新鮮なレタスを重ねてかじった時の、歯ざわりと水気、うっすらとした苦味、赤い口の中で冷えたままの、白っぽい緑色のぎざぎざ。ハン・ガン『ギリシャ語の時間』は、わたしにレタスを食べさせる。物語に物語が重なって、しゃきしゃきと音を立てて読まれるのを待っている。そんな味がした。
休憩にさまざまに手に取る本の中にハン・ガンの『すべての、白いものたちの』(斎藤真理子さん訳)があります。「ある記憶は決して、時間によって損なわれることがない。苦痛もそうだ。苦痛がすべてを染め上げて何もかも損なってしまうというのは、ほんとうではない。」という言葉、留めておきたく。