WHEEL of FORTUNE 3
時間は17時を少し回った頃、2人を乗せたタクシーは夕暮れの街に飲み込まれていく。
東京タワーを横目に千鳥ヶ淵から水道橋、東京ドームが明るく浮かんでいた。多分池袋までは少し渋滞もしているからまだ20分はかかりそうな感じかな?とぼんやりと流れて行く街を見ていると。それまで無言だった彼女が突然は話はじめた。
「ねぇ 君の名前は?」
そうなんだよねぇ さっきまで恋人みたい腕を組んで歩いていた2人は名前も何も知らない同士であることに今更気づいた。
「じゃ自己紹介しますね」というと
「名前だけでいいの、いつまで君じゃおかしいでしょ」なんだそんな理由かと
「僕は七瀬ひかるです」
「じゃひかるでいい?くんとかちゃんとかつけようか?」またどうでもいいくせにあえてそう言う聞き方をする君
「大丈夫、ひかるで」彼女は多分僕より少し歳上のような気がしていた。
「じゃ君は?」
「私は上野 遥香」
「じゃ遥香さんでいいですか?」
「あのねぇ私呼び捨てなのに君がさん付けとか私が偉そうじゃない?」そこ引っかかるとこか?と思ったが
「じゃ遥香でいい?」
「それじゃよろしくね、ひかる」
その目?なんかたくらんでそうなんだよなぁ
そんなやり取りをしていると、街はすっかり
夜のクリスマスの装いを増してきた。
程なく目的のサンシャインシティに着いた。
タクシーの中で目的くらい聞けば良かったな
「これから何処に行くの?」
目の前の建物を見ながら
「あそこよ」
サンシャインの一角のあるプラネタリウムだった。
「プラネタリウムへ行くの?」
「そう星の話を聞きに行くの」
君はほんとに不思議な事をいう、でも今今始まったことではないし。
「なるほど、どんな星の話?」
僕の質問に答える間もなく、どんどん前に進んでいく。受付をすませ館内へ入っていく色々な席の種類があるようだが彼女は普通なリクライニングシートを選んだ。
館内は結構人で埋まっており、まもなくプラネタリウムの上映が始まった。
今日はギリシャ神話にまつわる星座の話をナレーターさんが優しい声で語りかける。
お話はこと座にまつわる悲しい物語のようだったが、これは日本の神話でも似たような話を聞いた事がある。
天空には満天の星空が広がる、まるで実際のそこにあるかのように。僕は思わず
「綺麗だね」って普通の感想を言った
そんな神話の話を聞いていると。
君が突然、話し出した。
「星ぼしのひかりってそこにあるようだけど、そこにないの。ひかりの速度でも何万年も旅をしてここに届いたひかり。でももうそのひかりの主は存在してないかもしれない。ただ途切れたひかりの軌跡だけを残して。
今見ているひかりはやがて消えゆくひかりなのかもしれないでも確かにここにあるひかり」天空を見ながら君は話す
「ひかるが見ているひかりは主のいないひかりなのかもしれない」
僕は君が何を言いたいのか全くわからない
「今のひかりの奥にある本当のひかりを見て」またわけのわかんない事を言う
そんな話をしていたら、上映もそろそろ終わりの時間のようで、天空は朝焼け包まれてきた。流れ星が数個流れていった。
君はエンディングが流れると思いたったように。
「星の話しを聞きにいこうよ、ひかるとあったあの河原へ」君は偽物の天空を見ながら言った。そこには満天の星が輝いていた。
僕は未だにあのカードの意味を知らないでいる。それを聞こうとした時、君が不思議なことを僕に聞く。
「ねぇひかる、どうしてあの場所にいたの?」それはこっちが聞きたい事だと思ったが。素直に答えることにした。
「あの場所に行くとなんだかとっても気持ち良くて落ちつんだよね」
君はうなずきながら
「私もあの場所好きよ、実は何度か行ってたの」あまりにも唐突な君の告白を聞かされた僕は戸惑うばかりで
「じゃ僕を見てたってこと?」
「そうね、ひかるはいつも同じ場所に座ってぼんやりしてたでしょ、だから私はあなたの言う景色の中に入ってないの」
「どうして遥香は僕のことを知っていたの?どこかで会ったことあったっけ?」
「そうひかるとは初対面よ」
「とは?ってどう言うことですか?」
急に敬語になってしまった。一体君は何者なんだ?僕の気持を見透かすように
「私はあの場所をずっと探していたの」
そうして彼女は僕に1枚の絵手紙のようなものを手渡した。半分切られたようで全景がわからない。でもその切れ端に描かれていた物を見て僕ははっとした。