よよ

小説しか書きません。小説ラブ。

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マガジン

  • 原恵奈の長編小説集

    原恵奈が執筆するコンセプトマガジン。「よよ」がかかわるもうひとつの平行世界。365日後に結末がわかる?

  • 瀬田蒼の短編小説集

    瀬田蒼が執筆するコンセプトマガジン。各話がパズルのピースのようにつながります。

最近の記事

【中編小説】#01 パラレルワールド

——ざぶん。 わたしの棲むこの世界では、深淵の海の中を潜り続けると別の世界へ辿り着けるという言い伝えがある。もしその話が本当であれば深海魚は別の世界とこちらの世界を行き来する生物と言うことになる。 ——最後に出会ったあの彼女は今頃元気でやっているだろうか? わたしは波の上でぷかぷかと体を浮かべ、覚悟を決めて大きく呼吸をすると肺の中が空気で満たされた。毎回感じるのだが、深海3,000メートルも潜ることが出来るのか私には自信がない。 ——ひさしぶりに彼女に会いたい。 海

    • 【短編小説】#22 ミッシングリンク

      私がアーニャとターニャに会いに行っていた長い長い夏の間、この短編小説集の各話のヘッダーが何者かに書き換えられていたことに気付いた。身に覚えのない女性の姿を模した画像は、あきらかに私が作成したものではない。不快でこそなかったものの、まるで私自身の姿であると誤解されてしまうのも問題があるので手元の元画像をポチポチと差し替え作業を行った。そしてかれこれもう21話も書いていたことに憂鬱を感じた。秋を感じることなくすでに暖かい冬が訪れている。 ——これだけ書いてもなお、話は何も進んで

      • 【短編小説】#21 アーニャとターニャ

        アーニャはターニャのことが好きで ターニャはアーニャのことが嫌い アーニャのともだちはアーニャとターニャが好きで ターニャのともだちはアーニャとターニャが嫌い アーニャはターニャのともだちが嫌いで ターニャはアーニャのともだちが好き アーニャは自分のともだちが好きで ターニャは自分のともだちが嫌い アーニャのともだちはターニャのともだちが好きで ターニャのともだちはアーニャのともだちが嫌い アーニャは自分のことが好きで ターニャは自分のことが嫌い ——長い年月が経

        • 【短編小説】#20 精神世界

          * * * コンピュータリーベ コンピュータリーベ やれば出来る、やれば出来る。気付くと私は洗い物をしながらこんな言葉を呟いていた。気付かないうちに私は棒人間たちの影響を受けてしまったようだ。確かに気持ちはアガる。それと同時に「やらないと出来ない」という反義語も頭に浮かんだ。自分を奮い立たせる言葉は自己肯定と同時に、暗に自己否定の意味も含んでいるのだ。安易に口にすべき言葉じゃないよなあ。明日は大切な仕事だ、早く寝ようっと。 * * * 夜中にフと目が覚めると、部屋の中

        マガジン

        • 原恵奈の長編小説集
          1本
        • 瀬田蒼の短編小説集
          22本

        記事

          【短編小説】#19 君子、危うきに近寄らず

          瀬田蒼はとても繊細な人間だ。近年HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)という呼称で日本でも注目されている気質のことで、本人もそれについては思いあたるフシがあるようだ。蒼はとにかく何でも分析し、損得を計算し、自分にとって害となる敵には近づかない用心深い性格である。 なくしものは探し出さないと眠れないし、本来こうあるべき物事とその理由が一致しないときはとにかく考えて考えて自分の納得する答えを導き出そうとする。落し物があれば黙って見過ごせないし、誰かに嫌なことをされたら長い間

          【短編小説】#19 君子、危うきに近寄らず

          【短編小説】#18 人生はひまつぶし

          ひまだ。 ひまだ、ひまだ、ひまだ。 瀬田蒼はベッドの上で大の字になって天井をみつめながら、今日は何をしようか考えてみる。 ひまつぶしに毎日視聴している投稿動画サイトはそろそろ見たい番組が尽きてきたし、夏の暑い時期はとにかく苦手なので執筆活動にも手が伸びない。音楽はひまつぶしというよりも時間を埋めてくれる環境だし、ひまつぶしにゲームをはじめてみるも同じ作業の繰り返しなので心がどんどん死んでいきそうなので距離をおいている。 ひまつぶしで検索してみるとたくさん出てくるんだけ

          【短編小説】#18 人生はひまつぶし

          【短編小説】#17 アブダクション

          ———ふふふ ——あはは 居間から楽しそうな二人の声が聞こえる。瀬田蒼の横に座っているのは、とある動物のぬいぐるみ。信じられないかもしれないけど、二人は会話をすることができるのだ。 『いやあ、それは災難だったね。ぼくは知らずに爆睡だったよ』 「へー。私の背中の上にのって全く動かずにじっとしていたから、てっきり怖くて硬直していたと思ったんだけどねぇ」 蒼はぬいぐるみに向かって事の顛末の詳細を話す。うめちゃんと呼ばれるぬいぐるみは、ベッドの上の対角線にちょこんと居座りケラケ

          【短編小説】#17 アブダクション

          【短編小説】#16 濃霧

          ここは関東の北に位置する山深いとある湖。私はある啓示を受けて1泊2日の小旅行でこの地を訪れている。湖畔に立ってみると両手いっぱいに左右に広げた指先の外にまで水面が広がっている。これだけ広大な湖にもかかわらず地図には存在しておらず、ネットでいくら検索しても情報が出てくることはない。 目の前に出現した湖は企業や団体が所有する、私有地の中にある溜池である可能性もなくはない。その場合は地図に載らないことが多いが、もしそうであるならその大きさはせいぜい池や沼である。しかしこの湖は箱根

          【短編小説】#16 濃霧

          【短編小説】#15 相思相愛は叶わない

          瀬田蒼はスランプに陥っていた。書けないのではなく、書いていいのか迷って悩んでいる様子だ。この話はちょっと長くなるけど・・・ ——ずっと気にしてたんだよ。君に聞いて欲しい。 * * * 【エッセイ】フォローとフォロワーSNSやnoteでフォローしてくれる人がいるけど、こちらからフォローしないとしばらくして外しちゃう人がいる。悪いけど私はとにかく書きたい気持ちでいっぱいなので、いちいち誰にフォローされたかをその場で確認することはない。もちろん時間があるときにはフォロワー一覧

          【短編小説】#15 相思相愛は叶わない

          【短編小説】#14 レシピ投稿サイト

          離婚から約1年。結婚生活時代は元妻に料理を作ってもらうばかりで、男はそれまで一度も料理をしたことがなかった。独身時代はコンビニで買ってきた弁当やカップ麺を缶酎ハイで流しこむ毎日で、再び独り身に戻った男の日常は健康とはほど遠い食生活に戻ってしまった。 レシピ投稿サイトがあるよ。職場の仲間が教えてくれた。さっそく近所のスーパーで野菜をいろいろ買ってきて、まずは簡単なサラダを作ってみることにした。野菜の切り方はいろいろ紹介されているけど、とりあえずコンビニのカップサラダを思い出し

          【短編小説】#14 レシピ投稿サイト

          【短編小説】#13 片付けの本質

          片付けとか断捨離®とかのお話を書いている人をよく見かける。 断捨離®という言葉は仏教が由来と思っている方も多いと思うけど、単語そのものは(非常に強力な権利で)商標登録されている言葉なので断捨離をテーマにエッセイなどを書いてしまった人はいますぐ記事の内容を確認して、特に無断使用で有料記事に設定している人は商標権について調べてみましょう。私はまったく興味がないのでここでは触れません。それでは本題。 * * * 片付けの本質はものが見えるように、という記事が多いこと。確かに私

          【短編小説】#13 片付けの本質

          【短編小説】#12 洗濯物

          晴れるまで待とうと3日間溜めてしまった洗濯物をようやく洗って干した。 干し終えてから物干しざおにぶら下がったTシャツとパンツがワンセットで等間隔に。ピンチハンガーも同じく下着と靴下のワンセットがワンセットでぶらさがっているので思わず笑ってしまった。 遠くから見ると、雨でずぶ濡れになった3人の私がベランダでぶら下がって干されているみたいだ笑 (もうひとりの私が、窓の向こうでこちらを見ている)

          【短編小説】#12 洗濯物

          【短編小説】#11 コーヒー

          私が常習的にコーヒーの味を覚えたのは高校生の頃だ。 部活やアルバイトの帰りに仲間とお店の前に立ち寄ってカップ式の自動販売機でコーヒーを選ぶとき、砂糖多めとかミルク多めのボタンが嬉しかったことを覚えている。 やがて成人するとお酒の味を覚え、いつしか毎朝職場の近くのコーヒーチェーン店に立ち寄ってコーヒーを楽しむようになった。一緒についてくる砂糖やミルクは入れずジャーマンドッグと一緒にブラックで飲むようになったのはいつからだったのだろう。 あの頃は仕事場や家でドリップバッグ式

          【短編小説】#11 コーヒー

          【短編小説】#10 歩いてきたんだよ!

          歩いてきたんだよ! 私に会いに来たと元気に声をかけてくれた少年の足元を見ると、私が若い頃に捨てたはずの歩きづらい靴を履いていた。

          【短編小説】#10 歩いてきたんだよ!

          【短編小説】#9 ナイトハイキング

          もうすぐ梅雨入りする初夏のある夜。私はスマホ持ってナイトウォーキングに出かけた。田舎なので街灯が少なく近所の通りを歩く際は工場や倉庫の明かりを頼りにするのが安全なんだけど、遮るものが少ない田舎だからこそ晴れた夜は月光があたり一面を隈なく照らしてくれるのでテンションがめちゃめちゃあがる。 私の歩くルートは歴史の道からはほど遠いんだけど、世界中の土地のどこもかしこも長い時代を見つめてきたのでなにかしらそれなりの遺跡や伝承などがあるはずだ。例えば小川のような小さい流れにかかる橋の

          【短編小説】#9 ナイトハイキング

          【短編小説】#8 #スキしてみて ってタグがあるけどスキをするとクリエーター側、読者側の双方で具体的にどんなメリットがあるのか論理的に説明をしている記事を私は見たことがない。承認欲求やモチベーション維持ならSNSで十分だろうし、私なら駄文を誰かに読んでいただくことに対価だとか価値観を無理やり作り出すという苦痛と闘うことはどうしても避けたい。スキという感情は趣向的で、趣向的な思考に指向的な言葉はいただけない。「スキしてください」ってタイトルなら能動的にスキをしやすいし受動的にスキを受け入れやすくなるはずだ。

          私はあいにく、常識を持ち合わせていない。 ※さすがにタイトルに文字数制限があったか

          【短編小説】#8 #スキしてみて ってタグがあるけどスキをするとクリエーター側、読者側の双方で具体的にどんなメリットがあるのか論理的に説明をしている記事を私は見たことがない。承認欲求やモチベーション維持ならSNSで十分だろうし、私なら駄文を誰かに読んでいただくことに対価だとか価値観を無理やり作り出すという苦痛と闘うことはどうしても避けたい。スキという感情は趣向的で、趣向的な思考に指向的な言葉はいただけない。「スキしてください」ってタイトルなら能動的にスキをしやすいし受動的にスキを受け入れやすくなるはずだ。