報われない黒本丸のみかさに
その山姥切国広は、いわゆるブラック本丸という場所にいる一刀剣でした。
かの本丸の初期刀は三日月宗近。政府高官の子供が経営するところで、審神者はレア──その中でも月狂いと呼ばれるものです。山姥切国広の顕現順は遅くもなく早くもなく。入れ替わりの激しい本丸で、そこそこ保ってる方でした。
運が良かっただけではあります。
何しろ国広に実力はありません。ごくたまに、審神者のお気に入りである三日月が審神者に働きかけ、普段出陣しない刀に演練をさせる。そんな時くらいしか出番がありませんでした。