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巻き肩改善に対する考え方

こんにちは。
東京、埼玉、岐阜でパーソナルジムSharezを運営している岡崎秀哉(@hide_sharez)です。
このnoteでは、フィットネス業界について、パーソナルトレーニングについて、色々と自分の考えなどをまとめています。

今回は「巻き肩」についてまとめてみたいと思います。
パーソナルトレーナーとしては、お客様の身体をチェックした時に「巻き肩気味だな」という状況があったり、「姿勢を改善したい」といった目的のお客様がいらっしゃった際に、巻き肩の改善についてアプローチすることがあります。
その際の考え方について参考になればと思います。
もちろん、ご自身で「姿勢を改善したい」「巻き肩を改善したい」という方にも参考になるのではないかと思います。
あくまで「考え方」ということにフォーカスしてお伝えするので、具体的な種目の指導の仕方は少し省いていますが、あしからずということで。

1.巻き肩について

まずは、巻き肩の定義的な部分について解説していきます。

巻き肩のイメージ

https://yogajournal.jp/9072

「巻き肩」になっていない?気持ち良いのに効果テキメン【巻き肩解消「大胸筋・肩甲骨」ストレッチ】

シンプルにいうと「肩関節が前方変位している状態」であるといえます。
姿勢については、猫背、反り腰、巻き肩など、症状が目立つ部位を指して名称を付けられているものが多くあります。
しかし、実際には局所的に問題が起きるわけではなく、その箇所が目立つだけであって、連動して別の場所にも変化や問題が生じています。
身体は、骨格や筋肉で全身が繋がっているわけなので、ケガなどの外傷でない限り、ある箇所だけがおかしいということは基本的にありません。
逆にいうと、肩だけにアプローチしても解決しないともいえます。

2.巻き肩から起こる身体の連鎖

では、巻き肩の場合、肩以外にどんな連鎖による変化が起こりうるのでしょうか?巻き肩から起こりうる身体の連鎖について考えてみます。

■肩関節の前方変位から考える

肩関節が前方に変位しているということは、肩関節を構成する「鎖骨」「上腕骨」「肩甲骨」にも変化が生まれます。
肩甲骨に関しては、ニュートラルなポジションと比較すると、外転方向にズレていきます。場合によっては、上方回旋方向、挙上方向にもズレていきます。
鎖骨に関しては、停止部が前方に変位していきますし、上腕骨に関しては、内旋気味に変位します。

■脊柱について考える

肩関節が前方変位している、肩甲骨が外転している、上腕骨が内旋している、ということは、脊柱の状態にも変化が生まれます。脊柱全体としては、背中が丸まるようなイメージです。(いわゆる猫背状態)
実際に背筋を真っ直ぐにして肩だけを前に出そうとするとかなり動かしづらいと思います。一方、肩を前に出す動きと一緒に、少し背中を丸める動きをセットにして動くと肩を前に出しやすいと思います。つまりこれらの動きは連動性が高いわけです。
脊柱について、もう少し細かく見ていくと、頚椎に関しては、ニュートラルな状態から比較すると、屈曲方向に流れ、少し頭が前に出るようなイメージになります。(いわゆるストレートネック状態)
胸椎に関しては、より後弯が強くなります。
腰椎に関しては、「背中が丸まる」と考えると、より後弯が強くなりそうなイメージがしますが、実際には多くは少し骨盤が前にスライドするような形になり(横から見たアングル)、むしろ伸展が強くなるようなイメージの姿勢になるケースが多いです。(いわゆるスウェイバック状態)
脊柱の変化に伴い、腹部に力は入りづらくなるので、肋骨は外旋方向(開く)に変化する可能性が高いです。

■下半身について考える

上半身の変化を加味すると、下半身がどうなっていきそうか?ということもイメージできます。
太もも、ふくらはぎの位置関係は、横アングルで見た時に、太ももが前方にあり、ふくらはぎが後方にあるようなポジションになります。

3.身体の連鎖から考える筋肉の状態

上記で説明した「巻き肩から起こる身体の連鎖」を考えると各部位の筋肉の状態がどうなっているのか、ということが予想できます。
その際の考え方の指針として、わかりやすいのが「上位交差性症候群」「下位交差性症候群」です。

■上位交差性症候群

これはストレートネックや猫背、巻き肩などの姿勢不良になった際の筋肉の状態をわかりやすく示したものです。
下記の図の緑の部分は、「固くなっている、あるいは短縮してしまっている部位」を指しています。
一方、オレンジの部分は、「うまく働いていない、機能低下している部位」を指しています。

上位交差性症候群

https://lita-akasaka89.jp/16719437195067

上位交差性症候群

「固くなっている、あるいは短縮してしまっている部位」をまとめると以下のような感じになります。

上位交差性症候群において固くなっている、短縮してしまっている部位

「うまく働いていない、機能低下している部位」をまとめると以下のような感じになります。

上位交差性症候群においてうまく働いていない、機能低下している部位

■下位交差性症候群

続いて、下位交差性症候群についてです。これは、反り腰や上記で説明したような巻き肩からくる身体の連鎖により、骨盤が少し前に移動したような状態になると、筋肉はどうなるか?ということを示したものです。

下位交差性症候群における股関節周辺の筋肉の状態

https://zono-sekkotsuin.com/archives/581

腰痛の原因?下位交差症候群

上の図では、股関節周辺の筋肉の状態について説明しています。
脊柱起立筋や多裂筋、腰方形筋などは動きが悪くなりやすいです。また、腸腰筋、大腿直筋なども緊張しやすいといえます。

下位交差性症候群において固くなっている、短縮してしまっている部位

腹直筋や腹斜筋、大臀筋、ハムストリングスなどはうまく使えていない状態にある、といえます。さらには呼吸筋の働きも低下しやすいです。

下位交差性症候群においてうまく働いていない、機能低下している部位

さらに下半身でいうと、下腿三頭筋なども緊張した状態になりやすいです。

4.では、どうアプローチするのか?

ここまでの話は、あくまで「巻き肩」の状態って身体はどうなっているの?という評価の段階です。
それらが分かったとして、どうアプローチすれば改善していくのか?ということが大切になってきます。
上記のような筋肉の状態が悪いものに対しては、以下のようなアプローチが一般的です。

  • リリースする(抑制する)

  • ストレッチする(伸張する)

  • 活性化する(局所的に動かす)

  • 感覚統合する(運動学習)

「リリースする(抑制する)」については、固くなっている、動きが悪い部位に対して、緊張を緩め、神経促通を促し、可動しやすくするアプローチです。
「ストレッチする(伸張する)」については、固くなっている、動きが悪い部位に対して、伸張を促し、可動性を高めたり、筋長を適正に導くアプローチです。
「活性化する(局所的に動かす)」については、動きの悪い部位を局所的に伸長収縮させることで、神経促通させていくというアプローチです。
ここを「鍛える」と捉えている方もいると思いますが、個人的には鍛えるという感覚ではないです。「うまく使えるようにする」というイメージです。そもそも姿勢維持に対して必要な筋力は最大筋力の10%程度だと言われていますし、極端に筋力のない方以外は動きに必要な負荷だけかければ良いというイメージです。
「感覚統合する(運動学習)」については、局所的にコンディションを改善した部位を連動させ、全身動作として良い動きに導くアプローチです。
ここはどんな動きをするかも重要ですが、どう動かすか、どこをどう使うか、みたいなところを意識した丁寧な動きが必要です。

5.アプローチの流れ

続いて、どんな流れでアプローチしていくべきか?という部分です。
スタート時に、現状の姿勢のチェック、重心位置の確認、可動性のチェックなど行い、最後に再度チェックするとより変化がわかりやすいと思います。
その上で、アプローチの流れについてです。

1.呼吸系エクササイズ
2.スタビリティエクササイズ
3.活性化する(局所的に動かす)
4.リリースする(抑制する)
5.ストレッチする(伸張する)
6.感覚統合する(運動学習)


上記のような順番がオーソドックスだと考えています。
この後具体的な種目なども説明していますが、エクササイズの名称はオリジナルな部分があるので、気軽に質問してください!(名前をよく知らずに実施しているものもあります笑)

■呼吸系エクササイズ

まず、呼吸系のエクササイズを行います。これは肋骨の動きを調整すると共に、自律神経を調整し、神経による筋緊張を緩和したり、神経伝達がスムーズになるようにしたり、集中力を高めたり、といった目的で行います。

胸式呼吸、腹式呼吸の使い分け
ドローイン

といったものを使っていきます。

■スタビリティエクササイズ

次にコアを固めるスタビリティエクササイズを行います。
呼吸系のエクササイズを事前に行なっていることで、コアの安定性は高めやすいですし、この後、活性化するために四肢や局所を動かす上でもコアを固めておくことが大切です。

ベアポジションでのエクササイズ
デッドバグ
バランス系エクササイズ

などを行なっていきます。
ベアポジションやその後のエクササイズでも足底、足趾の感覚が重要(固有受容器への刺激も考慮)だったりするので、裸足で行うことが多いです。
バランス系のエクササイズでは、視覚、前庭などへのアプローチも意識します。

■活性化する

続いて、「うまく働いていない、機能低下している部位」に対して、局所的に活性化するアプローチを行なっていきます。
相反抑制の考え方から、後のリリース、ストレッチへスムーズに繋げるためにもこの順番で行います。
動きの悪い部位には、ここでリリースを使う場合もあります。

僧帽筋下部の活性化 → Yエクササイズ、肘つきプッシュローイングなど
前鋸筋、腹直筋、腹斜筋の活性化 → ベアポジションやプランクポジションの応用、インチワームなど
頭長筋、頚長筋の活性化 → 仰臥位や壁を使ったチンインエクササイズ
大臀筋、ハムストリングスの活性化 → ヒップリフト系エクササイズ、ヒップヒンジ系エクササイズ

などを行なっていきます。

■リリースする

続いて、「固くなっている、あるいは短縮してしまっている部位」に対してリリースのアプローチしていきます。

肩前部、胸部付近のリリース
広背筋のリリース
頚部後面、僧帽筋上部のリリース
胸鎖乳突筋のリリース
腰背部のリリース
腸腰筋、大腿直筋のリリース

などを行なっていきます。
リリースに関しては、道具を使ったり、手技を使ったりしますが、具体的手法についてはまた別の機会に。

■ストレッチする

続いて、続いて、「固くなっている、あるいは短縮してしまっている部位」に対してストレッチのアプローチしていきます。
まずは局所的に、リリースする(抑制する)、ストレッチする(伸張する)というアプローチをしていきます。

肩前部、胸部付近のストレッチ
広背筋のストレッチ
頚部後面、僧帽筋上部のストレッチ
胸鎖乳突筋のストレッチ
腰背部のストレッチ
腸腰筋、大腿直筋のストレッチ

などを行なっていきます。
ストレッチの動きでは、視覚、位置覚なども意識しながら。
ペア、セルフで様々な手法で行いますが、具体的手法についてはまた別の機会に。

■感覚統合する

最後に複合的な動きに移行し、それらを繰り返すことで、動きや姿勢を自動化していくイメージです。
ここまで局所的にアプローチしてきた部位のコンディションが良くなっていると仮定し、良い動きに繋げていきます。
例えば、「最初は肩関節の動きが悪く、肩関節を大きく屈曲すると腰が反ったりしていたけど、肩関節の動きを改善したので、脊柱や肋骨と連動させて腰が反らないように正しく動かしてみよう」みたいな感じです。
それを様々な部位で行い、徐々に複合的な動きに移行していくということです。

プッシュアップ → 肩甲骨の動き、前鋸筋の使用を意識しながら
デッドリフト → 体幹部の締め、肩甲骨の内転を意識しながら
オーバーヘッドスクワット → 肩関節の屈曲、胸椎の伸展、股関節の屈曲伸展を意識しながら
インバーテッドハムストリングス → 両手バンザイ、僧帽筋下部、臀部、ハムストリングスの使用を意識しながら

などを行なっていきます。
ここも種目というより、どこを意識してもらうか、どこを評価しながら行うか、が重要ですが、具体的手法にはまた別の機会に。

6.まとめ

巻き肩の方にとっては、最初は諸々のエクササイズがうまくできなかったりすると思います。
最初はうまくできなくても、徐々にエクササイズがうまくできるようになっていくことが大切です。ここで重要なのは特に負荷は必要ないということです。負荷をかけるよりも高い可動性で正しく動く、ということに意識を置き、筋力アップよりも動作の質を高めること考えましょう。
軽すぎて筋発揮が意識できない場合は少し足すくらいで良いです。
エクササイズやストレッチは例を簡単にあげただけで、詳細は触れていませんが、それはまた別の機会に。
何かの参考になれば幸いです!疑問点などはXなどでお気軽にご質問ください!


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