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小説のなかに流れる音楽、うつる映像: "Other Voices, Other Rooms" by Truman Capote / "elephant" by Raymond Carver
心地いい秋晴れ、乾いた空気とカエデの葉、澄んだ空気に浮かぶ月に恵まれ、読書がかなり捗る季節になった。冷房のついていない書庫もかなり過ごしやすくなってありがたい。最近読んだ本は2冊、どちらも20世紀のアメリカ文学で、ずっと忘れられなくなるような作品たちだったので記事にすることにした。一冊はTruman Capoteのデビュー作、"Other Voices, Other Rooms"。これに対するもう一冊は、Raymond Carverの遺作というべき最後の短編集"elepha
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[本と日記]きょうだいの類似性と夢、パラレルワールドの私 (夜のピクニック、Klara and the sun、Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow)
本ばかり読む生活をしていると、出来事に対する考えの中に読んだ本のことを思い浮かべたり引用したりということが日常的になってくる。今回は、読んだことのある本の思い出しをいくつか含む形で日記をつけてみる。 姉の夢の話を聞く 見たばかりの夢について話す相手がいることは幸せだと思う。話した方も話された方も日中にはどんな話だったか忘れてしまうのだが、夢という意外にもパーソナルでとりとめのない内容を、朝起きて間もなく、遠慮せずに話すことのできる人がそばにいるのは豊かなことだ。 姉
リセットできない世界を生きる話: "Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow"by Gabrielle Zevin
北斎の巨大な荒れ狂う波。ゲーミングデバイスを連想させる虹色のポップな書体。一度目にしたら忘れることのないタイトル。"Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow"は、初めて書影を見た時から私の意識の片隅に居座り続け、あらゆる雑誌のレビューから顔をのぞかせ、発売当初から「もしかして読んだ方がいいんじゃない?今」と絶えず訴えかけてきた小説だった。日本語訳が近所の書店に平積みされ始めたあたりであらすじに目を通し、観念して購入した。書籍のデザインや広報に