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【2024年読書は121冊】121冊目「娘が母を殺すには?(三宅香帆)」

2024年は「121冊」の読書を達成。前年+25冊、月平均で約10冊。

前年から伸びた理由は2点

①資格取得等、学習時間が激減
前年(2023年)はFP3級・FP2級試験を連続して受験、学習時間を多く確保できましたが、2024年はガッツリ勉強するような資格に挑戦することはなかったので、思い切り読書を楽しみました。

▼FP2級合格時の記事▼

②仕事が変わり余暇時間増
2024年4月から目標としていたカウンセラー職の契約ができ、専門職ということもあって勤務時間は従来より短くなり、何よりも通勤時間が片道40分程度(前年より半減)になったことが大きく、ゆとりが生まれました。
もうこれ以上遠いところに出勤できません笑。


基本は図書館を利用、内容により手元に常時置いておきたいもの、あるいは借りて読んで購入決めたものもあります。
媒体も、内容により電子or紙本を適宜選択。

数を目標としているわけではありません。
色々な書籍、著者との出会いを楽しむことが自分の生活を彩ってくれます。
たまに雷に打たれたような衝撃(打たれた経験はないが笑)を受けるほど、自分の価値観を揺るがすような本にも出会えます。
分野別の傾向としては小説が少しだけ増えたかも、ですね。

さて、(今頃ですが…)2024年の読書記事の最後を飾るのは。。。

「娘が母を殺すには?」(三宅香帆 著)

ベストセラー「働いているとなぜ本が読めなくなるのか」30歳の筆者が送り出した驚きのタイトル本。
三宅さんを、最近ニュース番組でお見かけしたのですが、

すごく若い

30歳なのだから当たり前なのだが^^;

29歳年下のこの若い読書家の著書に、驚かされた。

「母の規範」の中で生きる娘たち、それは単純に「女性の世界」という話ではなく、専業主婦文化という社会的背景が生み出したノンフィクション。

つまり、女性の多くは「母親の規範(価値観)」の影響を受け自己概念(自分の価値観)を形成している(縛られている)可能性が高いということ。
それが「生きづらさ」につながっている場合は「母の規範」から解脱しなければなりません。
つまり「母殺し」=「母の規範殺し」なのです。
経験代謝、自己概念という点でカウンセラーとしても必要な視点であり、大変参考になった次第です。

また、読書家の著者らしく、書籍(マンガ含む)の中で「母殺し」に向かっていった作品を引用し、社会的背景を交えて解説していく流れは読みごたえ十分でした。

以下、本文よりキーワードのみ抜粋
あえて「何となくわかるように」羅列にしておきます。

母殺しの定義/結論

・母の規範を手放す(定義)
・娘が母の規範を相対化し、他者への欲望を優先させること

母娘密着社会の原因

①母が夫より娘にケアを求める
②娘の経済的自立が困難
③娘が母の人生に負い目を感じやすい
④娘は息子より親と対等な存在として育てられやすい

母殺しの困難さ

①理想の代理母←母の規範の内部で「母の代理」を探す
②母を嫌悪する←母の規範を手放す具体性なし
③嫌悪した母と違う母になる←母への幻想強化、規範再生産


母殺しのプロセス

①母の規範の存在に気づき言語化
②母の規範よりも自分の欲望を優先し成功体験
③①②を繰り返す
④母の規範がどうでもよくなる(手放す)

母殺しの困難

・滋賀医科大学生 母親殺害事件(2018)
 「母の呪縛から逃れるため凶行に及びました」


母が死ぬ物語

・イグアナの娘(萩尾望都)
・砂時計(芦名妃名子)
・肥満体恐怖症(松浦理英子)

母殺しの実践

・残酷な神が支配する/ポーの一族(萩尾望都)/日出処の天子(山岸涼子)
 代替パートナーを選ぶ萩尾、代替否定の山岸
・イマジン(槇村さとる)ー母の幻想化「理想の母」
 いまなお自己犠牲、献身的な母性信仰
・なんて素敵なジャパネスク(氷室冴子)ー母のいない世界
・乳と卵(川上未映子)ー母への嫌悪と愛(達成と限界)
 爪と目(藤野可織)ー母殺しを初めて表現した文学
・銀の夜(角田光代)/吹上奇譚(吉本ばなな)ー自ら母になる
・凪のお暇(コナリミサト)ー夫の逃走に起因
「お前も私のケアをしろ」規範の再生産


母殺しの脱構築

・私ときどきレッサーパンダ(ピクサー)
 母から娘へ引き継がれるコンプレックス
・娘について(キム・ヘジン)ー母視点
 母が自分の幸せを娘に託さない
・最愛の子ども(松浦理英子)
 娘たちよ、母でない他者を求めよ

三宅氏のメッセージを抜粋引用

娘たちは、もっと「わがまま」になるべきなのだ
それこそが、娘が自分の欲望を大切にし、「母を殺す」ということである
すべての娘たちに、私は「母殺し」を実践してほしい
それが自分の人生を生きるということだから

「母殺し」ができない状態とは、常に母の規範を気にしてしまう、つまり「母が許すかどうか」を考えてしまう状態のことだ
だとすれば、母の規範を気にせず自分の欲望を優先できるようになることこそが、「母殺し」の達成である
母に「わがまま」と言われそうなことを、娘ができるようになれば、それは「母殺し」の完了を意味する

母だって完璧ではない
だからこそ、大人になれば母の規範は手放していいはずだ
しかし、日本の母性信仰は「母は正しい」「母は自分を愛している」と娘たちを洗脳する
そして「母は正しい」「母は自分を愛している」と思えば思うほど、娘は母の規範を手放しづらい
このようにして母性信仰は、娘たちの「母殺し」をいっそう困難にしているのだ

以上です。
単なる読書家ではない、著者の教養の高さを感じました。
さて、皆さんの「規範の受け継ぎor引き継ぎ状況」はどうでしょうか?


最後に、2024年12月の読書15冊をタイトルのみ紹介します。
紹介できませんでしたが、個人的には①④⑧⑬を大変興味深く読みました。
▼⑧を紹介した記事▼

①母は死ねない(河合香織)
②俺たちの定年後 成毛流・60歳からの生き方指南(成毛眞)
③柚子をさぐるーゆずの森よりー(沢村正義)
④フィンランドの教育はなぜ世界一なのか(岩竹美加子)
⑤新敬語「マジヤバイっす」社会言語学の視点から(中村桃子)
⑥疑う力(真山仁)
⑦ツナグ(辻村深月)
⑧仕事の「整理ができる人」と「できない人」の習慣(大村信夫)
⑨葬儀を終えて(アガサ・クリスティー)
⑩オードリー・タン 自由への手紙(オードリー・タン)
⑪キャリア・スタディーズ これからの働き方と生き方の教科書
 (田中研之輔/遠藤野ゆり/梅崎修 編)
⑫沈黙(遠藤周作)
⑬自分で名付ける(松田青子)
⑭糖質をやめられない オトナ女子のための ヤセ方図鑑(森拓郎)

⑮娘が母を殺すには?(三宅香帆)


2025年最初の読書投稿(2024年版ですが…)を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今年も、多くの著者の話が聞けるよう「歯を磨くように」読書を楽しんでいきます!


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