またこの店でお逢いできるかと思っていたので」 彼女の気持ちを変えようとするには、あまりにも安っぽい返事しかでなかった。 「ありがとう、社交辞令でもうれしいわ」 マスターが新しいグラスをカウンターにお
「あなたとは、その店で初めて会ったのよ、あなたは友人と2人で深夜2時くらいに、」 「思い出したよ、その日は雨の日だった、古いビルの狭い階段を上がった突き当たりのお店だったよね?」 だんだん、記憶が鮮明になってくる気がした、でも一気に滝のように流れ込んでくる記憶の整理がつかない。いったん電話を切って記憶をまとめよう。そう思い再会の約束をしようと。 「じゃ今度、ゆっくりご飯でも食べながら話しませんか?」 再会の日時は決めなかった。 「じゃぁ、今度は私から電話するわ」 そう言って
人の記憶は曖昧なもの、どんな記憶であっても決して忘れることのないだろうと思った記憶でも、時間とともに曖昧になっていく。その記憶の断片だけがパーツとして頭に残る。そのパーツは色、光、匂い、物、その記憶を引き出す引金となる。頭の中でバラバラになったパーツが組み合わされ一つの形を作った時、その記憶が鮮明によみがえってくる。 仕事柄デザイナーさんクリエイターさん達よく会う。打ち合わせを何度かするうちに、少し親近感もでてくる。 時折、世間話やら雑談とかしたりして、特に相手が女性の場合、
あれから4ヶ月ほどが過ぎようとしていた。季節は夏から冬へと。あの日君に出会った記憶はまるで1枚の絵画のように僕の記憶に色あせぬまま残っている。君の髪が夕陽に照らされていっそう赤く輝いていた。ひと夏の遠い想い出として心から離れない。 未だに僕はあのカードの意味を調べてはいなかった。それは再会した時に本人に聞こうと思ってたから、なんだか意味を知ったらもう二度と会えないきがしていた それでも僕は淡い期待の中、あの場所へ何度も通ってる。会ったとしても元々僕が好きだった場所だから期待し
ワンピースの裾を風が遊ぶ たんぽぽの綿毛が髪をいたずらに飾る かわいた風が 頬をなでていく 色のない景色に、深く深く落ちていく 遠い記憶の中 確かにそこにいた 夏の気配を乗せた風が、河原を渡ってくる 僕が1人になって、ぼんやりできる場所 河川敷では、サッカーをする少年達の歓声 何がおかしいのか、大袈裟に笑う女子高生 買い物帰りのママチャリに乗ったおばさん いつもの何の変わりのない景色 そんな中に君はいた。なんだか分厚い本の様なものを膝において、ベンチに腰掛けていた。 少し俯
赤から青へ 静寂から喧騒へ 止まっていた時が動き出す それは君と僕の別れのサイン 少し遠くを見ながら君は歩きだす いつの間にか僕たちは嘘をつく事が上手くなった 君の温もりが残る指先 僕の時は止まったま 雑踏の中君はモノクロの世界へ消えていく 「元気でね」って後ろ姿に手をふった。 君の髪が夏色に輝き 優しく揺れた 僕はまたひとつ嘘をついた。 わかっていたはず 届かないものだと 空虚を埋めるには充分すぎる 飾られた言葉 喧騒に耳を塞ぎながら 僕の止まった時間を動かそうと
1人ぼっちのサンダルが波に踊る 行き場を失った麦わら帽子が風に舞う 波打ち際、僕の足跡を、君がたどる リズムよくポンポンとはねるように 僕はたまに大股で、少し意地悪 君は困った顔で立ち止まり。ジャンプ いつの間にか僕の足跡は波に消され 海風に揺れる髪のすき間から 見えたキラリ もう君は1人で歩いて行ける。きっと大丈夫 君の口元がかすかに動く 、ありがとう きっときっとうまくできる 真夏の海は 眩しいくらいに輝き 君はその光たちの中で舞う 星のひかりと月明かりに輝く海 水
おはよう 君とのありふれた朝が始まる 四角い窓から外を見つめながら 「なんだか台風がこっちへ来るみたい」って その影響か雲が早く流れていく 「今日も暑くなりそうだね」 「七夕祭り、暑かったね」 「でも3年ぶりのお祭りは楽しかったよ」 「ところでさぁ、短冊の願い事なんて書いたの?」 「内緒」って君は少し俯き加減に言う 「でも神様っているんだね」って呟いた 「どうしてそう思うの?」 「私の願い事かなっちゃったもん」 「すごいねぇ、神様ありがとうだね」 「私の願い事、君のそばにずっ
今日、久しぶりに彼女と海にきた。 きっかけは、突然の彼女の一言 「ねぇ・・・青春ごっこしようよ」 「え?何それ」 「ほら、よくドラマでやってたじゃない?」 「あー砂浜とか走ったりしちゃうやつか?」 「まぁ、そんな感じかな?」 「じゃ、海にいく?」 「うん、行きたい海に」ということで、、 やたら陽気な彼女の歌を聴きながら、海を目指した。 小一時間くらい走ると、曲がりくねったカーブの向こうに真夏の海がみえた。 小学生くらいの数人の男の子たちが、堤防の上を走っていた。 「ねぇ・・・