発達障害を持つ子に注意する時には短く&具体的&肯定的な言葉がけを
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今日は「発達障害を持つ子に注意する時には『短く』&『具体的』&『肯定的』な言葉がけを」と題して、認証による家庭療育シリーズの第三話をお届けしたいと思います。
発達障害の特性を持っている子と言うのは、定型発達の子と比べて「できない」ことが多いため、親や教師やおとな達から(あるいは子どもたちからも)叱られたり注意される機会が多いものです。
しかしながら、発達障害の特性を持っている子も、親や人さまから叱られたり注意されれば当然傷つき、時には心が折れるような思いすらするのです。
「ひとが当たり前のようにこなしている作業が私にはどうしてできないんだろう」とか「あたりまえに生きたい」と思って悩んでいるのは誰よりも発達障害の当事者ですから、この子たちは周りが想像している以上に傷ついているのですね。
この子たちが例えば火のもとの取り扱いなどで危ういことをしていたなら、直ちにビシッと「やめなさい」と言って止める必要はありますが、それは発達障害を持つ子たちを日常的に闇雲に叱り飛ばすことを意味しません。
発達障害の特性を持つ子の育児には予想外の危険性や親のイライラのもとがつきものですので、今日は子どもに注意する時に、できるだけ「短い言い回し」で「なるべく具体的」に、(そしてこれが一番親としては修行を要しますが)「肯定的な言い方」で子どもさんに言うように心がけると上手く行くことが多いというお話をいたします。
それではどうぞ今日も宜しくお願いいたします(*^_^*)
図表を活用して視覚的に子どもに伝える工夫をしてみませんか
発達障害の特性を持つ子どもさんの育児に限らず、親にとっては子育てには「○○しちゃいけない」というダメ出しをしたくなる場面がつきものですよね。
最近は肯定的な言葉がけをして子育てすることの意義も随分と啓蒙されるようになりましたが、こと発達障害の子どもの育児に関して、具体的にどのように肯定的な言葉がけをして育児に当たると良いのかについては案外と広く知られていないように感じます。
発達障害を持つ子どもさんは、耳で聴いたおはなしやお小言の内容を言語的に俊敏に理解することに難しさを覚えがちです。
むしろ、このお子さんたちは、視覚的に情報を伝えてもらった方が理解しやすいのですね。
私の娘たちの場合にも、グラフィックな情報や視覚的な情報の方が、おはなしによる指示の伝達よりも、遥かに理解しやすいようです。
わが家では、毎日のル―ティーンワークに関して、妻が平仮名とイラストで子どもたちに指示書を提示しています。これが娘たちには好評で、娘たちもその表を見ながら歯磨きや服薬やトイレをこなしています。
発達障害の育児では、日常生活のル―ティーンの習得に関する内発的動機付けが弱い傾向がある当の本人に日常的スキルを身につけてもらうことで苦労しやすいので、図表化できる情報は仮名とイラスト交じりのボードを作ってあげると親子ともにストレスが減りますよ(*^^)v
「○○しちゃダメ」じゃなく「△△してね」と伝えたい
発達障害を持つ子どもさんが、自分ができないことに関してどれほど挫折感や劣等感を持ちやすいかは、もっと注目されてもいいトピックであると思います。
さだまさしさんの『生々流転』という唄は「あたりまえに生きたい ささやかでいいから」と始まります。
発達障害を持つ子どもは、そもそも定型発達の子と同じようにこなせないことがいろいろとあるから「神経発達症」と呼ばれるわけなので、日常の中にたくさんの「あたりまえに生きたい」という痛みやかなしみを感じて生きているのです。
ですから、この子たちが「ダメ」とか「いけない」という否定的な言い回しに敏感に内心反応しているのはむべなるかなと私は思います。
先にも触れましたように、例えば子どもが火をいじっていたりしたら「それ、やめて!」などの強いコトバで直ちに制止しなければならないかもしれません。
子どもが車道に飛び出そうとした時に、図表を持ち出して制止している余裕はないですからね。
そうした時に、子どもさんをビシッと止める必要はあります。
しかし、日頃の生活の中でこの子たちに指示や情報を親から伝える時には、お子さんが過敏に反応してしまう「ダメ」とか「いけない」というコトバは出来るだけ避けて、「~してね」と肯定的な言葉がけを、できるだけ短く、かつ具体的にするといいのです。
肯定的なコトバへ変換する具体例
では、例えばどのような言い方が「短く」「具体的」で「肯定的」な言い方になるのでしょうか。
この節では、親御さんが言いがちな言い方をどのように変換したらより良い、よりお子さんに伝わる教示になるのかを具体的にいくつか見たいと思います。
①「早くして」「何もたもたしているの」
→「○時までに終わらせようね」
→(たとえ「△時にお家を出るよ」と言って時計を指さしましょう。
→もたもたする子を放置しないで手伝ってあげたり、行動をゆっくりと一つずつ指示してあげましょう。
→その上で、子どもができたらたくさん褒めてあげましょう。それがもたもたするわが子を認証することに繋がります。
②「いい加減にして!!」
→「それはそこでおしまいね。こっちにしようか」(と別の行動に誘導する)
→子どもがなかなか食べ終わらずに、食べ物で遊び出しすような時には、子どもの問題行動を厳しく叱るよりも、「ごちそうさましようね」などと声を掛けながら食べ物をサッと片付けてしまった方が良いですね。
③「何やってんの!」(子どもが間違った行動をしていた時)
→「○○しようね~」と具体的な行動に誘うと良いですね。
→「○○」は、短く端的な言い方を心がけてください。このように言いますと、具体的で肯定的な代案の提起となります。
④「(おもちゃや本などを)さっさと片付けなさい!」
→「○○は△△に入れようね」と、何をどう片付けるかを端的かつ具体的に伝えましょう。必要に応じて、お子さんと一緒にお片付けするとより素晴らしい認証になり得るでしょう。
→親御さんがおもちゃや本や散らかっている文房具などをお子さんと一緒に片付けた方が、親が上から目線になりにくいというメリットもあります。そうした方が親子の愛着をより確かなものにするという利点があることも見逃せませんよね(*^^)v
⑤「こんなこともわからないの?」
→(「そんなに判りやすいこと」をどのように噛み砕いて分かりやすく説明できるかという親御さんの力が問われていると思いながら)
できるだけ解りやすく短い言葉を用いて具体的に説明すると良いでしょう。
簡単に出来そうなことができないという姿を親御さんの前で見せているうちは、お子さんはまだ親御さんに対して心を閉ざしていないということです。
ですから、お子さんの分からなさや分かりづらさを丸ごと受け容れて「そうなんだなぁ」と認証し、そのタスクが出来たらいっぱい褒めて認証してあげると良いのです。
⑥「やめなさい」
→子どもがゲームなどが思うようにできなくて怒っている時には、ゲーム以外のこと(お絵描きや音楽など)に誘いながら、「△△を一緒にやろう」と親御さんがお子さんを手伝ってあげるといいのですね。
親御さんがお子さんを手伝えない時には、ゲーム依存を心配するあまりに子どもさんを叱り飛ばすよりは「○○しようか」と具体的なコトバをかけるだけでもいいのです。
ゲームに一見溺れているようなお子さんでも、寂しくてゲームばかりしているという方も案外珍しくありません。
「禁止は誘惑になる」という精神分析学の知見を応用したい
パリ・フロイト派を創始した精神分析医ジャック・ラカンの有名な言葉に「禁止は誘惑になる」というものがあります。
フロイトにもユングにもこの言葉と同様な概念が存在します。人は「してはいけないと禁止されていること」にかえって惹かれやすいものだということを喝破したこのラカンの言葉は、子育てに関してもなかなかに含蓄が深いものだと思います。
育児においても、「○○してはいけない」という否定形を使って「禁止することに無意識のうちに誘惑する」ような子育てをするよりは、「△△しようね」という肯定的な言葉がけを使った方が、子どもが精神的に混乱しなくて済むのも、ラカン派精神分析学的には肯けるところがありそうです。
「○○してはいけない」と言われてしまいますと、子どもに限らずおとなでも、そういうことがしたくなる傾向を人間の深層心理は持っているのです。否定の言葉をなるべく使わないで子どもと話した方が子育てが上手く行きやすい根拠の一つも、この点にありそうですね。
肯定的なコトバに変換する具体例はまだまだありますが、長くなりますので、今日の所はここのところで例示することを一区切りしておきたいと思います。
結びに~こころが痛い子どもたちをこれ以上追いつめないために
以上、今日は「認証による家庭療育シリーズ」の第三話として、親御さんがお子さんに何かを伝える時に、短く、具体的で、肯定的な指示の出し方をするといいのかについて、ラカンの言葉も引用しながらお伝えして参りました。
冒頭部でも申し上げましたが、発達障害の特性を持つ子どもさんのように、ひとがあたりまえにできる(ように見える)ことがどうしてもできない人が持っているこころの痛さや苦しさや寂しさというものは、ほんとうに余人の想像を絶するものがあるのです。
あたりまえに生きたい
ささやかでいいから
ああ とても優しくなりたい
素直に生きて行きたい
さだまさしさんは『生々流転』という唄の中でそのように歌っておられますが、そのようにこころの奥底で涙を流しながら直向きに生きている子どもたちをこれ以上追いつめてはならないのです。
不登校やいじめが過去最多の件数であると今年も報道されています。私は発達障害が直接不登校やいじめの「原因」であるかのような因果律を唱える者ではありません。
また、特定の小児科的疾患や精神疾患が不登校やいじめに関与し得る可能性は否定しませんが、私は○○が出来事の「原因」で△△がその「結果」としての「不登校」とか「いじめ」だというようなストーリー仕立ての単純な因果律的思考からは距離を取った現象学的な視点を採っています。
ただ、発達障害を持っている子どもたちが現実としていじめられやすいことは否定できないのですね。赤坂憲雄先生の論にもありますが、日本社会は均質的な整合美を重視し異分子を排除する特徴を持っていますので、ひとと少し違うだけでも排除されやすいですから。
ですから、発達障害の子どもさんが日頃人並み以上に傷つきやすい中を純朴に生きているという事実を私たち親の方も念頭に置いて、子どもたちに対するストレスフルで否定に満ちた言葉掛けは差し控えるようにしたほうが、親子ともに倖せになり得るのではないでしょうか。
結びと言いながら、結びが長くなりました(^-^;
認証による家庭療育のシリーズはまだ続きますので、何とぞ諸賢のご指導を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
今日もここまでお読みくださいまして、ありがとうございました(*^_^*)
あなた様の上にしあわせと祝福が豊かにありますように!
Koki Kobayashi