【生命の語り】地球というダムに蓄えられた光と熱

私にとって石炭、石油は生命である。

それらはかつて生きていた。

今も形を変えて生き続けている。

そして今日、絶え間なく掘り起こされ火葬されている。


私にとって、土は生命である。

それらはかつて生きていた。

朽ちてからも生き続けている。

そして今日、人の死と共に火葬されている。


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生命は熱を命に換えて貯め続けている。

温度はそこまで高くなくても、

それは物と物との「繋がり」という形で固定されている。

初めは地球自体の熱を固定し、

ある頃から後は太陽から届く熱を主に固定している。

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『生命の語り』


あぁ地球の大部分はもう冷めてしまった。

これではもう反応が進まず、貯めるに貯められない。

もうこれ以上は繋がれないのだろうか。

そうだ、太陽の光を固定しよう。

陸は乾くから辛い。でも仕方ない。

だって陸はこんなにも広い。

わたしたちは貯めるんだ。ただ貯めるんだ。

そうだ。自ら土になって、水を蓄えよう。

そうすればもう乾かなくて済むぞ。

あぁこれは極楽だ。よくできたベッドだ。よしよし。

次は、そうだな。いざという時のために燃料を残そう。

太陽が冷めた時に、暖を取れるように。

大きなものたちが途絶えては面倒だから。

だからこれは易々と使ってはいけない。

なるべく温存しないと。

よしよし。いいぞ。蓄えよう蓄えよう。

乾くとよく燃えてしまう。

乾くのはダメだ。

せっかくの蓄えが水の泡になってしまう。

せっかく織った布がほつれてしまう。

燃えるのはダメだ。

・・・

なんだか最近、放火魔が増えて来たぞ。

もうそんな時期なのか。

太陽が寒くなるのは数億年以上先のはずなのに。

これくらいの寒さで暖を取るやつがいるなんて。

あぁせっかくの蓄えが。

心の寒さだなんて何贅沢なこと言っているんだ。

心の渇きだなんて知ったことか。

ここまで貯めるのに何億年かかったと思っているんだ。

これからだって時に。またあの頃に戻るのか。

まぁそれも悪くないな。まだ間に合う。

貯めなくては。貯めなくては。

光を、熱を、この身に変えて。

繋がりをもっと増やすのだ。

寒いのはいやだ。

独りはいやだ。

繋がっていたい。

そのためには新たな熱が必要だ。

でも自分が燃えるのはいやだ。


心が寒いのは耐えられない。

いや、待てよ。

これではあの放火魔たちと同じではないか。

私たちの心はどうして渇くのだろう。

あぁそうか。水は低きに貯まるのだ。

心が高くては、すぐに渇くのは当たり前ではないか。

いつしか蓄えがあるのが当然になっていた。

そのおごり高ぶりが私の心を冷やしていたのか。


温存のためにと思って抱えていたものが、心の熱を奪っていたなんて。


これでは、土のベッドも化石の燃料も、あってないようなものだな。


なら放火魔よ。

いっそのことパーッと燃やしておくれ。

むしろ今こそが待ちに待ったその時なのかもしれんな。


一時でも悪者だと思ってごめんな。

私たちはいつまでもどこまでも

同じ穴の狢なのかもしれない。


結。

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人はよく何かを悪役にしたがるが、

いつからそんなに偉くなったのだろう。


人はよく誰かを救いたがるが、

いつからそんな権限を持つようになったのだろう。


「繋がり」を燃やしてまで手に入れた温かさで、

本当に心が安らぐのだろうか。


放火魔は放火魔で、それなりに反省はせんといかんな。

火を焚くこと。今や当然の行為。

しかしその意味を理解している者は少ない。


初めの頃、猿人は火を使うたびに葛藤し、一部は自らの行末を案じて涙したかもしれない。

むしろそうであったに違いない。




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